VP-7723A 故障解析その22021年11月28日 21時32分50秒

前回から続く。

<捜索 その2>
あいにく手元には16MHzの水晶発振子はなかったが、16.9244MHzはあった。とりあえず、原因を特定する目的でこれに入れ替えたところ、うまく発振してくれた。

証拠にTP1での波形を記録しておく。1/2分周しているので、その通りの周波数となっている。

これで故障は直ったと確信したが、甘かったorz
さすが玄人泣かせの機械である。そう簡単には赦してくれない。現象は全く変わらなかった。

もっと不可解だったのは、発振回路がうまく動いていないのに、正常動作しているように見えていた時期があったことだ。水晶発振子を元して故障を再現するまでの気力がないので、ここはお蔵入りにして、先に進むことにした。

VP-7723A 故障解析その12021年11月28日 18時57分18秒

実を言えば、この4月にも同じような故障が起きていた。そのときはCPUを新しいものに入れ替えたところ症状がおさまったので、故障箇所は特定できたものと判断し、この件をクローズとしたつもりだった。

ところが今回また同じ現象が再発したということは、CPUが犯人ではなかったということになり、振り出しに戻った。では真犯人は誰なのか。

<故障状況>
そこで捜査開始に当たって、故障状況を説明する。
(1)一日以上放置してからスイッチONすると、正常に立ち上がる。
しかし数分経過すると、表示パネルが異常な数値を表示してそのままフリーズする。そのときすべてに押しボタン動作を受け付けない。
(2)上記の状態でスイッチOFFし、数分後に再度ONとすると、正常に立ち上がる。しかし、今度は30秒程度再びフリーズする。
(3)上記の状態で再びスイッチOFFし、数分後にONとすると、正常に立ち上がる場合もあるが、最初からフリーズしてしまう。
(4)以後、何度スイッチOFF/ONを繰り返しても、最初からフリーズして機能不全となる。
(5) 上記の状態で一日放置すると、(1)の状態に戻る。

この状況からの最初の推理は以下のとおり。
・正常に動作する場合があるのだから、パターンの断線の可能性は除外して良い。
・電源を入れてから時間が経過すると不具合が出るのだから、部品の自己発熱によって機能が不安定になっていることが疑われる。
・もしそうであれば急冷スプレーを吹きかけると現象に変化があるはずなのに、そうでないということは別の要因を考えなければならい。
・いずれにせよ、部品の劣化が関わっているのであれば、理屈に合わないと思われるような現象が起きることはあるかもしれない。


<捜索 その1>
まずはお決まりのコースで、CPU周辺にある部品の半田付けをやり直したり、急冷スプレーを吹きかけて何か変化があるかをたどってみたが、まったく何も出ない。
可能性は低いけれど、いちおうパターンの断線を疑ってみたが、何も発見できず。

ここで万事休す。手詰まり感がただよってきた。
それでも何か見落としているはずと、フトンに入っても考え続け、いつの間にか眠りに落ちるというような日を過ごす。

翌日ふと思いついたのが、もしかして発振回路が動いていないのではということ。早速、CPUの近傍にあるTP1の波形を確認する。
オシロの画面を見て目を疑った。発振はしている。ところが何度見ても、およそ50Hzと表示される。ここは8MHzが正常な値。あまりにもかけ離れた数字なので慌てたが、何度測っても50Hzである。
発振回路がうまく動いていないことがこれで判明。
Q1,Q2,Q3のB-E間電圧を測定したところ、これは正常と判明。そうすると最も疑わしいのは、水晶発振子ということになる。

VP-7723A再び故障2021年11月27日 22時01分49秒

ブログを読み返すと、VP-7723Aの修理が完了したのは、ちょうど4年前の今頃だった。何度も空振りしながら、真実に近づいていくスリリングな毎日、と言えば格好いいが、なんとか成功したから良いものの、もう二度と繰り返したくないと思ったものだ。
それから順調に動いてきたのに、KT88ppアンプを測定しようと思って久しぶりにスイッチを入れたら、またもや故障してしまった。

現象は写真で見ておわかりのとおり、表示パネルが異常な数値を示すというもので、スイッチボタンをまったく受け付けなくなる。

それから悩むことおよそ2週間。やっと昨日、無事に復帰させた。旧い機械なので再び故障する可能性はあるが、原因がかなり絞られたので、次回は速やかに対応できるだろう。

世の中には、VP-7723Aを某オークションで手に入れたけれど、同様の現象を目の前にして私のように悩んでいる諸氏が少なからずおられるのではないか。そんな悩める方々のために少しでも役立ちたいと思い、今回の故障をどう克服していったかを、数回に分けて掲載していきたい。

あらかじめ言っておきたいことは、この機種が壊れる場合、故障の原因は一つとは限らず、複数の要因が重なっていることが多いということ。なので故障解析は一筋縄ではいかず、予想以上に困難なもとなることを覚悟しなければならない。

当初、回路図なしで挑戦したが、結局白旗を揚げて降参。少し悩んだが、eBay経由で回路図を入手する決断をした。CPUがからむデジタル回路は数十年も昔にかじって以来大方忘れてしまったが、考え方はわかる。結局、回路図を手に入れたことが功を奏し、翌日には故障箇所特定に至った。

VP-7723Aが壊れる2021年04月03日 22時24分29秒

このようにGaNを使った単段アンプを研究していく上で欠かせないのが測定器で、なかでも素子の最適動作点を探すためにはひずみ率計は必須となる。
それで今回、押し入れにしまっておいたVP-7723Aを引っ張り出して、なんども測定を繰り返すうちに、その使いやすさと正確さに実に頼もしく感じていた。

と、思った矢先、突然フリーズしてしまった。そもそもこの機械、某オークションで「故障品」として購入したもの。それを苦労して修理し、生き返らせてやったものである。それがまた壊れてしまったか。
操作パネルの表示がこんなふうになってしまう。

すぐに原因を探る。前回は、電解コンデンサの液漏れでパターン破断と素子が数個壊れて、AD変換部分が不具合に至ったことが原因だった。

しかし不具合の現象から見て、原因は前回とは別のところにあると考えられる。
現象は以下の通り。
冷たい状態で電源を入れると数分間だけ正常動作する。
ところが数分すると、パネルの操作を受け付けなくなりフリーズする。
電源を切って、すぐに入れ直しても、フリーズしたまま。
30分程度間を置いてから電源をオンすると、数分間だけ正常動作する。

これから推測されることは。
ロジック部に故障箇所があって、それ以外は問題がない。
故障を引き起こす引き金は素子が発する熱にあるようだ。
では、ロジック部のどの素子が壊れているのか。最初は74HCのいずれかのICかと思って、急冷スプレーを吹きかけても何の変化もない。
あれこれやってもらちがあかない。ロジック部で最も熱を発するのはCPUである。故障しているのはCPUではないかとにらんだ。
ある人たちには懐かしいZ80をルーツとする、今見れば骨董品のCPUである。
さがしてみると、古い部品なのに在庫品を売っているところがある。おそらく私のように古い機械の修理のために必要としている人たちが、いくらかいるのだろう。

そういえば、CPUのすぐそばにある電解コンに急冷スプレーを吹き付けたら、煙を噴いて壊れてしまったことがあった。やっぱりCPUあたりが臭い。この推測が正しいかどうかは、代替のCPUが来たとき判明する。

2021年11月28日追記
この後、新しいCPUに交換したところ、不具合現象は再現せず、この件はクローズした。ところが11月になって、同じ現象が再び起こるようになったことから、結局故障の真の原因はCPUではなかったことが判明した。
詳細は、11月27日以降の記事を参照されたい。

Panasonic VP-7723A その7 修理完了2017年12月23日 21時43分01秒

74HC14が届いたので早速交換した。
写真は故障したものをはずした状態。念のために隠れているパターンを記録しておく。

これまで何度も裏切られてきたので、期待半分、諦め半分、なんとも複雑な思いをかかえながら電源を入れる。

結果。無事に測定値が表示されるようになった。内臓発振器の出力を直接入力して歪率を測定した様子が写真。仕様では80KHzのフィルターをかけた場合、 20〜15KHzの範囲で0.001%以下となている。実機では、フィルターを掛けない状態でも0.00077%となっていて仕様を満たしている。
ADコンバーターが壊れていなかったことは、不幸中の騒いであった。これが壊れていたら代替部品の入手は難しく、完全なお手上げになっていた。
ちょうどこの時期、よいクリスマスプレゼントになった。今夜はぐっすり寝られそうだ。
総括するとこうなる。
・手に入れたアナライザーはデジタル回路には大きな不具合がなかった。ネット情報を鵜呑みにしてSRAMを交換したが、よく考えればお粗末な対応だった。そもそも、オークション出品時の説明では「歪率以外の測定ができる」との説明だったのだから、その時点でデジタル回路は問題なしと判断すべきだった。

・故障していたのは以下の部品
NJM311
74HC138
74HC14
・パターン切れが一箇所
・経年変化で劣化していた部品
バックアップ電池
電解コンデンサも劣化していたようだが、前オーナーが全て交換してくれていた。
・故障はすべてアナログ<ー>デジタルの橋渡し部分に集中していた。

オーディオアナライザーの修理は初めての経験で、だいぶ手こずったが、終わってみるといろいろなことを学ぶことができた。
特にデジタルとアナログの共存回路で、精密測定機能をどのように実現するのか、設計屋の苦労が伝わってくるようで、おおいに興味をひいた。ポイントは、フォトカプラを使って徹底的にデジアナを分離すること。これはDAコンバーターの設計に大いに役立てることができる。

オークションでは、同種のアナライザーが大量に放出されていて、落札された方はおそらく同じような苦労を経験するはず。故障診断のポイントを幾つか。
7セグLEDになにも表示されない場合は、CPU周りの故障が疑われる。
歪率が測定できない症状は、NJM311の故障が疑われる。
200Vとか-200Vを表示する症状の場合は、74HC138もしくは74HC14の故障を疑う。
厄介なのは故障の原因が二つ以上ある場合で、古い機種ではしばしば経験する。あわてず騒がずじっくりと腰を据えて、細かな記録を残しながらあたるしかない。

この勢いに乗って、机の中にあった部品で先日作り上げたアンバランス->バランス変換アンプの歪率を測ってみた。0.03%もあってこのままではどうも具合が悪い。作り直しになりそうだ。