Tweak of WaveIO Clock Regulator (1)2013年01月13日 19時37分30秒

 この一週間、WaveIOの水晶発振器のレギュレータについて評価を続けてきた。レギュレータを独立させた当初は、良い方向に改善されたと喜んだ。しかし時間が経つにつれて問題点が明らかになってきた。音のエネルギー分布が高い方に偏り、どうしても堅い音しか出てこないのだ。

 まず最初にやった対策。ReflektorのZobel値が適正ではないのではとここを疑った。いくつか値を変えてみたが、結果は同じ。ここはシロだった。

 次にシャントレギュレータ素子(STP55NF06L)のVds電圧が低すぎるのかもしれないと考え、1S1588を加えて出力電圧を3.1Vから3.7Vに増やしてみた。水晶発振子の最大定格内に収まっているので問題はない。結果は、やや改善の傾向が見られたのだが、十分ではない。

 しかしこのことから問題点が絞られることになった。怪しいのは、シャントレギュレータ素子のCissもしくはCrssではないのか。というのは、datasheetによればCxxxはVdsと相関があって、電圧値が小さくなるほど急激に大きくなる傾向がある。出力電圧が高くなったことでCxxxが小さくなり、それが音の変化として聞き取ることができた。そのように説明がつく。
 
 これまで、Ciss=1700pF Crss=105pFなので、小さくはないけれども、大きな問題にはならないと判断していた。なにしろES9018の電源では全く問題なかったという実績がある。

 しかし水晶発振器に使う場合は、条件が厳しいのかもしれない。そのことを実証するためには、Cxxxに小さな素子に入れ替えて結果を確認する必要がある。

 手元にあるのはSI3460DDV。Ciss=666pF Crss=41pFで、非常に優秀だ。gfs=35(S)というところも気に入っている。+1.2V電源で好結果を出している。いかんせん問題なのは、最大ドレイン損失Pdが小さいこと。あまり電流を流すことができない。

 とにかくやれる範囲でやってみることにした。それがこの写真。結果については次の欄で報告する。

Tweak of WaveIO Clock Regulator (2)2013年01月13日 19時58分03秒

 エージングなしでスイッチを入れた瞬間から音の変化が聞き取れた。エネルギー分布はきちんと低い方にも分布している。なによりもすばらしいのは、空気が見えるかのような透明感だ。改めて思った。44.1KHz/16bitにはこれだけの情報が詰まっている!

 いつものようにキース•ジャレットのソロを聴く。床を足踏みする音。まるで自分の部屋の床を踏んでいるかのような錯覚を覚える。こんなことを言ったら笑われるかもしれないが、この音を聴いてしまったら他のハイレゾルーション•ソフトは必要ないのではとさえ思ってしまう。

 この実験でわかったこと。
1)NDKの水晶発振器(NZ2520SD)は評判の通りにすばらしい。低位相ノイズ特性が音に反映されている。他の発振器も試そうかと考えたが、これを聴いたらこれで十分と思ってしまう。
この発振器の存在を広く世に紹介してくださったのは、Bunpeiさんである。氏のご尽力に感謝したい。

2)水晶発振器のレギュレータの質は他の箇所で使う場合の何倍もの影響力を持つ。この点については、diyAudioでroenderさんも指摘されている。
(リンク http://www.diyaudio.com/forums/group-buys/207438-ian-asynchronous-i2s-s-pdif-fifo-kit-group-buy-49.html
言い換えれば、この箇所でOKならば、他の箇所でそのまま安心して使えることになるだろう。

3)Reflektorのシャント素子のCxxxは、極力低いものを使うこと。

 残された課題。
 SI3460DDVのGS間につながっている2本の2.7KΩ。これはたまたま手持ちの抵抗がこれしかなかったので変則的な使い方になっているだけで他意はない。
 この値は少々大きすぎるかもしれない。1KΩ以下500Ω以上の範囲に最適値があるのではないかと考えている。現在の設定だとカレントミラー回路に流れる電流が0.5mA程度しかなく、理想をいえば1mAは欲しい。このことは次の実験で確かめたい。

Tweak of WaveIO Clock Regulator (3)2013年01月13日 20時17分32秒

 このレギュレータでもっとも注意しなければならないのは、SI3460DDVの発熱である。設計値では消費電力が430mWとなっている。

 こんなとき、正確に素子表面温度を測定しておくのがよい。指で触れてみて熱いと思っても、それがどれだけの余裕度があるのかはわからない。精神的にもよろしくない。

 最近のデジタルテスターは安くて高性能だ。ちゃんと温度測定機能がついている。測定してみると、室温18℃で素子温度は70℃だった。結構チンチンに熱い。夏になったら余裕がなくなるだろう。放熱を工夫しなければならない。

 あるいは、水晶発振器の消費電流は微々たるものなので、定電流設定値をもう少し低くするという手もある。