13D2ラインアンプ ヒーター点火回路の考察その12016年08月14日 16時47分57秒

 真空管のヒーター点火方法についてはいろいろ議論があって、大きくは交流点火と直流点火に分けられ、その直流点火はさらに定電圧点火と定電流点火の二つに分けられる。

 どれがすぐれているのかは私が決めることではないが、こだわりは定電流点火である。

 この方法の唯一の欠点はエネルギーロスが多く、そのロスが発熱となって無駄に消費されるところにある。その量はヒーターの電流値に比例し、計算式で表すとおおよそ以下のようになる。

    (入力電圧ー出力電圧)×ヒーター電流

 今回、infineonのダイオードを投入するにあたり、涙を飲んでWE412Aに降りて頂いたことは既報の通り。その代わりに13D2のヒーター点火回路に十分な電圧をかけられるようになった。

 13D2は2本使用している。この場合、ヒーターを直列接続すれば、定電流回路は一個で済むから、その分、熱の排出が抑えられる。従来、この方式としていた。ただ問題は、真空管によってヒーターとカソード間の電圧に違いが生じてしまうことで、気持ちが良くない(北海道弁で、「あずましくない」と表現する)。

 これとは別にヒーターについてもう一つの課題を考えていた。以前、 CounterpointのSA-20を改造していた時のこと。もともとパイ型のCRフィルタをとおして直流点火していた。そのRを取り払い、代わりにチョークトランスを入れると音が充実することを知った。あのことが忘れられない。

 いまSA-20は押入れの中で眠っている。そこからチョークトランスを取り出し、ラインアンプに入れてみたい。できるならチョークインプット型平滑回路を目指したいのだが、このトランスはチョークインプットを想定していないので、あまり無理も出来ない。

 いっぽう、電源トランスかた出ている端子は6.3V×2と8V。これらのもろもろの条件を検討した結果、掲載の回路となった。

 チョークの入力側には10uF(BG)を接続。やってみると、トランスはうなることなく、問題がなさそう。ただ回路図のノード番号100の電圧は実測で17.5Vとなり、定電流回路1台分でおよそ6.6Wの熱を消費する。2台あるから、発熱は相当のものとなる。これが悩ましいところで、今後の課題とする。

13D2ラインアンプ ヒーター点火回路の考察その22016年08月14日 17時28分17秒

 チョークトランスを限られた空間の中にどのように入れ込むか、けっこう頭を悩ました。あらたにネジ穴を開けるとなると、大型部品をはずさなくてはならず、これでは作業がおおがかりになる。

 手間をかけずにスマートに実装したい。本音を言えば、手抜きをしたい。そこで、写真のようにユニバーサル基板の真ん中をくりぬいて、トランスを寝かせることにした。トランスはスズメッキ線でまるでガリーバーのようにぐるぐる縛り上げているだけ。シャーシーには基板をとめるネジ穴はすでにあいているので改造の手間はかからない。

 なお、写真に見える赤色と青色のリード線は、某オークションで入手したWestern Electric 絹巻二重被覆エナメル線21AWG。今回初めて手にしたのだが、その手の込んでいる作りには感心した。見ているだけですばらしい音が出てきそうな気になる。

 この他にも、定電流回路と真空管ソケットまでの配線をこの線に入れ替えた。チョークトランスから22000uFの電解コンデンサ、およびこのコンデンサから定電流回路までの配線については、WE線に見合う圧着端子が手元になかったため、そのままとした。
 そのうち、アンプの全配線をWestern Electricに入れ替えたいと目論んでいる。

13D2ラインアンプ ヒーター点火回路の考察その32016年08月14日 17時43分17秒

 改造を加えたのが8月11日なのでまだエージングの真っ最中。これだけは24時間通電とはいかず、かなり時間がかかるものと予想。いつものことだが、低音はすっぱり切れ落ち、高いところに妙な癖が聞こえる。

 とは言え、すでにその大器の片鱗は見せつつある。体がびりびりしびれるのではないかと思うほどの音圧で音が前にせり出してくる。

 この音を聞いて、蒸気機関車を連想してしまった。SLは言うまでもなく、石炭を燃やした熱で水を沸騰させ、爆発的に体積が膨張する時のエネルギーを動力に変換させて動くものである。真空管のヒーターの働きは釜で燃やされる石炭と同じではないか。

 石炭をいかに効率良く燃やすか。SLの機関手は石炭を釜に放り込むタイミングや石炭を釜のどの場所に置けば良いかまでいろいろ考えていたのだそうだ。

 石炭の燃える力で坂道を登っていくSLを想像しながら、ヒーターも同じようにうまく点火させるなら、真空管は持てる能力を存分に発揮するのではないか。真夏の夜に汗を流しながらそんなことをふと考えている。