KT88(三結)ppアンプ 固定アイアス電源その後2018年06月05日 21時57分53秒

固定バイアス電源の整流にGaNを投入してからだいぶエージングが進んできた。当初の堅さがほぐれて、のびのびしてきた。

結論から言うと、以前のInfineonのダイオードの音から大きな変化があった。変化の仕方はほかの箇所に使った場合と全く同じで、音が雄大となり眼前に音が噴出してくる印象がある。また低音域も拡大し、楽器や人の声の雰囲気が一層生々しくなる。

良いことずくめだが、GaN素子一個で理想のアンプができあがるわけではない。ほかとのバランスがある。このアンプは、おそらく出力トランスの影響なのだろう、高い周波数域の押し出し感が一歩不足する。これさえあれば相当のものだと思うのだが、惜しい。大先輩たちのDynaco MK3の評価の中に「雄大なピラミッド型の音」というのがあったが、言葉を換えれば出力トランスの設計が古いため、高域が速く減衰しやすいということだろう。以前も書いたように、GaNはシステムの弱点をさらけ出してしまう怖さがある。

300Bシングルアンプを固定バイアスで作りたいとの計画を以前から持っていた。この音を聞いてしまった以上、固定バイアス電源にGaN以外のダイオードを使うことなど考えられない。

その前にCirclotronの真空管バージョンを作らなければならないのだが、徐々に当地も暑くなってきたので手をつけるのはもう少し先になるかもしれない。

KT88pp 固定バイアス電源を考える2018年05月23日 22時03分35秒

真空管アンプの固定バイアス電源の音に対する影響について具体的に言及したのは、私の知る限り松並希活先生が初めてではなかっただろうか。(写真はその記事が掲載されいている無線と実験1994年2月号)

この記事によれば、終段管(300Bpp)のバイアス電源の整流に6AL5を使用した結果、「従来のダイオードと違った力強く厚みのある音と同時に、ふくよかな雰囲気のある再生音を得ることができた」とある。ところがなぜか先生のその後の記事で再び採用されることはなかったし、追随する方もとうとう現れなかった。まことに不思議である。

KT88ppアンプの固定バイアス電源の整流ダイオードをInfineonのSiCからGaN(GS666502B)に入れ替えてから9日間が経過した。毎日およそ4時間通電しているので、エージングが完了するのは遠い先である。現時点では、低音が薄く高い周波数域にエネルギーが偏っていてやや足が地に着いていない。それでもSICダイオードからは得られなかった音が聞こえる。

SiCダイオードの時は、低音がゆるく、高い方の音の減衰がはやく始まり、それは無帰還のためにダンピングファクターが小さいのと出力トランスの限界によるものだろうとあきらめていた。ところが、GaNに入れ替えると、あれほど不満に思っていた欠点がほとんど感じられない。この先どう変化していくのか、もう少し様子を見ていく。

真空管アンプの終段を自己バイアスとするか固定バイアスとするか、これまでいろいろ議論があった。世の中は、概ね「長期安定性」と「メンテナンスフリー」のメリットが勝って自己バイアス派が優勢で、固定バイアス派は肩身が狭い(?)

固定バイアスがなかなか普及しない理由は実はほかにもあって、整流素子にSiダイオードを使っていたため、このことが足を引っ張ってしまい、固定バイアス駆動のメリットが聴き取れなかった、それで固定バイアスが歴史的に敬遠されてきたのではないか。
以前は、真空管派が半導体を極端に毛嫌いするのを見て複雑な思いがあったが、今なら理解できる。

もしGaNが固定バイアス電源の整流素子として有望であるなら、真空管アンプの将来に少なからぬ影響を与える可能性がある(と、おおぼらを吹く)。

Dynaco MK3(大幅改造)にGaNを投入する2018年05月14日 22時24分35秒

Circlotronに整流素子にGaN(GS61004B)を投入したのは既報の通り。当初は、スイッチオンの瞬間に破壊してしまったトラウマにとらわれて部屋にいるときだけしか通電できなかった。数日して問題ないことがわかってきたのでエージングのために24時間運転に切り替えた。

エージング時間による変化の仕方は、不思議なことにGaNであってもほかの素子と全く同じようだ。最初は上も下もなだらかに切れ落ちる。それでも素直な音が出る。そこから時間がたつにつれ急激に音がつまらなくなり、聞いていてイライラしてくる。この谷底状態では低音がでず高音に偏るという症状も加わって最悪である。そこから我慢のしどころで、数百時間経過して本調子になる。

CirclotronのGaNもそんな最悪状態を通過して良い方向に向かうかと期待した。ところがよろしくない。GaNが悪いのではない。ほかの欠点が浮き彫りになってきた。以前からわかっていたのだが、初段に使っているFET(2SJ74)の音がどうしても気にくわない。おとは正確なのだが、冷たくて音が弾まない。ひとことで言えば面白くない。音楽ではなく、音を聞いている気持ちになってしまう。
残念ながらここでエージングを中断した。

そこでKT88ppに立ち戻る。ただでは戻らない。終段の固定バイアス電圧を与えている整流ダイオードをInfineonからGS65502Bに入れ替える。回路図の点線のまるで囲った部分がそれ。
実装風景はこのとおり。
まだ入れ替えてから24時間しかたっていないので、少々音が堅い。さすがに24時間通電は気が引けるの、ゆっくりと熟成するのを待つことにする。

ところでCirclotronだが、今のはもう使う気がしないので、初段を真空管に置き換えたバージョンに着手するしかなさそうだ。部品はほとんど用意してあるので、あとは重い腰を上げるだけ。

Circlotron vs KT88pp No-NFB2018年03月12日 22時29分36秒

水晶発振器の整流ダイオードにGaN素子を投入して以来、ずっとエージングを続けておよそ860時間経過した。今回は、700時間過ぎたあたりになっても音が「薄くなる」という現象があり、落ち着くまでだいぶ時間がかかった。

結果としては、当初に感じた印象のとおりなのだが、どうも心が晴れない。というのは、─これは以前にも経験したことだが─ 全体のレベルが上ってくると、ボトルネックとなっているところが浮き彫りになリ、今度はそこが気になってくるからである。

試聴には、CirclotronとKT88pp (Dynaco MK3大幅改造版)とを交互に取っ替え引っ替えして聴いてみた。取り替えた当初は、それぞれの良いところが聴こえて楽しくなる。KT88ppは音と音の間がびっしりと詰まっていて温度感が優れている。しかしずっと聴いていると、高い方の伸びが不足し、低い方は制動が不足してあいまいであるところが不満になってくる。

いっぽうのCirclotronは高い方はスーッと伸びて美しく、低い方の制動もよく効いているので曖昧さが少ない。躍動感も申し分ない。ところが初段にFETを使っているためであろう、音が冷静過ぎて面白くない。聴いているとやがてKT88ppに戻したくなる。

両方の良いところが一緒になれば申し分ないのだが、いまのところそれがかなわない。
そこで次の目標は、Circlotronの初段を真空管WE420Aに入れ替えて作り直すことである。シャーシはSA-20を使う予定。ただこれが鉄板なので加工に少々手間取ることが予想され、これが気が重い。できるだけ加工の手数を少なくするために、通称「まな板」の上に回路を組み、まな板をそのままシャーシに収納する方法を考えている。

Dynaco MK3の改造(25)三結・無帰還に変更2018年01月03日 21時35分49秒

みなさま、あけましておめでとうございます。

元旦は仕事が入り、我が家は昨日から3日間の休みをいただいている。この時期としては気温は高めで吹雪にもならず、まことに静かな正月である。近くの公園では小さな子供がソリ遊びをしている声が聞こえてきた。

さて、「年の初めのためしとて♪」の懐かしい歌にあるように、昨年からの課題に挑戦する。
ターゲットはDynaco MK3。改造当初はメリットに目が行ったが、時間が経つにつれデメリットが目立ってきた。音が前に出るのは良いのだが、どこか詰まっている印象がつきまとう。気になり始めるとどうにかしたくなるものだ。

それで結局、三結、無帰還になった。
改造は簡単で、片チャンネルなら30分もかからない。KT-88のスクリーングリッドは一般に100Ωから1KΩ程度の発振防止用の抵抗をシリーズで入れる。以前は510Ω抵抗を入れていた。今回は、省スペースの目的もあってちょうど手元にあったファインメットビーズを使ってみた。
回路図は以下の通り。

U1とU3のカソード抵抗270Ωはそのまま残してカソード同士をジャンパー線で接続する。こうすると初段は差動増幅となり、ゲインが増大する。測定したら仕上がりゲインは31dBとなった。ちょっと高めであるが、ゲインが高いと音も躍動感が増すように感じるのでこのままとする。

作りっぱなしではいけない。早速歪率を測定する。
周波数による歪率の差はわずかで、ほぼ揃っている。カーブは典型的な無帰還アンプそのものである。スピーカーシステムの能率が高いので5Wまで測定しておけば十分である。
シミュレーションと比べると実測値とおおよそ一致した。
ちなみに、このときに KT88のアイドリング電流は55mAに設定している。
周波数特性を測定したら、-3dBポイントは35KHzであった。

さて、出てきた音はどうか。
実にいい。何か今までつっかえていたものが取れ、のびのびしていて気持ちが良い。心まで晴れやかになってくる。やはりアンプは無帰還に限るのか。それとも、高帰還アンプで良い音に仕上げるためにはそれ相応のノウハウが必要だということだろうか。

ただ気になるのは、ダンピングファクターが小さいためなのか、低音がボンつく場合がないでもない。これを抑えようとすると、おそらく全体に活気が失われていく可能性がある。これは今後の課題だろう。