Dynaco MK3の改造(15) ハムノイズ対策2017年11月02日 16時53分37秒

完成したと喜んだのはいいが、ショートロードホーンの817Bからハム音が聞こえてくる。能率が高いのでちょっとしたノイズでも気になる。

出力端子に4Ωのダミー抵抗をつけ、入力オープンの条件で測定し見ると1mVrmsを超えるノイズが出ている。オシロで見るときれいな100Hzのサイン波が見える。

そもそもバランス増幅回路なのに、これほど大きなノイズが出るのはよくあるようなアースの不備とか誘導によるものとは考えにくい。絶対に何かを見落としているに違いない。が、それがわからない。

原因をさぐること三日間。なにをやっても空振り状態。まったく原因がつかめない。もうあきらめかけたその時、ヒントが見つかった。

初段のプレート抵抗はホット側とコールド側と二つある。そのプレート抵抗の共通ポイントに電源電圧が与えられる(回路図で+453Vとあるところ)。そこへ、だめもとで15uFのコンデンサをつないでみた。ノイズ電圧が低くなる。「おや?」 オシロでリップルを測定すると、コンデンサを入れる前は106mVrmsあったのが、これを入れると57mVrmsに低下する。これにともないノイズレベルは0.44mVrmsになる。あきらかに相関関係がある。

ここで自分の思い込みに気がついた。初段はバランス増幅で正負の入力が同じであれば同相雑音は抑圧され、終段のKT88のグリッドには伝達されないと思い込んでいた。確かに理想素子で構成された回路であるならばそうなる。しかし、物事にはばらつきというものがあって、ホット側とコールド側が全く同じ動作をすると期待はできない。

終段管はかならずバイアス調整をしてプッシュプルのDCバランスをとらなければならい。ペアマッチ管を使っていても差を0.5mA以内に収めようとすると、ホット側とコールド側のグリッド抵抗の値に差が生じる。その結果、電源のリップルが十分に抑圧されず、出力に漏れ出ることになる。

原因がわかれば対策が見えてくる。初段に供給する電源のリップルを極力抑えればよい。よく見ると、CEAのホームページに掲載されている回路図にはすでにきちんと定電圧回路があるではないか。これの意味を理解していなかった私の落ち度である。これを学ぶために休日の貴重な時間を無駄に費やしてしまった。いや、多分将来のための肥やしになったに違いないと納得させる。

そのリップル抑制回路について。
当該箇所は最大でも550Vの電圧がかかる。なみの半導体は使えない。机の中を探すと幸いにもCREEのSiC-MOSFETであるC3M0280090Dが眠っていたのを発見。最大定格Vds=900Vなのでちょうどよい。
ほかにもSolenのフィルムコンデンサが300Bシングルアンプ用にとっておいたのがあったので、これを借用。30分で作り上げた。

その結果、リップル電圧は3.6mVrmsに低下。雑音電圧は280μVとなった。チャンピオンデータは150μVだった。これで世間に出しても恥ずかしくないアンプとなった。やれやれ。
ところで他のアンプはどうなっているのだろうと、過去のラジオ技術誌をパラパラめくってみた。旧聞に属するが、氏家高明先生がつくられた91B風の300Bシングルアンプは、0.2mV以下であったと報告されている。武末数馬氏のアンプに至っては42μVとある(1996年7月号)。さすがである。実際やってみるとわかるが、この値に到達することがどんなに大変なことか。

改定後の最終回路図を掲載する。

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