Audirvana 3.52019年10月17日 21時14分18秒

これまでAudirvana Plus(2.X)を使っていたのだが、ずっと以前からAudirvana(3.X)がリリースされていて気にはなっていた。コストをかけてまであえて乗り換える必要を感じていなかったので、そのままとしていた。

しかし、つい最近ストリーミング・サービスの試用を始めたところ、2.Xの使いづらさに閉口してしまったことをきっかけに、やっと重い腰を上げて3.Xを試してみることにした。ストリーミング・サービスの話はまたいつか別のところで話すことになるだろう。

周囲からは、3.XではDirect Modeが設定画面からなくなっているかのような噂が聞こえていたので、実を言えば音もかなり悪くなっているのではと疑っていた。

ところが試用版をダウンロードしてみて驚いた。Direct Modeの設定スイッチが健在なのだ。ただし、これは私の環境でのことであるかもしれない。ちなみにOSは10.14.1 Mojaveのままで、Direct Modeが活性化されるようMacのシステムの一部に手を入れた状態であることを断っておく。

音を比べてみた。
2.Xと3.X、やはり微妙に違う。2.Xを聴いた後で3.Xを聴くと、高音がややおとなしい印象。ただ解像度が落ちたとか、音が団子になったとかという印象はない。2.Xの方がやや高音を強調していて派手さがあると、比べてみて初めてわかった。どちらが良いかはほとんど好みの領域かもしれない。

使い勝手は3.Xは抜群に改善されていて、これでやっと大量のライブラリーを自由自在に検索して、自分の聴きたいものを手元に収集できるようになった。

音の違いについてはもう少し時間をかけて比べてみたい。

Circlotorn3 位相補償の検討2019年10月06日 21時58分15秒

あれからずっと試聴を重ねてきた。エージングが落ち着いてくると、最初はよいバランスだと思っていたのがどうも高音が耳につくようになってきた。長時間聴いていられない。

無帰還アンプでは問題にならないのだが、高帰還アンプでは位相補償については十分な配慮をしなければならない。今回問題はそこに原因があると睨んだ。
そこでまず帰還抵抗に120pFをパラってみた(微分型補償)。最初はこれで良いかと思ったのが、やはりよくない。まだ足りないようだ。

そこで330pFに変更。こんどはドンピシャリで、聴いていてこれまでの印象とずいぶん違い、落ち着いて聴き続けることができる。出過ぎていた高音のエネルギーにマスクされていたものが一挙に聞こえてくる様子で、心が躍り出す。

今回のことから、位相補償がうまくできるかどうかで、アンプの出来不出来が決まることが改めてわかる。どんなにすばらしい部品とすばらしい回路でも、位相補償が適正でないとすべてが台無しになる。高帰還アンプが嫌われるのには、意外にこんな理由があったのかもしれない。

最終の回路図は以下の通り。

8Ω負荷時の10KHz矩形波は以下の通りで、まったくリンギングもオーバーシュートもなく美しい。
高域カットオフ周波数は130KHzで、当たり前だがシミュレーションと完全に一致していた。
Circlotron3はこれにてフィクスとする。
次は、仕掛かり中のKT88ppに移る予定。

カスコード増幅回路を考察する2019年08月28日 10時50分17秒

休暇の最終日。普段なかなか手をつけられないでいた宿題を片付けておこう。

Tube CAD Journalに、2016年4月30日のの日付でカスコード増幅回路に関する非常に興味深い記事が掲載されている。まずは下の回路をご覧いただく。(出典 Tube CAD Journal)

左側は、真空管とトランジスタで構成されたカスコード増幅回路であることに異論はない。では右側の回路はどうか。このサイトの管理人であるJohn Broskie氏によれば、シミュレーションによってPSSR、出力インピーダンス、ひずみ率ともに全く同一で差がなかったと報告している。
しかしながら同氏は、出力される位相が180°違うことを根拠に、この二つの回路を同じ名称で呼ぶべきではなく、右側回路についてはRetrograde-Cascodeと呼ぶよう提案する。

どう呼ぶのかについてはいろいろ議論がありそうだが、右側もカスコード増幅回路の一種であることには間違いなさそうである。問題は、ではカスコード増幅回路の本質は何であって、右側回路はどのようにしてその本質が実現されているかである。

ある方が右側回路を見て、これはカソードフォロワーの変種ではないのかと述べたそうだが、それは誤りであろう。なぜならもしカソードフォロワーであるならカソード電圧は信号によって変化しなければならない。ところがこの回路ではPNPトランジスタによって固定されている。

実はそこにヒントがある。左側の回路を見るとプレート電圧はNPNトランジスタによって固定され、なおかつカソード電圧もコンデンサによって交流的に固定されいていると見なすことができる。すなわち、どのような信号が加わってもVp-k電圧が変動せず固定されている、これがカスコード増幅回路の定義であろう。

翻って右側回路を眺めてみると、プレート電圧は交流的に接地しているので固定されている。なおかつカソード電圧もPNPトランジスタによって固定されているので、立派にカスコード増幅回路の定義を満たしている。

John氏は1988年に次のようなアンプを作ったという。友人たちには散々なコメントもらったそうだが、今から見ると非常に先進的な回路である。(出典 Tube CAD Journal)
同様の回路を2015年頃に「単管ドライブアンプ」と称してK氏がMJ誌に発表しているが、あれは残念ながらオリジナルではなかった。
John氏は、NFBをかける際に出力電圧を注意深く反転入力側に戻し、カソード側にあるPNPトランジスタがカソード電圧を固定する役割に徹するようにしている(出力電圧を安定化させるためにサーボアンプの出力をベースに戻しているが、交流的にベースは接地されているとみなすことができる)。

このようなすばらしい開拓者に励まされて、KT88ppアンプの初段には右側回路を応用したカスコード増幅回路を採用した。
しかしそのままコピーというわけではない。まずは次のシミュレーション回路を見ていただく。
左側のCase1はカソード電圧を固定したカスコード増幅回路。この回路を維持しながらNFBをかけたいというところから検討が始まった。本来であればJohn氏のように反転入力側に出力を戻せば事足りる。しかしそうなるとどうしても入力インピーダンスが低くなり、汎用性が若干犠牲になる。

そこで考えついたのが、右側のCase3のようにPNPトラのベースにNFB電圧を戻す方法。しかしこうなるとPNPトラはもはやベース接地動作ではなくエミッタ接地動作とみなさなければならず、出力インピーダンスは低くなるとともに、ミラー効果も生まれるはず。そもそもこの回路は、6DJ8のカソード電圧が固定されていないのだから、カスコード増幅回路の定義を満たしていない。

「ものごとは二つと良いことはない。」これは心理学者であった河合隼雄氏の口癖であったようだが、今回もまさにそのとおりで、どこかで妥協点を求めることになる。
一つは、Case3のままでも得られるメリットが大きければよしとする案。もう一つは、Case3で生じた出力インピーダンスの低下を防ぐためにPNPトラに対してカスコード増幅回路を設ける案。それが真ん中のCase2である。

シミュレーションしてみると意外なことにCase3ががんんばっていて、歪み率だけ見ればCase3が優位にある。ただしカットオフ周波数はCase2にはかなわない。そこはきちんとカスコード増幅回路の効果が出ている。

この結果をどう評価するか。
部品点数の増加を抑えるならCase3を選択すべきだろう。ただし、KT88ppアンプはバランスタイプなので、ホット信号とコールド信号の対称性を問題にしなければならない。そうするとCase3のQ4トランジスタのマッチングが必須となる。表面実装部品ではかなり面倒な作業となる。

ところが、Case2ではQ2にかかる電圧を小さくできるので小信号トラが使える。回路図ではZTX560となっているが、ここはスルーホールの2N4403を使う。すでにマッチングしたものが引き出しの中にあるという理由と、もうひとつ、かつてMark LevinsonのJC-1DCに2N4403が使われていたとの理由からこれを採用した。もちろん製造プロセスは、エピタキシャル・プレーナである。

ちなみに、各回路の周波数特性は以下の通りとなる。
Case2において明らかにカスコード増幅回路の効果が認められ、Case1にNFBを施したときに得られる周波数特性に近似する。

結論。
KT88ppアンプの初段は、6DJ8から見れば純粋なカスコード増幅回路ではない。しかしCase2のQ2をカスコード増幅回路で構成することにより、Case1とほぼ同等の周波数特性を得ることができる。

KT88pp 回路図(暫定版)2019年08月27日 14時08分15秒

Dynaco Mk3のシャーシとトランス類を使ってKT88ppを作っていく。出力段はウルトラリニアをするが、それ以外の回路はすべて手を加えたオリジナルである。
回路図を見ておわかりの通り、初段と出力段が直結であるところに大きな特徴がある。

まずはアンプ部。
回路説明はまた別のコラムで行う。
次に定電圧回路。
プラマイで計4つの出力を出す。初段と出力段が直結なので、電圧変動がアイドリング電流に与える影響が大きい。そのためこのような措置が必要となる。
最後に電源関係。
コンデンサ類はすべてフィルム系を使い、電解コンデンサは使用しない。

Circlotron3 見えてきた次なる課題2019年08月27日 12時55分15秒

終段に用いているGaN素子(GS66502B)のG-S間抵抗をVARに交換してすばらしい音が出ることを確認。その後、エージング期間に入り、感動の薄い音になってしまった。いつものことなので、ここはひらすら忍耐。ここにきてやっと本来の音に戻りつつある。

さて良いことずくめに見えているCirclotron3であるが、実は憂鬱な事実が発覚した。
ほぼフィクス状態になったのでPanasonicのオーディオアナライザVP-7723Aを使ってひずみ率の測定をしたのだが、いささかがっかりするような結果になった。

THD+N(%)
出力 100Hz 1KHz 10KHz
0.45W 0.270 0.168 0.206
1.4W 0.505 0.365 0.424
4.5W 1.14 1.02 1.06

いずれの数値もシミュレーションに比べて3〜4倍程度悪い。
その原因についてはいくつか考えられる。
その一つは電源から侵入するノイズ。測定はEMIフィルタを入れる前に行っていた。
そしてもう一つの原因。
これは予想していなかったわけではない。シミュレーションは、同じ品番であればすべて特性が一致していることを前提に計算を行う。しかし現実には、すべての素子にはばらつきがあり特性が一致することなどあり得ない。この特性の不一致がCirclotron3で特に影響を与えるのがカレントミラー部であることはわかっていた。本来ならば素子を選別しなければならない箇所である。しかし今回はそれを省略。表面実装部品を使ったこともあって、選別が非常に面倒であったことが理由。とにかく動くことを優先した。

積極的な見方をするなら、無選別でもよくぞここまで素晴らしい音が出るものだと言えなくもない。とはいえ、このままではCirclotronが持っている本来の実力を出し切っていないのは明らか。そこで次なるステップに進むことになる。

対策。面倒なカレントミラー回路を使わずに、もっとシンプルな形でWE420AとGS66502Bを結合できればこの問題は解決する。それが可能かどうか、まずはKT88ppアンプで実証する予定である。