PSVANE WE300Bを入手2023年11月26日 20時17分44秒

ある日、Gold Lion PX300Bのフィラメントが切れてしまった。
おもしろいことに、この真空管は二つのフィラメントが並列接続されていて、そのうちの片側が最初に切れた。ややゲインは低くなるもののそれでも音は出た。そのまま様子を見ていると、案の定であるがもう片方も切れて完全にアウト。
もう一本は無事に生きている。しかしこれではどうにもならない。
しかしそれにしても思ったよりも早く切れたことよ。まだまだ大丈夫と思っていたので、ちょっとがっかりした。

さてこれからどうするか。
PX300Bは値段相応で、本家本元に及ぶはずもない。同じものを買い直してもおもしろくない。
本家のWEは無理だとしても、できるだけそれに近いものが手に入ったらと妄想を始めた。

まず最初に候補に挙がったのが、以前から海外のブログで見かけているELROG ER300B。評判が高いけれど値段も高い。

次に候補に挙がったのは、現在生産されているもののなかでWE300Bに最も近いと言われるPSVANE WE300B。近いとは言っても、「絶対に本家には追いつけない」という注釈付き。
名前がかなり微妙で、メーカーは自信があったのかもしれないけれどWE○○と謳ったのはちょっと混乱のもとになりかねない。

能書きはそれまでにして、ぶつを手に入れなければなにごとも始まらない.

ということである日、我が家にやってきた。
早速アンプに挿して音出ししたいところだけれど、ひとつだけ改造しなければならない。わがアンプの整流部にはGaNダイオードが使われていて、スイッチオンとともに高圧がプレートにかかる。これは真空管の寿命に関わると言われていて、以前から気にはなっていた。これを機会にスロースターター機能を入れることにした。その回路の検討と部品集めに数週間かけ、やっと完成。PSVANE WE300Bに火が入った。
なおスロースターター機能部については別のコラムで報告する予定。

さて、音である。
エージング進むうちに「うーむ」とうなってしまった。噂のとおりで、PX300Bとは大違い。この音は確かに病みつきになる.
立体的な空間の描写の巧みさ、高い周波数域をうまく処理し、人間の感性に素直に寄り添う自然な響き。なによりも心にしみわたる音楽表現のすばらしさ。
世の人々がWE300Bの虜になる理由がよくわかる。

この音を半導体で出せるだろうか。だいぶ自信がなくなった。と同時に、この音を目指したいという意欲が湧いてくる。

C3g+300B SE 高負帰還アンプ8月18日版 測定篇2022年09月09日 21時53分21秒

8月18日に掲載した300Bアンプの測定した結果を挙げておく。

まずは歪率。
8月9日版に比べると変化の傾向がかなり異なり、10KHzの歪率が若干悪い。おそらく初段のスクリーングリッド電圧を調整することで、各周波数の歪率をもっとそろえることができるだろうが、今回はこのままとする。
0.1W以下の歪率が悪化するのはノイズのせいであろう。ちなみに200Hzのフィルターを入れるとノイズはかなり小さくなる。

続いて周波崇徳性。
位相補正のCの値を小さくしたことが効いて、高域が伸びている。

その後毎日火を入れているが、まったく安心して聴くことができる。これで我が家におけるパワーアンプの標準原器となった。

C3g+300B SE 高負帰還アンプ ほぼ完成2022年08月18日 20時31分33秒

その後、細かな修正を行った。
まずは回路図から。
いつものように回路図に記した番号にしたがって説明する。

①300Bのカソードにあったパスコン(30uF)を削除した。
出力トランスの一次側をプレートとカソードに接続した場合、これがなくてもほとんど影響は出ない。

②パラフィード手法においては、出力トランスの一次側を300Bに接続するときCを入れて必ずDCをカットする必要がある。そのとき、プレート側に入れるケースとカソード側に入れるケースの二つが考えられる。これまでは何も考えずにプレート側に入れていたが、ほかの先生の作例にはカソード側に入れているのもある。それではということで試しにカソード側に入れてみると、私の耳にはよい方向に変化したように聞こえる。これで決まり。

③高負帰還アンプを成功させる最後の鍵は位相補正にある。小さすぎれば音が暴れて品がなく、耳に突き刺さって頭が痛くなる。さりとて大きすぎると、全体のバランスが崩れ、どんよりして活気がなくなる。
これが適切な値に決まると、これが同じアンプかと思うほど躍動的になり、上も下も中もすべてのバランスが整い、アンプの存在を忘れてしまう。ここあたりはネットワークのバランス調整によく似ている。

このアンプの残された課題は初段のシールドで、残留雑音が若干高い原因となっている。であるが、実用上さして問題として感じられないのでこのままとする。

さて、こうして300Bアンプが完成したので、次はGaNアンプの構想に移る。

C3g+300B SE アンプ 高負帰還に戻す2022年08月09日 20時52分34秒

「やっぱり低負帰還だよね」と言った舌も乾かぬうちに、なんだか不満が出てきた。聞いていて、訴えてくるものがなにか足りない。高負帰還アンプが懐かしくなってきた。

しかし、そのまま高負帰還に戻すわけにはいかない。つきまとう抑圧感が課題となる。そこで思い起こしたのが、かのQUADⅡやマランツ7プリにも使われている正帰還手法である。

いろいろ試行錯誤した結果、次のような回路となった。
回路図にある番号の説明。

① 二段目のソースから初段のカソードに正帰還をかけている。
1.5MΩなのでごくわずかな量にすぎないが、それでも抑圧感を払拭するのに偉大な効果がある。
②出力トランスの一次側。これまでは一方をグランドに落としていたが、これを300Bのフィラメントに接続する。
これが予想外に効果を発した。音の姿がちがう。これを聞いて初めてこれまでの音の欠点が浮き彫りになる。
実を言うと、最初はただ接続を変更すれば終わりだろうと思ったら、見事にモーターボーディング(超低域発振)が起きて使えない。いろいろ手立てして、結局これが次の対策となった。
③NFB回路。これまでは出力トランスから直接戻していたのを、Cを挿入してDCを切るようにした。これでモーターボーディングはおさまった。
④高負帰還にするとどうしても位相補正が必要となる。音を聞きながらCの値を決める。

次に測定篇。
まず歪率。
7月11日の記事に掲載した歪率のグラフと比べると、かなり挙動が異なる。

次に周波数特性。
10Hz近傍の盛り上がりが気になる。もう少しフラットに近づけたい。これが残された課題か。

C3g+300B SE アンプ その後 測定篇2022年07月27日 19時13分07秒

低負帰還アンプに設計変更してから特性を測定してみた。 まずは左チャンネルの歪率
続いて右チャンネルの歪率
左右チャンネルを比較すると全体によくそろっているけれど、左チャンネルの雑音電圧が若干高いため、出力電圧が低い領域で特性が悪化している.

高いNFBをかけていたときは、各周波数で歪率がよくそろっていたのが、今回は10KHzだけ低くなっている。初段の動作点設定にもう少し改良の余地があるのかもしれない。

そして周波数特性
今回は10Hz近傍のピークを少し丹念に追ってみた。このあたりの挙動はシミュレーション結果とよく合致する。