新年の風景 昨年を振り返りながら2022年01月03日 13時24分51秒

2021年のラストランは12月16日となった。その日、少し早めに職場から帰ってきたがすでに暮色は濃く、幹線道路を走ることは難しい。町内を二周ばかりしてからローラーに乗った。

翌日、朝から大雪となり風景は一変。
それから断続的に降雪が続き、記録的な積雪量になった。
今日も朝から降り続き、妻と玄関の除雪に励む。庭に積み上げた雪。
今日から一年の一度の長期休暇に入る。いつもなら11月頃に取るのだが、諸般の事情により今となった。

ちょっと遅くなったが、昨年一年を振り返る。
[自転車篇]
まずは自転車のことから。
昨年のトピックスはなんといってもシングルスピードバイクを作ったことだろう。
変速機能がないということは、ある意味で新鮮な驚きだった。下りはスピードについていくために一生懸命ケイデンスを上げ、登りは「続可能性」を重視してゆっくりと回す。速さを競うのではなく、限られた条件なかでどのように走ればよいのかをいつも考える。

ところでこのフレーム、Alibabaに出品されいているものの中で最も安い価格のを選んだだけあった。つまり値段相応ということ。カーボンの軽さは享受できる。しかしどこか楽しさというものが薄い。それに比べれば、以前に使っていたFOIL号は作りは雑ではあったけれど、自転車を繰る楽しさは備えていた。
フレーム選びは奥が深い。

こんなふうにシングルスピードバイクとLOOK595に交互にまたがって、8月まではガンガン走っていた。ところが途中から急にペースダウンして後半はほとんど乗ることができなかった。おそらく年齢的なものからくる体調の変化があったのだろう。

その一方で、前から気になっていたことに挑戦ができた。自転車にばかり乗っていると歩くのが苦手になってしまう。走ろうとしても足が前にでなくなってしまったのを知ったときは、ちょっとショックだった。これはいけない。まずは長距離を歩くことから始めた。
自宅から職場までおよそ8Kmある。歩き始めは身体が慣れないのでつらい。それが回数を重ねるうちにだんだん楽になっていく。

9月に入ると自宅から平和の滝まで往復してみた。距離にして16Kmほど。歩きと走りを交互に繰り返すうちに、往路をほとんど走ることができたときはうれしかった。ほとんどが緩やかな登りなのでなおさらである。

楽しくなるとだんだんとからだに負荷がかかる走り方になる。10月中旬、走っている途中で右足のアキレス腱に激しい痛みを感じて中断。足を引きずって歩かなければならない始末。やっと最近痛みが引いてきた。その間、右足をかばう姿勢をとっていたので、あきらかに右足が弱くなってしまった.

こうやって振り返ると、自転車で走るのも楽しいが、それだけではからだとしてかなり偏った使い方になっていたのかもしれない。今年は自転車とジョギングの両方をバランスよくやりたいものだ。

[オーディオ篇]
続いてオーディオ篇。
こちらは多作だったと言ってよいだろうか。
念願の300Bシングルに挑戦したこと。もちろんWE300Bという訳にはいかないので、先人の先生方から見れば高峰の麓にやっと足を踏み入れたアマチュアに過ぎない。とは言っても、初めて垣間見た真空管シングルアンプの世界は新鮮で、GaNアンプ開発におおいに刺激を与えてくれた。
回路はGaNシングルアンプからヒントをもらった。ここだけは少し自分なりのオリジナル性を出せたかもしれない。
その次はKT88 UL ppを作り替えたこと。これも300Bの成功に気をよくして、GaNシングルアンプからヒントをもらった。
今は二階のサブシステムにおさまり、最近古典に興味を示している妻が源氏物語や紫式部日記の朗読に耳を傾けている。KT88ppをこんな風に使うのは最高の贅沢だと思うのだが、残念ながら当の本人は気がついていない。

さて最後はGaNシングルアンプ。最初は本当に単純なGaN一石からスタートした。ドレイン負荷がなんと空芯コイル。これでちゃんと音がでるのだから痛快。
空芯コイルを手巻きしたけれど、自作の限界を感じて、メーカー製を購入した。
写真にはそのコイルが載っている。
その後、トランス入力版、カスコード増幅版、ソースフォロワ版を経て、現在はWE420Aを初段に使う二段増幅に発展している。なのでシングルアンプとは言えず、これからはGaNシングルエンドアンプと改称する。
詳しいことはこれから徐々に掲載する予定。

PIC開発 なんとか完成2022年01月03日 14時49分36秒

前回からのPIC開発余話。
その後、いろいろ詰めていったら、これまでの考え方では電源ON/OFF時のショックノイズを避けられないことが判明。
そこで仕様を変更することにした。変更点は大きく二つある。

変更点1
開発用に載せていたまな板の仮住まいから、現在はCounterpoint SA-20の筐体のなかにGaNアンプを収めている。主電源スイッチを前面パネルに元々ついているものは使わず、裏側のパネルに取り付けたサーキットブレーカーを使うようにしている。
今回、前面パネルのスイッチをスタンバイスイッチとして使うことにした。

変更点2
これまでアンプ部の動作開始/停止を信号経路の途中に設けたフォトリレーで強制的にアースに落とすか開放するかで行うことにしていた。それを終段の電源の開閉で行うことにした。GaN素子を本来の用途であるスイッチングとして使う。この制御にPIV素子を使う。

そのためPICの仕様は次のようになった。

目標仕様

1) +B 100Vが起動したらフラグを立てる
2) WE420Aが安定するまで60秒間待機する
3) スタンバイスイッチがONとなったとき、終段電源を活性化してアンプを動作状態にする
4) +B 100Vがダウンしたらフラグを立てる
5) スタンバイスイッチがOFFになったら、終段電源を休止してアンプをアイドリング状態にする
6) 動作状況が目視確認できるように、状態に合わせて赤色と緑色のLEDを点灯、消灯、点滅をさせる

スタンバイスイッチの状態を監視することが付け加えられただけで、プログラムはかなり複雑になる。うまく動くなるようになるまで時間がかかるだろうと覚悟したが、状態遷移図を書いて各フラグの分類分けをして整理したら、おもいがけなく短時間で完成となった。

こういう場合、予想していないイレギュラー・ケースにはまって異常動作が出現することがある。いまのところ、評価基板でいろいろ「いじめている」がうまく動いている。
いよいよこれから実機の制御基板の作成に取りかかる。

PICプログラム開発 二転三転そして完成2022年01月08日 20時53分06秒

あれからまたPICの仕様を変更した。その理由はまた別の欄で記す。

+100V電圧監視を止めたのでPICのコンパレータは使わなくなり、動作としては単純になった。なのでそれほど時間もかけずに完成するだろうと踏んでいた。ところが、思わぬところに仕掛けられていた地雷を踏んでしまい、大いに手間取ってしまった。

コンパレータを使わないのだから、当然それに関係するレジスタ処理を書き込む必要がないと思い、プログラムから削除した。PICのピンアサインは次の通りである。

GP0  +100V電源起動用コントロール(出力)
GP1 NC
GP2 +28V電源起動用コントロール(出力)
GP3 スタンバイスイッチ(入力)
GP4 モニター赤色LED(出力)
GP5 モニター緑色LED(出力)

PICにプログラムを書き込んでおもむろに評価基板で動作確認をする。そうすると、ほかはきちんと動いているのに、GP0にだけなにをしても信号が現れず、頭を抱えてしまった

それらしいと思われところを次々とコメントアウトして、とうとうLEDをただ光らせるような非常に単純なプログラムにしたら、やっとGP0に信号が出た。が、そこへ少しでもちょっと処理を書き込んだだけで沈黙してしまい、うんともすんとも言わない。
この原因を探るのに一日費やしてしまった。

これに関することはデータシートには書いていない(と思う)。こういうとき、ネットはすばらしい。検索したらちゃんと書いてくれている方がいた。対策はたった一行
CMCON = 0x07
を書き込むだけ。CMCONはコンパレータに関するレジスタ。使わないのにこれを書かないと異常動作するとは!

原因がわからず迷路にはまり込んだときは、MPLAB X IDEのバグではと疑ったことも。犯人がわかったときは拍子抜けしてしまった。

原因がわかればあとは早い。昨夜、プログラムが完成し、実機に入れ込んだ。状態が遷移するに従って二色のLEDがチカチカ光る様子は、見ていてなかなかおもしろい。

写真の絵は手書きの状態遷移図で、これを見ながらプログラムを書いた。

PICの仕様を変更した理由2022年01月08日 21時35分57秒

ところでなぜPICの仕様を変更したのか。
いや、その前にそもそもPICを使う理由は何かから始めよう。

GaN アンプの電源起動/停止に伴って、何も対策しなければかなり耳障りなショック音が出る。これをなくす、もしくは低減させるために、初段(+102V)と終段(+28V)の電源の起動、停止に時間差を設ける必要がある。アナログ的に対策できるならそれで済ましたかった。私の頭ではどうしても思いつかない。それでPICの登場となった。

ではPICを使ってどのように電源の起動/停止をさせるのか。
+102V電源については2021年12月28日の記事で触れている。TLP172Gを使って、WE427Aの起動する同期して+102Vが起動するようにしている。それは問題ない。

では+28V電源についてはどうするか。
当初考えていた回路図を見ていただく。
回路図を見ると、PIC12F629の右にPVI1050Nがある。これはフォトボルタイック素子とも言われて、1から4ピンにつながっているLEDに電流を流すと5から8ピンに電圧が現れる。主にMOS-FETの制御に使われる。

このフォトボルタイック素子でGS61004Bを制御するというのが当初のもくろみ。そこでPICのプログラムをせっせと書いた。ところが、動作させてみたらうまく動かない。

理由は何か。
フォトボルタイック素子はどのメーカー品であっても、出力電流はせいぜい10μAである。その代わり、オープン出力電圧は8Vにも達する。普通のMOS-FETなら十分に駆動できる電圧である。

もちろんGaNトランジスタも動かせるだろうと思い込んでいた。しかし動かない。直列接続しても電圧が上がらず、うまくいかない。ここでやっとGS61004Bのデータシートを見返す。
ちゃんと書いてある。VGS=6V, VDS=0Vのとき、すなわちスイッチング素子として使う場合、Gate-to-Source Current は100μA。フォトボルタイック素子の10倍の電流を食おうというのだから、動かないのは当然。設計段階でこんなことも見抜けなかったとは、ああ恥ずかしい。
あとの戒めのために失敗した基板を掲載する。PICの上に二個のPVI1050Nが見える
裏面にはGaN素子がL用とR用、二個載っている。

ということで設計は振り出しに戻った。
結局、+102Vから電源を借りてきて、GaNトランジスタを駆動することにしたらうまく動作した。このことはまた次の欄で。

GaN Transistor SE Amp 増幅部の解説2022年01月09日 09時18分22秒

ということでいろいろ難航していたアンプがやっと完成した。難航したのは電源制御に関わる部分で、アンプ本体ではなかったことは、これまで書いたとおり。
まずは増幅部の回路から。
全体は、WE420Aによる初段とGaN Transistorによる終段によって構成される。
初段はWE420Aの差動として、バランス信号を受け取る。プレートはTSA1765によるフォールデッドカスコードで、その出力はBCM61Bでカレントミラー合成されて終段に渡される。

初段から終段へは直結とした。
実を言うと最初にこの回路を作ったとき、ここはC結合にしていた。そうしたほうが初段と終段がDC的に分離されて、非常に設計しやすいからでもあったし、それだけ聴いていれば不満を感ずることなく済ませていただろう。
ところが実験的にCをはずして直結してみたら、解放されたかのような音が出てきたので非常に驚いた。これは直結するしかないと即断。

このような違いが起きたのは、初段がCをドライブし切れていないからだろうと推測している。シミュレーションによれば、周波数が低くなると劇的に歪率が悪化し、波形が崩れるのが見て取れる。

Cをとるのはそう簡単ではなかった。直結すると、終段のアイドリング電流が初段と終段の両方の影響を受け、シーソーのような関係になる。そのところで少々苦労したが、なんとか妥協点を見つけることができた。
問題は、電源の起動/停止に伴うショック音が出てしまうこと。C結合していたときはほとんど出ていなかった。
その対策のために、PICやらフォトボルライック素子まで動員しようとしてあたふたしたことは既報の通り。

増幅部の説明に話を戻す。
終段の構成は、すでに実験で確認が済んでいるように、ソースフォロワでGaN Transistor(GS61004B)を駆動する。この構成がベスト。
終段のドレインは100mHのインダクタで受け、Cを経由して出力される。

いまどき、パワーアンプ出力にCがあるのは時代遅れと思う方もおられるだろうか。1970年代にはなばなしく登場したDCアンプブームで、コンデンサ、その中でも特に電解コンデンサは諸悪の根源であるかのように言われ、AC出力アンプは低レベルというイメージが定着してしまった。私もその風潮に乗ってアンプ作りに励んできた一人である。

しかし、今一度原点に戻って冷静に考えてみれば、半導体アンプであれば電源部には必ず電解コンデンサを使う必要があり、その電源は増幅部と一体となって動作するわけで、信号は増幅部→スピーカー→電源を経由する 。もちろん出力に電解コンデンサがないのが望ましいとの意見は尊重するが、全体のバランスををみながら設計することも大切ではなかろうか。
ということで、出力に電解コンデンサを使う。ただし、そのままでは高域が伸びないのでフィルムコンをパラ接続する。

NFB抵抗は点線の楕円で囲ったR15(47KΩ)で、初段と終段の結合部分に戻す。
見ておわかりのとおり、初段から高インピーダンスで出力された信号を、終段が反転アンプで受ける構成。この結果があまりにも素晴らしく、KT88ppアンプや300Bアンプにも迷いなく導入を決めた。

終段のアイドリングはおよそ800mAとし、その調整はQ4のエミッターにある500Ω半固定抵抗で行う。ただ500Ωではかなりクリティカルになり、100Ωの固定抵抗と100Ωの半固定抵抗の組み合わせにしたほうがよい。500Ωとしたのは手持ちにそれしかなかっただけのことで、あとで修正の予定。
最後に現在のアンプの様子。まだ整理していないので、接触防止のために入れた手袋まで写っているのはご容赦。