GaN Single End Power Amp その112024年03月11日 20時40分30秒

いつものことだが、時間とともにいくつかのことに気になるところが出てきた。
高音域になにか微妙なひっかかりがあって耳にさわる。歪率には表れないけれど、初段C3mの動作点が最適ではないのかもしれない。他の作例を見ると、プレート電流を2mA程度流している.

それからもう一つ、ノイズがやや多くて気になる。これもなんとかしたい。ノイズの原因を探ったのだが、決定的な原因はつかめなかった。電源のリップルはきわめて小さい。となると高インピーダンス回路に静電誘導でノイズが侵入しているということか。終段GaNのゲート配線に指を近づけると雑音電圧が跳ね上がる。

(対策)
・初段の電源電圧を高くするとともにカソード抵抗を2.7Kから1Kに変更する。
・ノイズ対策として、終段GaNのゲートまでの配線をシールドにする。加えてプレート抵抗とカップリングコンデンサに銅箔を貼り、これをグランドに落とす。

(変更後の回路図)
まずは増幅部。
続いて電源部。
当初、R9, R10を入れずに電源をオンしたら、トランスが数秒間うなった。それもそのはずでC7, C9への初期のリップル電流が数アンペアにも及び、一瞬短絡状態になるからと判明。R9, R10はもっと小さな値でもよいのだが、手持ちの関係でこうなった。スケルトン抵抗を使っている.

(効果)
・音の傾向は対策前と大きく変わらない。しかし、あの気になっていた高音域のひっかかりはなくなり極めて滑らかで、安心して聴ける。この「安心して」というところが大事で、どこかに問題があるとすぐには気がつかなくても、聴いていて落ち着かなかったり、心が騒いで音楽に没頭できない。大げさかもしれないが、日常生活にも影が差してくる。

アンプの出来が良いか、それとも悪いかを判断するのには、人間の声が一番よくわかる。良いアンプは、冷たくなった人の心をあたたかくし、気落ちした者を励まし、ささくれだった感情を穏やかに鎮めてくれさえもする。
このアンプは、そんな方向に近づいたかもしれない。

(課題)
残留ノイズは対策した結果、数値上では0.6mVから0.25mVになった。しかし、あいかわらずダブルウーファーからはハムが目立つ。きっと見落としているものがあるのだろう。今後の課題とする。

GaN Single End Power Amp その102024年03月05日 18時39分46秒

GaN(窒化ガリウム)トランジスタを終段に使ったパワーアンプ、その後いくつか手を入れて、ますます素晴らしい音に変貌してきた。まずは増幅部の回路図を。
回路の説明
調整箇所は次の二カ所
VR1: 初段C3mのプレート電圧調整
VR2: 終段GS66502Bのアイドリング電流調整

当初、プレート電圧によって歪率は大きく変化するだろうと予想していた。ところが実際にVp=30〜80Vの間で様子を見てみると、ほとんど変化しない。これにはしょうしょう驚いた。
ただし、Vp=100Vを超えた場合もそうであるかどうかは不明。

左チャンネルと右チャンネルとで歪率を比較すると結構な差がある。これはC3mの個体差によるものであろう。

続いて電源部。高電圧部の平滑回路にはチョークを入れた。
(トラブルシューティング)
いつものように、ここに至るまで艱難辛苦(おおげさ)がいくつかあった。
1)終段の発振
VR2を回して徐々にアイドリング電流を増やしていくと、ある時点から発振を始めた。発振は12秒間隔で始まり、数秒間大暴れした後また静かになるという繰り返し。当初、増幅素子を疑ったり、配線を疑ったがすべてシロ。
最終的にGS66502Bのドレイン端子近傍にバイパスコンデンサC20をつけたら、もののみごとに発振はおさまった。ソースフォロワのドレインはコンデンサでインピーダンスを下げるというのが鉄則。これを忘れていた。
ついでにC19も付加してLND150にも対策を行った。
わかってみればまことに馬鹿馬鹿しいことであるが、この現象に悩むこと数週間。一時は止めようかと思ったことも。諦めなくてよかった。
ついでに言えば、バイパスコンデンサのことに気がついたのは、たまたまドレイン付近に指を触れたら発振がおさまったことがきっかけだった。
発振の原因を探るとき、いろいろなところを感電に注意しながら触れてみるというのは、意外な発見をもたらすことがある。

2)C3mの第二グリッド電圧の固定方法
当初、定石通りに+140Vを抵抗で分割してG2の電圧を与えていた。
そこへたまたまコメント欄にコメントが入り、私の過去の記事で定電圧ではなく定電流でG2電圧を与える方法について書いてあったのに言及してくださった。こちらはすっかり忘れていたが、そう言えばこんな方法もあるのかと逆に教えられて、さっそくLND150を使った定電流回路に入れ換えた。実装面から言えば場所を取らずコンパクト、まことによろしい。音については、他の変更と一緒に行ったのでなんとも言えないが、すくなくとも悪いところは一切ない。

3)G2電圧のバイパスコンデンサ
当初、C13には手持ちにあった一般的な電解コンデンサ100uFを使っていた。高域が若干弱く聞こえる原因はC11の値だけではなく、このコンデンサの影響だろうと推測。そこでC14を追加した。

4)初段C3mの発振
片チャンネルは安定だったのが、別チャンネルが発振してしまった。発振周波数はおよそ400KHz。もちろん配線ミスはない。ああでもないこうでもないということで、結局C11を入れたら見事に安定になった。当初5pFとして高域カット周波数を35KHzとしていたが、音を聴いてみると若干高域がおとなしく感じる。そこで3pFに変更すると、これが一変して余韻が細やかに広がってすばらしい。


(残された課題)
・C3mのヒーターは終段の電源からもらっていて、電圧を合わせるためにR7, R8を挿入しているが、20Vの規定電圧に若干足りなくて少し不満がある。ここは定電流駆動にしてみたい。

・R14は2N3634のベース電流によって電圧がかかるようになっていて、アイドリング電流設定の役割も兼ねている。なのでどうしても高抵抗値になりVARが使えない。ここは手持ちの進抵抗とした。R14は音に大きな影響があるはず。これが気がかりで、将来なんとかしたい。

・残留ノイズは0.5mVあって、ダブルウーファーではややハム音が聞こえる。またシールドがないために、チッチというような静電誘導によるノイズも耳障りなときがある。ここあたりも対策が必要であろう。

(総合評価)
このアンプは300Bシングルアンプに追いつくことを目標として設計を始めた。当初は終段にもゲインをもたせたソース接地で攻めたのだが、どうしても音が腰高で満足できない。
今の私の技量ではソース接地でよい結果を得ることは難しいと判断し、ドレイン接地(ソースフォロワ)とした。実を言えばドレイン接地は以前も試しことがあって、そのときは平凡な音しか出ず、がっかりした記憶がある。何も手を打たなければ、今回も失敗する可能性がある。

そこで300Bシングルアンプに範をとって初段をC3mの五結とした。これが決め手となった。C3mの五結はすばらしい。独特の濃厚で重心の低い音はここから出ているに違いない。 なので300Bシングルアンプとよく音の傾向がよく似ている。
もちろんそれだけではない。終段GaN素子は2N3634のエミッタフォロワでドライブしたことも効いているに違いない。

純粋の真空管派の方がご覧になれば、半導体を混ぜたこんな回路は歯牙にもかけないだろう。けれども真空管と半導体の両方のよいところをうまく活かせば、決して純真空管アンプに引けを取らないアンプを造ることができるのではないか。いろいろ意見はあるかもしれないが、とにかくそういう可能性を切り開いていきたいと願っている。

GaN Single End Power Amp その92024年03月01日 22時17分13秒

この一ヶ月間、うんうんうなりながらGaNアンプの試作を繰り返していた。それがやっと昨夜完成し、音出しにこぎ着けることができた。途中経過は後で報告するとして、まずは姿を紹介。
せっかくなので新しいカメラで撮影してみた。
姿はすこぶる無骨で魅力に乏しいが、音は苦労の甲斐があってすばらしい。とにかく温度感があって濃密。聴いていてからだがリズムに同期して動く。これが私にとって「良い音」の基準。

完成してしまうと、安堵感とともに、一抹の寂しさも感じてしまう。この次は何を目標にしたらよいか。結局、妻に馬鹿にされるとおりに、作っては壊しの繰り返しなのかもしれない。

孫ども 来て、遊んで、帰る2024年03月01日 22時09分40秒

ところでその孫たちだが、2月22日にやって来ると嵐のような日々が過ぎ、26日に帰って行った。

周りでは「孫は来てよし、帰ってよし」と言っているのをよく聞いていたが、まさにそのとおり。孫を駅に見送ったときは、頭がボーっとしてきた。妻はとうとう力尽き、熱を出して寝込んだ。

年に一度しか会えないのだから、どうしてもじいじとばあばははりきってしまう。こうなることは予想していたけれど、やっぱり大変だった。

ところでカメラだが、使い慣れないままにシャッターを押したのだからまともなものが撮れるはずもなく、ほとんどが失敗作ばかり。そのなかでも奇蹟的にすばらしいのが一枚あった。うぶ毛まで一本一本綺麗に写っている。もっと使いこなせるようになったら、どんな絵が見えてくるのだろうか。

カメラを買った2024年03月01日 22時01分35秒

これまでカメラに興味を持ったことはなく、撮ったとしてもまったく平凡な絵にしかならず、私はまったくセンスがないものとあきらめていた。

そんななか、手元にあるデジカメがさすがに古くなってiPhoneの画像のほうがよほど素晴らしく写るのが気になってきて、新しいのに買い換えようかと思ってきた。しかしなかなかきっかけがない。

そこへ、北関東に住む息子が孫二人を連れて帰省するとの連絡が入った。私にはおよそⅠ年半ぶりの再会で、妻は下の孫に今回初めて会うことになる。普段なかなか会えない孫たちの写真を綺麗に撮って残したいという爺(じいじ)の愛情がムクムクと湧いてくる。

そこで何を選ぶか、しばらく悩むことになる。何年か前、セミプロ級の写真家である友人が我が家を訪ねてきたとき持っていたのがSIGMAであった。あのときはそれがどの程度のカメラなのかわからなかったが、調べてみてなるほどと感心した。どうせ買うなら普通のものは物足りない。いっそのこと「突っ張った」カメラにしよう。

そこで最終的に選んだのがSIGMA DP1 Quattro フォビオン・センサー搭載。
ちまたでは、癖が強くて個性的、シャッターをただ押しただけではうまく撮れない最弱カメラ、というような評判。けれども一方では、このカメラに惚れ込んでいる方もちらほら。かなり昔に生産終了しているのに、依然として高値で取引されている。某オークションに新品に近い状態のものが出品されていたのを見つけ、幸いほかに競合する方も少なく、納得できる価格で落札できた。

今回のカメラ選びでわかったことは、つくづく自分はへそ曲がりで変人らしいということだ。多くの人が通う大路ではなく他人が通らない裏道、細道ばかりを好む。こればかりは性分だから死ぬまでなおりそうもない。