GaN 単段アンプ その5 ― 2021年03月01日 15時42分15秒
今の回路での諸特性を記しておく。
電源電圧 22.8V
ドレイン電圧 15.3V
周波数帯域(-3dB) 40Hz〜45KHz
Gain: 24dB (ただし発振器の出力インピーダンスが600Ω場合)
最大出力(THD 5%時) 3W
THD(%)
出力(W) 0.01 0.1 1
100Hz 0.28 0.52 2.01
1KHz 0.36 0.21 1.43
10KHz 0.52 0.24 1.61
電源電圧 22.8V
ドレイン電圧 15.3V
周波数帯域(-3dB) 40Hz〜45KHz
Gain: 24dB (ただし発振器の出力インピーダンスが600Ω場合)
最大出力(THD 5%時) 3W
THD(%)
出力(W) 0.01 0.1 1
100Hz 0.28 0.52 2.01
1KHz 0.36 0.21 1.43
10KHz 0.52 0.24 1.61
GaN 単段アンプ その4 ― 2021年03月01日 14時54分38秒
最初のブレッドボードは、ジャンク箱に眠っている部品をかき集めて作った。その後、MouserからKEMETの電解コンデンサが届いたので、それに入れ替えた。ただし、出力コンデンサだけは注文数を間違えて一個しか届かなかったので、現在再発注をかけているところ。
対策した回路は、2月25日に左右チャンネル分ができあがった。それ以来24時間通電状態においてエージングを重ねている。
以下はいまの状態。
最初に出てきた音は、耳に突き刺さるようなとげとげしさとまとまりに欠け、まったくひどかった。
その後、時間とともに熟成が進み、およそ100時間経過した今日の状態では、まだまだではあるけれど音の姿形はだいぶ整ってきた。
音の評価は、他のアンプを基準にするのが一番わかりやすい。私の場合は、初段にWE420A、終段にGaNを使ったサークロトロンとKT88pp真空管アンプとの比較となる。
音で言えば、おなじGaNを使っているせいかサークロトロンと似ている。しかし、印象が全然違う。これがたった一個の能動素子で稼働しているアンプなのかと、だれもが疑うのではないか。とにかく、音が前に出てきて立体的で、サークロトロンもかなりよいと思っていたけれど、この音を聴くと「あっさりして薄い」と言わざるを得ない。実に音が濃密で、なおかつ押し寄せてくる。
回路を見るなら「原始的」で、増幅機が発明された百年前と基本的には変わらない。それなのにこんな音が出てくる。一体今まで何をしてきたのだろうかと呆然とする。これが、GaN素子と空芯コイルが作り出す音なのだろう。
GaN素子はD級アンプの出力段で使われることはあっても、シングルエンドのA級アンプに使われるケースは寡聞にして知らない。すこし大げさかもしれないけれど、GaNをアナログ・オーディオ・アンプに応用した場合に、どのような音を出すのかを検証した初めての報告ではないか。
この音を聴いてしまったら、これからは、このスタイルのアンプしか作らない(作れない)だろうという予感がする。
オヤイデから送られてきたままの姿ではあんまりなので、最終の評価はコイルをきちんと巻き直してからにする。

対策した回路は、2月25日に左右チャンネル分ができあがった。それ以来24時間通電状態においてエージングを重ねている。
以下はいまの状態。

最初に出てきた音は、耳に突き刺さるようなとげとげしさとまとまりに欠け、まったくひどかった。
その後、時間とともに熟成が進み、およそ100時間経過した今日の状態では、まだまだではあるけれど音の姿形はだいぶ整ってきた。
音の評価は、他のアンプを基準にするのが一番わかりやすい。私の場合は、初段にWE420A、終段にGaNを使ったサークロトロンとKT88pp真空管アンプとの比較となる。
音で言えば、おなじGaNを使っているせいかサークロトロンと似ている。しかし、印象が全然違う。これがたった一個の能動素子で稼働しているアンプなのかと、だれもが疑うのではないか。とにかく、音が前に出てきて立体的で、サークロトロンもかなりよいと思っていたけれど、この音を聴くと「あっさりして薄い」と言わざるを得ない。実に音が濃密で、なおかつ押し寄せてくる。
回路を見るなら「原始的」で、増幅機が発明された百年前と基本的には変わらない。それなのにこんな音が出てくる。一体今まで何をしてきたのだろうかと呆然とする。これが、GaN素子と空芯コイルが作り出す音なのだろう。
GaN素子はD級アンプの出力段で使われることはあっても、シングルエンドのA級アンプに使われるケースは寡聞にして知らない。すこし大げさかもしれないけれど、GaNをアナログ・オーディオ・アンプに応用した場合に、どのような音を出すのかを検証した初めての報告ではないか。
この音を聴いてしまったら、これからは、このスタイルのアンプしか作らない(作れない)だろうという予感がする。
オヤイデから送られてきたままの姿ではあんまりなので、最終の評価はコイルをきちんと巻き直してからにする。
GaN 単段アンプ その3 ― 2021年03月01日 14時03分25秒
いつものことであるが、その後いろいろ不具合が見つかって、修正を加えた。と、結果だけ書けばいかにもすんなりといったかのように思われるが、実情はその反対で、暗闇を手探りで進むかのようなときもあった。
・不具合 その1
テスターをみながらドレイン電流を設定し、そのまましばらく様子を見ていたときは、きわめて安定していたように見えたので、その後24時間通電状態にしておいた。
翌朝確認してみると、やけにコイルが熱くなっている。手で触れないほどではないにしても、あきらかに異常な状態。
原因はわかってしまえば「ああ、そういうことか」となるのだが、最初はとまどった。要するに、GaNから見れば熱的に負の暴走状態に陥ってしまったということ。
GS66502Bは温度上昇とともにドレイン電流が減少する性質なので、一般的にはバイポーラトランジスタのような温度補償は必要なく、定常状態になると電流は安定する。今回のケースもそうなると期待していた。
しかし、ドレインには銅線コイルがある。その銅なのだが、電流が流れると抵抗成分によって温度が上昇し、抵抗値が増大する。
いっぽうGaNのほうは五極管に似た性質なので、gsが一定だとコイルの抵抗値が増大してドレイン電圧Vdが低下しても電流値はほとんど変わらない。
その結果、銅線コイルは時間とともに温度が上昇し、それに伴い抵抗値が増大し、ドレイン電圧はゼロに近づき増幅回路としてはまともには動かなくなる。その代わり、コイルの消費電力が増大し熱くなった、ということだった。
そうすると対策はおのずと見えてくる。ドレイン電圧Vdが低くなれば、Vgsも小さくなるようなフィードバックがかかるようにすればよい。
・不具合 その2
最初にまず左チャンネルを作り、諸特性を測定した。その結果は前回の報告の通りで、ひずみ率は期待した値におさまったので、右チャンネルもこのまま作ればよいと判断した。
下は、VP-7723Bで測定している様子。
ところが作って特性を測定してみると、目を疑うほどひずみ率が悪い。0.1W出力で1%を超え、1W出力では目も当てられないような数値となった。最初は、何か部品が壊れているのかと疑い、左右チャンネルの部品を一個一個入れ替えてみても、現象変わらず。
GaNを新しいものに変えてもダメ。これにはまいった。
今から考えれば、同じ電流値を設定しようとしても右チャンネルだけ、やけにVgsが高いのは気になっていたが、それもなぜかはわからなかった。
途中を省略して結論をまとめれば、不具合に至る要素は二つあったと思われる。
1)入力トランスに使ったPO400601の一次巻線は二つあって、一つはインピーダンス40Ωとして、かつての調整卓で使われていた実績がある。しかし、もうひとつの巻き線の正体が不明で、調整卓の回路図にも載っていない。インダクタンスは測定できたので、使えるものと判断したのだが、期待通りに動いていない可能性を捨てきれない。よくわからないものをNFBとして使うのは、やはりよくない。避けることにする。
2)これは試行錯誤してわかってきたことなのだが、GaNが低ひずみ率で動作する領域は意外に狭く、理想領域から少しでも外れるととたんにひずみ率が跳ね上がる。
当初、ひずみ率を改善するには、ドレイン電圧を上げればよいし、ドレイン電流を増やせばよいと単純に思っていたので、反対の結果が出たときは頭を抱えてしまった。
左チャンネルではうまくいったのは偶然に過ぎなかった。
これらの対策を加えた最新の回路図は以下の通り。
・不具合 その1
テスターをみながらドレイン電流を設定し、そのまましばらく様子を見ていたときは、きわめて安定していたように見えたので、その後24時間通電状態にしておいた。
翌朝確認してみると、やけにコイルが熱くなっている。手で触れないほどではないにしても、あきらかに異常な状態。
原因はわかってしまえば「ああ、そういうことか」となるのだが、最初はとまどった。要するに、GaNから見れば熱的に負の暴走状態に陥ってしまったということ。
GS66502Bは温度上昇とともにドレイン電流が減少する性質なので、一般的にはバイポーラトランジスタのような温度補償は必要なく、定常状態になると電流は安定する。今回のケースもそうなると期待していた。
しかし、ドレインには銅線コイルがある。その銅なのだが、電流が流れると抵抗成分によって温度が上昇し、抵抗値が増大する。
いっぽうGaNのほうは五極管に似た性質なので、gsが一定だとコイルの抵抗値が増大してドレイン電圧Vdが低下しても電流値はほとんど変わらない。
その結果、銅線コイルは時間とともに温度が上昇し、それに伴い抵抗値が増大し、ドレイン電圧はゼロに近づき増幅回路としてはまともには動かなくなる。その代わり、コイルの消費電力が増大し熱くなった、ということだった。
そうすると対策はおのずと見えてくる。ドレイン電圧Vdが低くなれば、Vgsも小さくなるようなフィードバックがかかるようにすればよい。
・不具合 その2
最初にまず左チャンネルを作り、諸特性を測定した。その結果は前回の報告の通りで、ひずみ率は期待した値におさまったので、右チャンネルもこのまま作ればよいと判断した。
下は、VP-7723Bで測定している様子。

ところが作って特性を測定してみると、目を疑うほどひずみ率が悪い。0.1W出力で1%を超え、1W出力では目も当てられないような数値となった。最初は、何か部品が壊れているのかと疑い、左右チャンネルの部品を一個一個入れ替えてみても、現象変わらず。
GaNを新しいものに変えてもダメ。これにはまいった。
今から考えれば、同じ電流値を設定しようとしても右チャンネルだけ、やけにVgsが高いのは気になっていたが、それもなぜかはわからなかった。
途中を省略して結論をまとめれば、不具合に至る要素は二つあったと思われる。
1)入力トランスに使ったPO400601の一次巻線は二つあって、一つはインピーダンス40Ωとして、かつての調整卓で使われていた実績がある。しかし、もうひとつの巻き線の正体が不明で、調整卓の回路図にも載っていない。インダクタンスは測定できたので、使えるものと判断したのだが、期待通りに動いていない可能性を捨てきれない。よくわからないものをNFBとして使うのは、やはりよくない。避けることにする。
2)これは試行錯誤してわかってきたことなのだが、GaNが低ひずみ率で動作する領域は意外に狭く、理想領域から少しでも外れるととたんにひずみ率が跳ね上がる。
当初、ひずみ率を改善するには、ドレイン電圧を上げればよいし、ドレイン電流を増やせばよいと単純に思っていたので、反対の結果が出たときは頭を抱えてしまった。
左チャンネルではうまくいったのは偶然に過ぎなかった。
これらの対策を加えた最新の回路図は以下の通り。
空芯コイルの作り方 ― 2021年02月18日 21時52分11秒
単段アンプの回路がだいたい定まったところで、次の課題は空芯コイルを巻くことである。
これまでコイルを巻いたのは、中学生時代に短波ラジオをつくったときと、小学校五年の息子と一緒にゲルマニウムラジオを作ったときくらいである。いずれも手でぐるぐる巻けば、なんとかかたちになった。
しかし今回は規模が違いすぎる。かなり準備して取りかかる必要がある。
まずコイルのサイズを決めることが最初のステップとなる。ところが、ネットで検索すると単層コイルの計算方法はあっても、複層コイルの計算方法は出てこない。なかには試行錯誤で決めるしかないと書いてあるものもある。これには困った。
それでもなんとか調べてたら、TESLAのホームページに掲載されているのを発見した。
(画面はhttp://tesla-institute.com/%21app/sim/acic.phpより引用)
オヤイデ電気が掲載している情報に寄れば、UEW銅線1Kgはおよそ270m。この長さで最大のインダクタンスを実現する最小のサイズはなにか。計算させてみると、コイルの巻き幅は20mmから30mm。直径は110mm程度となった。これならば現実的な大きさとなる。
次の課題は、コイルの巻き枠と、巻き線治具をどうするかとなる。
このことについてある方から情報をいただき、感謝申し上げる。
これまでコイルを巻いたのは、中学生時代に短波ラジオをつくったときと、小学校五年の息子と一緒にゲルマニウムラジオを作ったときくらいである。いずれも手でぐるぐる巻けば、なんとかかたちになった。
しかし今回は規模が違いすぎる。かなり準備して取りかかる必要がある。
まずコイルのサイズを決めることが最初のステップとなる。ところが、ネットで検索すると単層コイルの計算方法はあっても、複層コイルの計算方法は出てこない。なかには試行錯誤で決めるしかないと書いてあるものもある。これには困った。
それでもなんとか調べてたら、TESLAのホームページに掲載されているのを発見した。

オヤイデ電気が掲載している情報に寄れば、UEW銅線1Kgはおよそ270m。この長さで最大のインダクタンスを実現する最小のサイズはなにか。計算させてみると、コイルの巻き幅は20mmから30mm。直径は110mm程度となった。これならば現実的な大きさとなる。
次の課題は、コイルの巻き枠と、巻き線治具をどうするかとなる。
このことについてある方から情報をいただき、感謝申し上げる。
GaN 単段アンプ その2 ― 2021年02月18日 20時57分27秒
その後の経過を報告する。
まず、このアンプの要となる空芯コイルについてだが、オヤイデ電気から購入したUEW銅線(0.8mm)1Kgを使う。この姿で測定してみると45mH DCR=7Ωとなった。十分使える。将来はきちんとまき直すとして、とにかくどんな音が出るか早く聴きたかったので、そのままアンプにインストールした。これで素晴らしい音が出れば実に痛快だろうと思っていたら、本当にそうなった。
そのいっぽうで、いくつか問題も出てきた。
最初に構想した回路では、NFBを入力トランスの2次側に戻している。きちんと動作はする。しかしどうもなにか喉に小骨が引っかかる感じがあってすっきりせず、気に入らない。別の回路を考えることになった。
問題はNFBのかけ方にあるのだろうと仮説を立てた。そこでまず入力トランスをUTCからPO400601に交換した。このトランスは市販されておらず、以前たまたま手に入ったミキシングコンソールの出力に使われていたものである。
このトランスは、1次側に2回路のコイルが巻かれていて、インダクタンスが大きい方を入力に、小さい方をNFBの入力に使える。ちなみに2次側は600Ωスプリットとなっている。
いろいろ調整してフィクスした回路は以下の通り。 おなじみのブレッドボードに組み立てた姿のいくつかを写しておく。
メインの基板はご覧の通りに、入力トランスと数個の部品のみ。実に簡素なり。上方にVAR抵抗が見える。
増幅素子がGS66502Bであることの証拠を一枚。
作りっぱなしはよくない。性能を測定する。まずは矩形波のかたちから。測定条件は、入力10KHzで、8Ω負荷、出力は2Vp-p。
ご覧の通り、実に素直でくせがない。よい兆候である。
ゲイン 33dB
周波数帯域(-3dB) 20 ~ 42KHz
THD(%)
出力(W) 0.01 0.1 1 3
100Hz 0.20 0.34 0.70 1.44
1KHz 0.16 0.06 0.13 0.83
10KHz 0.16 0.20 0.85 1.45
THD 5%を最大出力とすれば、5Wとなった。
まず、このアンプの要となる空芯コイルについてだが、オヤイデ電気から購入したUEW銅線(0.8mm)1Kgを使う。この姿で測定してみると45mH DCR=7Ωとなった。十分使える。将来はきちんとまき直すとして、とにかくどんな音が出るか早く聴きたかったので、そのままアンプにインストールした。これで素晴らしい音が出れば実に痛快だろうと思っていたら、本当にそうなった。
そのいっぽうで、いくつか問題も出てきた。
最初に構想した回路では、NFBを入力トランスの2次側に戻している。きちんと動作はする。しかしどうもなにか喉に小骨が引っかかる感じがあってすっきりせず、気に入らない。別の回路を考えることになった。
問題はNFBのかけ方にあるのだろうと仮説を立てた。そこでまず入力トランスをUTCからPO400601に交換した。このトランスは市販されておらず、以前たまたま手に入ったミキシングコンソールの出力に使われていたものである。
このトランスは、1次側に2回路のコイルが巻かれていて、インダクタンスが大きい方を入力に、小さい方をNFBの入力に使える。ちなみに2次側は600Ωスプリットとなっている。
いろいろ調整してフィクスした回路は以下の通り。 おなじみのブレッドボードに組み立てた姿のいくつかを写しておく。




作りっぱなしはよくない。性能を測定する。まずは矩形波のかたちから。測定条件は、入力10KHzで、8Ω負荷、出力は2Vp-p。
ご覧の通り、実に素直でくせがない。よい兆候である。

周波数帯域(-3dB) 20 ~ 42KHz
THD(%)
出力(W) 0.01 0.1 1 3
100Hz 0.20 0.34 0.70 1.44
1KHz 0.16 0.06 0.13 0.83
10KHz 0.16 0.20 0.85 1.45
THD 5%を最大出力とすれば、5Wとなった。
最近のコメント