Panasonic VP-7723A 故障とトラブルシューティング2023年01月14日 21時42分32秒

オーディオアナライザ VP-7723Aがまた故障した。電源スイッチを入れると、ご覧のとおりの状態になって全く反応しない。
前回修理したとき、同じような状態になったことがあったのだが、なぜか翌日になると何事もなかったように正常動作に復帰したので、結果オーライとしてそれ以上追求しなかった。結局そのつけが回ってきたわけで、いつまでも逃げるわけには行かなくなった。

ただ故障の原因箇所は絞られていて、フロントパネルのLEDや数値表示の状態から、CPUとフロントパネルとのやりとりするI/Oがあやしいと睨んだ。そこで最初に疑ったのがD71055GBの故障で、新しいものと交換してみた。その際、一カ所パターンを剥がしてしまい、ジャンパを飛ばす羽目になった。
おもむろに電源ON。症状変わらずorz
一気に暗雲が立ちこめる。

これは長丁場になるかもと、覚悟。思い返せば、突然不機嫌になるVP-7723Aにはしばしば泣かされてきた。そろそろいい加減におとなしくしてもらわなければ、こちらの根気が尽きそうになる。

と、ぶつぶつ言っていても始まらない。こちらには幸いにして回路図があるではないか。ネットで調べると、パターンの断線が原因で故障となったケースが報告されていた。

そこで面倒くさがらずに、I/O周りのパターンが切れていないかどうか、一本一本チェックすることに。当初はROM,DRAM周りから行ったが、そこは完全にシロ。ということで次はI/O周りのチェック。

そうしたら見つかった。D71055GBの2番ピンに導通がない。パターンを追っていくと、基板の表面と裏面を結ぶVIAが一カ所不通になっているではないか。見た目ではまったく異常が見られないにも関わらずである。回路図で言えばここ。
早速ジャンパー線で修理。
電源スイッチON
正常動作!
残留ノイズを測定すると3.9uVで仕様を満たしていることを確認。ボタン操作も異常なし。
これで今日から安心して寝られる。
教訓 VP-7723Aの基板パターンは弱く、断線しやすい(個人的な感想です)

VP-7723Aの電解コンを交換する2022年01月11日 22時38分26秒

以前から、VP-7723Aの電解コンデンサを交換したいと思っていたが、普段はなかなか手をつけられない。休暇中の間にやることにした。

と言っても、全部はさすがに難しい。今回は電源ユニットに限定した。
基板はゆったりとできていて、作業がやりやすい。2時間かからずに終了した。事前に回路図を印刷し、交換したものから印をつけて間違いがないように念を入れた。こういうとき、回路図があると実に安心である。
写真は交換後の基板。
はずした電解コンの様子。特に膨れていたり液漏れしたものはなかった。

続いて交換後の性能確認。まず内蔵発振器から。1KHz,3.16V入力時、 マニュアルに掲載されている「代表的な歪率特性グラフ」から0.0005%以下と読み取れる。交換前は仕0.0016%しか出なかったのが、交換後は本来の性能が発揮できるようになった。
続いて残留雑音。仕様では10μV以下だから、これもOK。
これで気持ちよく測定ができる。

VP-7723A 修理完了2021年12月08日 19時24分17秒

発注していた水晶発振子が届いた。
上がもともと使われていたもの。下が今回入手したもの。表面にある数字は従来品が16.000MHzとあるのに対し、新しいものは16.000000MHzとあるので、発振周波数誤差は±1Hz未満となり、まことにすばらしい。これがたった160円とは驚いた。
基板に半田付けした様子。電源を入れると最初はうまく発振しなかったが、数分後に何かの拍子に16MHzで発振し始め、それ以来安定している。おそらく発振回路が最適化されていないのかもしれない。本当はもっと追求すべきなのだろうが、今回はそのままとする
電源を入れて、内蔵OSCの発振波を測定してみるとそれなりの数値が表示される。ただ、校正はしていないので、そのことをわきまえながら使うことになる。なおマニュアルによれば、入力レベル3.16V, 発振周波数1KHzでは歪率0.001%以下の実力があるようだが、ご覧のとおり実力値はそれよりも少々悪い。電源周りの電解コンデンサが劣化しているせいなのかもしれない。
いずれにせよ、これで再び測定ができるようになったので、ひとまず肩の荷が下りた。

VP-7723A 故障解析その4 一応解決2021年11月28日 22時19分26秒

前回から続く。

<捜索 その4>
VP-7723Aの回路図は、ネットをいくら探索しても出てこない。手に入れるためには、お代を払わなければならない。日本の某オークションにはときどき出ることもあるのだが、さすがにあの値段では手が出ない。幸いにしてeBayにリーズナブルな値段で出品されているのを発見し、出品者と値段の交渉をして値引きしてもらい、購入に至った。ネット時代はすばらしく、それから数時間後に手元に回路図付きサービスマニュアルが届いた。

回路図を眺めてCPUから出ているアドレスバスとデータバスがどう流れ行くのかを確認。そうするとバスラインが外部端子に接続されるその直前にU29がある。
部品番号はuPD71055GB。デジタル回路に詳しい方なら、これを見てピンとくるのだろう(私は全くピンとこなかった)。このICはデータシートによれば、3つのI/Oポートを持つパラレルインターフェースと説明がある。

もしこれが故障したらどうなるか。正常なアドレス信号やデータ信号がフロントパネルの基板に行かなくなり、パネルの表示はフリーズしてしまうか、まったくでたらめの数値になるだろう。これがクロの可能性が出てきた。

最後の証拠をどうやってつかむか。急冷スプレーを吹きかけても、現象に変化はない。では、半田付けをし直してみたらどうか。これがその写真。
結果。
スイッチONしたら、パネル全面のLEDが点灯し、これまでなかったような異常な表示となった。スイッチを何度入れ直しても同じ。これには頭を抱えてしまった。ちょうど就寝時間が迫っていたときで、これ以上追求することができず、その夜はフトンへ。しかし、気になってすぐには寝付けない。

翌日、出勤前にダメ元でスイッチを入れてみた。驚いた。正常動作するではないか。数分後にフリーズするかと思ったら、いつまでもそんな気配がない。いったいなぜ??ともかく、これは喜ばなければならない。
気もそぞろに仕事から帰ってきて、スイッチを入れてみると、これも正常である。直ったらしい。しかし昨夜のあの異常はなぜ起きたのか。そこだけ未解決のまま、今回はこれでクローズとなった。

まとめると、今回の故障は二つが重なっていたことになる。
水晶発振子の故障とU29の半田付け不良(と思われる)。

なお、水晶発振子の周波数のことであるが、16.9344MHzのままでは測定器として使えない。具体的にいえば、周波数を1KHzに設定してもそれより低い数値が表示されるし、歪率の数値も正確ではない。周波数、歪率共に内部で発振周波数を参照しており、測定数値は16MHz水晶発振子の精度に依存するためだ。
早速、Mouserに誤差±10.00ppmのものを注文した。

VP-7723A 故障解析その32021年11月28日 21時43分35秒

前回から続く。

<捜索 その3>
こうなると捜査は全く前に進まない。精神的に最もつらい時期である。CPU周辺のロジックICは何度捜査してもシロとしか出ない。疑わしいコンデンサも新しいものに入れ替えた。CPU基板のC1,C3(ともに100μF)は、はずしてみると容量抜けしていたので、交換は正解だった。しかし、それでも現象は変わらず。

ここで手をこまねいているわけにはいかない。何かあてがあるわけではなかったが、とにかくCPUのピンにプローブを当てて波形を見ることにした。そうすると、データアドレス、バスアドレスはもちろん、ほかのピンもそれらしく、忙しく信号を出している。CPUはシロである。今回も空振り。

もしそこで終わっていたら、おそらく故障解析は頓挫してしまっていたかもしれない。このときある現象に目がとまったことが、あとから思えば大変な幸運だった。CPUの7pinの信号を観察していたとき、前面パネルのボタンを押すとLからHに変化するではないか。

データシートで調べると、pin7はRST7.5という入力信号を扱う。 (NECのuPD8085Aのデータシートから引用)
実際のピンは赤丸で囲った場所になる
これから何がわかるか。
・一時はフロントパネルの基板の不具合も疑ったのだが、パネルから正常な信号が来ているのだから、フロントパネル基板はシロと見てよい。これで捜査範囲が絞られたのだから、大きな進展である。
・CPUの入力信号は正常であるということは、不具合は出力信号線に関わる部分ということになる。

では、そこはどこなのか。捜査範囲をもっと絞るためには、どうしても詳細な回路がないと手も足も出ない。おそらくデジタル回路に詳しい方であれば、部品番号を見ただけでおおよその検討をつけられるだろうと思うのだが、残念ながらそこまでの知恵は私にはない。さて、どうするか。