PICプログラミング四苦八苦2021年12月28日 17時52分22秒

KT88ppや300Bシングルアンプはひととおりかたちになった一方で、GaNシングルエンドアンプは何度か手直しが続き、落ち着くまで時間がかかった。なので記事にするのが遅れた。
そろそろ完成が見えてきたので、記事にまとめてみよう。

と言いながら、表題がPICとはこれいかに。

初期のGaNアンプは電源を入れル時も、落とすときも、ほとんどショック音はきこえなかった。しかし改修を加えるうちに、電源スイッチのON/OFFにともなって少々大きなショック音が出るようになった。そこでPICを使ってノイズが出ないよう、シークエンス処理をおこなうことにした。

そのPICであるが、最後に手を触れたのが調べてみると7年前で、それ以来一度も手にしていない。ほとんど忘れてしまった。まず開発環境をそろえるところから始まる。幸いPICkit3はまだ動きそうだ。書き込み治具だけは今回あつらえた。
次にMPLAB X IDEをダウンロード。使い方をほとんど忘れていたのと、MPLABの動作が不安定なところもあったために、動作を理解するまで4〜5日かかった。


今回ターゲットにしたPICは、12F629。こんな小さな身体に入出力ピンが6個もあり、おまけにコンパレータまで内蔵している。ありがたい時代である。

目標仕様
1) +B 100Vが起動したらフラグを立てる
2) WE420Aが安定するまで60秒間待機する
3) その後、アンプ部の鍵を解除して動作状態にする
4) +B 100Vがダウンしたらフラグを立てる
5) その後、アンプ部の鍵を閉めてアイドリング状態にする
6) 動作状況が目視確認できるように、状態に合わせて赤色と緑色のLEDを点灯、消灯、点滅をさせる


これらの仕様を実現するためにC言語でプログラムを書き始める。 最初につまずいたのが、ヘッダーとConfig。はて?なんだっけ。まずは、サンプルプログラムやデータシートを眺めて思い出す。これに数日かかる。

次にプログラムをさらさら書いてできあがり。。とは行かなかった。おそらく慣れた人なら1時間もあればデバッグ終了だろう。が、今回は1週間かかったorz  30年前はガンガンFORTRANを書いていたのに、だいぶさび付いてしまった。

デバッグはシミュレータでもある程度できるが、状態遷移を見るのなら実機上でおこなうのが一番わかりやすい。
実機とPICkit3を何度も往復しながら完成度を上げていく。思った通りに動いた時はうれしいものだ。

しかし物事にはトラブルはつきもの。今回もっとも手こずったのはコンパレータの出力のヒステリシス特性のために不安定になる瞬間があって、そのため思いがけない誤動作が起きること。このことはデータシートにちゃんと書いてある。

コンパレータは+B 100V電圧の監視のために使う。電圧の上昇、下降は比較的ゆっくりなので、ヒステリシス特性は無視できるだろうと当初は踏んでいた。ところが実機で確認すると頻繁に発生して、とても使い物にならない。

ネット上にスレッショルド電圧を複数設けてトラブルを逃れるテクニックも公開されている。また少し上のレベルのPICには、最初からヒステリシス対策が施されているものもある。

いろいろ試行錯誤した結果、結局コンパレータ割り込みフラグが立った直後にレジスタ CMIE を閉じて、割り込みフラグがヒステリシス特性で動かないように、10m秒の間delayを入れて不感状態にしたらあっけなく正常に動くようになった。
なお、10m秒の不感状態があっても、アンプ自体の動作はゆっくりなので問題はない。

PICが完成したので、次にアンプの改訂にとりかかる。

GaNシングルエンドアンプ +100V定電圧回路2021年12月28日 20時05分10秒

アンプ本体の話の前に定電圧基板について触れておく。
初段WE420Aのプレート電圧は電源のノイズに敏感で、リップルがあるとそのまま出力に出てくる。なのでどうしても定電圧回路が必要となる。ただ、消費電流が少ないので、無帰還型レギュレータで十分である。

初版時の姿はこのとおり。
ところが増幅部の改訂を重ねるうちに、WE427Aの定電圧放電管が立ち上がらなくなるというトラブルが発生した。
原因は単純であった。
当初、増幅部の消費電流は軽微であったのが回路変更によって数倍になった。ところが電源トランスの容量がそれほど大きくないため、定電圧回路の入力電圧が120V前後に低下した。ふつうなら問題にならない。ところがWE427Aは起動時に最低でも120V、安定に起動するためには130V以上の電圧が必要だったらしい。データシートには起動電流の規定があるけれど、起動電圧までは書いていない。文句を言っても始まらない。とにかく対策しなければならない。

いろいろあった末に回路は以下のようになった。
なお、回路図のP172Gはトランジスタ型となっているが、正確にはフォトMOSリレーである。シンボルを書き足すのが面倒なのでそのままにしている。
起動前はフォトMOSリレーはオフになっている。そこへ入力があるとGaNのゲートが接地されているので、出力はゼロのまま。この状態では増幅部に電流が流れないので、整流回路の出力電圧は+150Vに近い。WE427Aが起動するのには十分である。

WE427Aが起動すると、カソードに電流が流れてフォトMOSリレーがONになり、GaNのゲートと接続されて定電圧回路回路が起動する。
改修後の基板上面。
同じく裏面。
真ん中に白く見えるのがフォトMOSリレーである。 GaN素子は左上に見える。ほとんど発熱しないのでユニバーサル基板に直付けしても問題ない。

なお定電流回路に使ったMOS-FETについてひとこと触れておく。
最初はDN2540を使っていた。ところがWE427Aのアノードの波形をオシロで見ると予想以上にリップルが漏れてくる。WE427Aは動作抵抗が結構高いため、出力にもリップルが漏れてくる。その結果、アンプの出力ノイズが1mV程度という残念な結果になる。

それをLND150に変更したところ、リップルが激減。当然だが出力の出力ノイズも小さくなった.

回路図のDet端子について。
前回の記事に書いた電源起動シーケンサは、+B 100V電圧監視機能がある。それがこのDet端子である。ようはLED端子の電圧を見ているだけ。