KT88pp(2020年版) その32020年04月15日 20時19分15秒

いつものことだが一度で完成することはなくて、大概は後から手直しが入る。

今回は二つの問題が発生した。一つ目。音が期待したほどよくならない。ラジオを聴くぶんにはこれで間に合うのだろうが、どうも気に入らない。
そして二つ目。初段の真空管をMullard 6DJ8からTESLA E88CCに交換したらおもいっきり発振する。グリッドの寄生発振防止用抵抗の値を多くしてもダメ。
カスコード接続した初段を反転増幅回路としてNFBをかけている。おそらく不安定のの原因はこれ。つまり当初の設計がよろしくなかったということだ。

そもそもオーバーオールのNFBをかけようとしたのは、周波数特性の改善が目的。Dynacoのトランスはどうしても高域が早めに低下して、そこが唯一の不満として残っていた。もしほかの手段で改善できるのなら、それに越したことはない。

それでいろいろ調べてみると、カソード帰還という方法があることに気がついた。これなら出力トランスのの接続を変えるだけで実現できる。帰還抵抗がいらなくなるので、回路もシンプルになる。で、やってみることにした。

変更後の回路は以下の通り。やたらに抵抗が多く見えるが、このうちの12個は寄生発振防止用で、動作に最低限必要な抵抗は7本であるから、フルバランス回路としてはむしろ少ない方だと思う。
作りっぱなしはいけない。特性を測定する。

ゲイン:29.3dB(L ch) 29.0dB(R ch) at 1KHz
周波数特性: 8〜73.5KHz (-3dB)
残留ノイズ: 390uV(入力開放)

調整なしで左右のゲイン差が0.3dBにおさまった。初段に使ったE88CCのマッチングがとれているためだろう。これはeBay経由で購入したもので、非常に良心的な業者だった。
そしてなによりも周波数特性が大幅に改善されたのはうれしい限り。これなら大満足である。

続いて11KHzの矩形波。少しオーバーシュートが見られる。この程度であれば許容範囲だろうか。
そして内部の様子。いつものように、後から改造の手を加えているので最適化された状態にはなっていない。
動作はすこぶる安定していて、ただいまネットラジオを流しながらエージング中。
このままいくとメインの座を脅かしそうな予感がする。YAMAHA NS-10M PROで聴いていても高域がすっと伸びていて気持ちが良い。

KT88pp(2020年版) その22020年04月09日 22時53分51秒

調整中のKT88pp。終段のアイドリング電流は、ひかえめにして30mAに設定。前回は、初段と終段を直結して非常に苦労した。CR結合でDC的に分離すると、なにがあっても被害が全体に及ぶことがないので、心理的にも負担が少ない。

続いて裏面。いつものことだが、手を加えながら完成度を上げているので、後から見ると「ああしておけば良かった」という点がいくつかある。

そして火をともした風景。妻はこれを見て、いたく感激していた。こういう演出が大事である。

KT88pp(2020年版) その12020年04月09日 22時17分34秒

あしたはどうなるのかと緊張と不安が渦巻く中、こちらは淡々と目の前にあることに取り組みながら日々を過ごすことをこころがける。
妻も極力外出を控え、二階のリビングに座り込んでずらりとそろえた「婦人之友」のバックナンバーを研究する毎日。記事を参考にしながら黙々と手を動かしていろいろ作っている。そうしたら、その作業の合間にラジオを聴きたいのでなんとかならないかという話になった。ネットでも聴けるのだが、iPhoneやiPadでは音が悪く、できるなら真空管アンプがよいという。
ということで、話は結局リビングにオーディオ装置を作り上げることにおさまった。

真空管アンプとなれば昨年末から作りかけているKT88ppがある。ここ二週間、集中して作業した。いつもとおり、あれやこれやトラブルに見舞われたけれど、ななんとか完成にこぎ着けた。

まずはメインの回路図。特徴は大きく三つある。反転入力NFBと、初段と終段の間にカソードフォロワーを設けたこと。そして、OPTの中点にチョークトランスをつないでいること。これを入れると最大出力が大幅にダウンするけれど、音はシングルに近づくと言われて、以前から気に入っている。

次に電源部。ここはあまり特徴はない。一つだけ補足するなら、一般にヒーターの片側は接地するところ、Dynaco MK3に則って中点をCを介して接地し、フローティングさせている。これで、カソードフォロワーのカソード・ヒーター間電圧の問題をクリアできる。

次に平滑回路、デカップリング回路、バイアス回路。チョークトランスを使って、これまでに比べてシンプルに仕上がった。

KT88pp 制作奮戦記その42019年12月09日 12時56分46秒

今回のアンプの設計仕様のポイントは以下の通りである。
1)初段から終段までバランス回路とする。
2)出力トランスの高域特性を改善するためにNFBを2次側からかける。
3)初段と終段を直結することで、カップリングCを排除する。

以下、これを実現するために試作段階で遭遇したトラブルについてまとめる。

トラブル一覧表

1)出力トンスの2次側の処理について

2次側をGNDから浮かせてはならないことは知っていた。それで回路としてはNFBの抵抗を介し、初段のバイアス電圧部で2次側出力がGNDにつながるように設計した。
ところが、KT88のアイドリングを上げていくと発振し、最初は原因がつかめず迷走するも、結論として2次側がGNDから「浮いている」ためと判明。
先人の知恵を拝借すると、バランス回路では4Ω端子をGNDに落とすケースと、100Ω程度の抵抗で0Ωと8Ω(もしくは16Ω)をGNDに落とすケースとがあることがわかった。Dynacoトランスは4Ω端子があるのでこれをGNDに落とせばシンプルに解決するはず。しかし、シミュレーションしてみるとなぜかひずみ率が悪化するとの予想。
手持ちの関係から最初は510Ωで試してみるとIp=25mA以上で発振してしまう。結局、270Ωで安定することがわかった。(前回掲載の基板には510Ωのときのものが写っている)

2)MOSFETの温度特性

当初、定電流回路にDN2540を使うことにしていた。ところが試作してみるとスイッチオンの後のドリフトが大きく、プレート電流が大きく変動し、全く実用にならない。
TL431のような温度補償された定電圧素子を使えば解決するであろう。しかし、できるだけ手元にある部品を使いたいとの主旨から結局サブミニチュア真空管7963に登場願った。結果、ドリフトは実用範囲に収めることができた。

3)初段の高域特性が極端に低くなる現象

初段はカスコード増幅回路を構成しているので出力インピーダンスがかなり高い。しかし、KT88と直結させても周波数特性にはさほど影響が出ないだろうと踏んでいた。
ところが測定してみると予想以上に高域が早く落ちてしまう。当初ほかに何か原因があるのではないかと悩んだが、結局KT88の入力容量が影響しているとの結論に至った。
となると対策は、カソードフォロワーかソースフォロワーを入れるしかない。実機では、定入力容量のMOSFETであるLND150を使うことにした。小さな部品なので基板に実装しやすかったことも決め手となった。
NFBをはずしてKT88のグリッド部分の周波数特性を測定すると、-3dBポイントは200KHz以上となり、満足できる結果となった。

以上のトラブルは、ベテランの方々から見れば設計段階ですぐに見抜ける程度の話であろう。しかしNFBをかけて出力トランスを使った真空管アンプのノウハウは皆無に近い私には、貴重な体験であった。
今回のことをとおして、「本物の知識は痛い目に遭わないと身につかない」、言い換えれば「身銭を切らなければ自分のものとならない」との真理を改めて学ぶ機会となった。

昨今はネット検索で手軽に情報を手に入れられるたいそう便利な世の中になったが、本物の知識を蓄えている人がどれだけいるのか、老婆心ながら心配になってくる。

KT88pp 制作奮戦記その32019年12月09日 12時20分13秒

KT88ppのエージングが進むうちに音がこなれてきて、当初キンキンと妙にうるさかったり、低音域も団子状になってさえなかったのがだいぶ様になってきた。

一方、課題も見えてきた。右チャンネルの初段に使っているE88CC(Siemens)が不定期にノイズを出す。また両チャンネルともに、ツイーターに耳を近づけるとシャーというノイズがやや多い。このe88ccは数年前に4本ペアで中古で手に入れたもの。

実はアンプを組み終えて調整に入るときに、この真空管がトラブった。1本は指でたたくと盛大にアイドリングが変動してしまいNG。もう1本は、双極管の偏差が大きすぎてホットとコールドのバランスが全くとれず、これもNGに。残った2本でやっと完成にたどり着く始末。
直結式は初段の安定度が命なので、相当よいものを使わないとKT88を一瞬にして召天させかねない。白状すると、実際に2本を召天させてしまった(涙)。
その点、Circlotronに使っているWE420Aはすばらしい。一度出力電圧をゼロポイントに調整すると、スイッチオンからのドリフトは極小で、これにはいつも驚かされる。

もう一つの課題は、少々ハムが多いこと。あまり能率の高くないYAMAHAのブックシェルフスピーカNS10-PROでさえもハムが聞こえる。原因はわかっていて、マイナス電源のリップルを抑え切れていないためである。これは近々対策予定。

さて、一度作ったものは時間とともに記憶がこぼれ落ちていく。自分が何をしたのか備忘録代わりに、基板の表面と裏面を載せておく。 まずは表面から。
基板の真ん中ではちまきをしているのは2N4403。温度差があるとホットとコールドのアイドリング電流がずれてしまうので、一応熱結合してある。
そのはちまきの上側と下側にそれぞれ二個ずつ見えるのがNFBとして使っているVishayのVAR 抵抗で、KT88ppの実力を追求するためにこれを使うことにこだわった。

次に裏面。
基板の真ん中あたりに見える水色のワイヤーはヒーター線である。いつものとおりに、何度も回路を修正したので最適な配置とはなっておらず、ジャンパーが何本か見える。