300Bシングルエンド 電源部の解説2022年01月24日 18時58分14秒

新しい電源部の仕様は次の通り。
(1)電源トランスはDynaco Mk3のものを流用
(2)整流管は前述の通り、PSVANE 274Bとする
(3)300Bのフィラメントを定電流点火とする

回路図は以下のとおり。
例によって、「まな板」を切り出してシャーシとする。写真は制作途中の様子。

以下、フィラメント定電流回路についてのコメント。
・フィラメント電源の整流には、ほんとうはGaNダイオードを使いたかったのだが手持ちがなく、今回はInfineonの第6世代SiCダイオードにした。

・それから、これまで定電流回路はバイポーラトランジスタのVbe電圧を利用していたのだが、これを止めて、石塚峻氏が提唱しているようにTL431を使った。フィラメントへのリップルはノイズに埋もれて観測できないほど小さくなった。

・当初、ごく一般的なπ型フィルタでやってみたところ、GS66502Bの発熱が大きく、放熱板の温度が軽く100℃を超えてしまった。トランスの電圧を下げることができないため、チョーク入力型フィルタにしたところ、実用レベルに落ち着いた。

写真は定電流回路周辺の様子

できあがった電源部を8pinプラグで増幅部に接続し、動作試験をする。今回は大きなトラブルも起きなくほっとする。
写真はカレントミラー合成部の電圧を300Vに調整している様子。

300B シングルエンド 整流管2022年01月24日 17時14分20秒

なんでも初めてのことをするときは、いきなり本番というわけには行かない。プロトタイプを何台か作ってバグだしをしながら徐々に完成度を上げていく。そうやって初めて完成に至る。
そういうわけで電源部は、KT88ppから借用して間に合わせていた。完成度も上がってきたので、そろそろ専用電源を作ることにした。

電源トランスはDynaco Mk3のものを某オークションから入手。問題は整流管である。調べてみると、WE274A/Bこそが本命ということで一致している。しかし、いまや絶滅危惧種の筆頭であり、美術品扱いで価格は高騰。とても素人が手を出せるようなものではない。

そんなときPSVANEは、中国、香港、台湾、アメリカの四カ所の技術者を総動員して1年半をかけてWEのレプリカを開発し、その名もWE274Bを世に出した。世評は高く、値段も高い。

PSVANE WE274Bは将来の夢ということにして、今回はPSVANE 274B(クラシックシリーズ)で我慢することにした。
(写真は、同社のホームページから)

さて、整流管が届いたところで、おもむろに電源部の製作に着手する。その顛末はまた別の記事で。

300Bシングルアンプ 測定篇2021年12月08日 20時03分17秒

2021年11月1日に載せた回路図でどのような性能になったか。VP-7723Aが復活したので、早速測定してみた。
まずは歪率特性から。
歪率特性は、各周波数の差が少なく、変化も癖がなく素直で好ましい。実はこれを見るまで、今回の設計がうまくいったかどうか確信をもてないでいたのだが、これで一安心した。
残留雑音については、AC点火でハムバランサなしという厳しい条件のなかでよく健闘していると思う。

続いて周波数特性。
10~20Hz付近に盛り上がりが見られるのは、終段のパラフィード(クラーフ結合)のCとLによるもので、予想の範囲。
むしろ注目すべきのは、低域の-3dBポイントが5Hz付近にあること。出力トランス(ST-171A-M)の仕様では20Hzとあるから、よい方向に拡大している。おそらく終段のP-G帰還によって内部抵抗が低くなったためだろう。

気になるのは高域で、-3dBポイントが16KHzである。出力トランスの仕様では20KHz付近となっているので、高域の減衰が若干早い。音を聴く限り、ナローにはまったく感じられないので、これはこれでよしとする。300Bのグリッド抵抗(200KΩ)が影響しているかもしれない。

300Bシングルアンプ 回路図篇2021年11月01日 16時41分47秒

なにはともあれ回路図である。まず増幅部から。
続いて電源部。前回も記したとおり、B電源はDynaco MK3を流用し、300Bのフィラメント用には電源トランスを増設して対応した。
この回路の特徴は次の通り。

(1)300Bは自己バイアス動作とした。300Bのカソード抵抗は1KΩとし、WEの板抵抗を使った。
(2)300Bはパラフィード(クラーフ結合)とし、出力トランスには直流電流を流していない。
(3)初段は6DJ8/E88CCを起用し、バランス入力対応とした。
(4)初段はカスコード接続とし、高インピーダンスで出力させる。
(5)平衡→不平衡変換には、カレントミラー合成を使う。
(6)終段にはP-G帰還(帰還抵抗200KΩ)をかけて、高インピーダンスで出力される初段の信号を受け取る。

このアイデアはGaN単段アンプを構想していたときに考えついたもので、素晴らしい発見だと自画自賛していたが、調べてみるとすでにラジオ技術2002年3月号で金指長生氏が「高利得2A3ppアンプの製作」で発表されていた。氏はその後も同誌2014年6月号で「KT-66ppアンプの試作」を発表されている。

5年前、散々300Bアンプの構想をこねくり回していたとき、固定バイスでなければとか、いろいろこだわっていたが、結局アイデア倒れで終わった。できあがってみると実にシンプルで美しい(と思う)。出てきた音も期待以上である。今日から二階のサブシスムテムで活躍することになった。

なにごとも一発で完成することはない。試作段階で遭遇したトラブルなどは、またこの後で報告する。

300Bシングルアンプの製作2021年11月01日 15時30分21秒

前回の記事を書いてからしばらく空白ができてしまった。
今なら新型コロナに感染したのかと思われてもおかしくないが、そういうことはなく、8月に30℃越えの日が3週間も続いたのがきっかけで、その後なんとなく書く気力が起きず、ずるずると時が過ぎ、とうとう秋も終わりかけである。

この間、何もしなかったわけではなく、オーディオ関係ではいくつか進展があった。大きくは二つあって、一つは前回から続いているGaN単段アンプの続き。もう一つは、5年越しの念願であった300Bシングルアンプが完成したこと。
今回は、300Bシングルアンプを紹介してみよう。まずはできあがった姿から。
シャーシは合板を切り出したブレッド・ボード(まな板)である。これまで散々GaN単段アンプの実験に使ったもので、新たに真空管ソケットと入出力端子の穴を開けた。アルミシャーシと違ってすこぶる加工が容易で、実験にはもってこいである。
真空管は初段がTESLA E88CC 金足、終段がPX300B。ふつう、6DJ8/E88CCなどの三極管の一段では満足のいくゲインは得られないはず。いったいどうしたのか、その話は後で。
二枚目の写真は、試作段階のものなので初段の真空管がMullardになっている。

そして内部の様子。
左側にGaN素子が見える。いったいどんなふうに使ったのかといぶかしく思う向きもあるだろう。電源部はDynaco MK3をそのまま流用している。おいおい、詳細を記していく。