GaN Single End Power Amp その12023年02月17日 21時12分00秒

GaNトランジスタを使ったラインアンプがつくってみると非常に高いゲインをもっている。(2023年1月11日の記事を参照のこと)こうなると、パワーアンプにはゲインはあまり必要でなくなり、設計がだいぶシンプルになる。

そこで新たにパワーアンプを構想することにした。条件は二つ。一つはもちろんGaNトランジスタを使うこと。もう一つは、バランス入力が可能であること。この二つ目の条件が意外に難しい。バランス入力にはホットとコールドの二つの信号がある。手抜きをするなら、コールド信号を捨てて(グランドに落として)、ホット信号だけを入力するというのが最も簡単。しかし、どうもこの手は気が乗らない。せっかくの信号なのだから、ホット、コールド両方を使いたい。

バランス入力をもっとも簡単に実現するには入力トランスを使うしかない。ちょうど手元に一次600Ω入力のトランスがある。ただし二次が40Ωでステップダウン(減衰)になるところが少し気になるが、とにかくこれでいくことにした。

そこで次のような回路を考えた。
回路がすこぶる簡単なので、つくりやすいことこの上ない。音に重要な影響を与える抵抗がR1とR2で、ここにVARを使う。

出力にあるC2であるが、これがないと出力がオープンになったときに動作が不安定になり、アイドリング電流が過大になるのを防止するために必須である。ここさえしっかりと対策しておけば、動作は極めて安定する。

なお、アイドリング電流の設定はD1,R1,R2で行う。それがNFBも兼ねている。なのでゲインを自由に設定できないところが、このアンプの唯一の欠点かもしれない。

音を出してみると、実に透明で、DACの信号を色づけせずにそのまま出している印象。限界まで削った抵抗にVARを惜しみなく投入したおかげで、実に生々しい音がする。音の数が多く、色彩も豊か。パワーアンプが何か仕事をするというよりも、音楽自身が音の姿を形作る。

しばらくこのアンプで満足していた。
<この項続く>

GaN Single End Power Amp その22023年02月17日 21時46分33秒

前回のアンプについて、いくつかの補足がある。

まず一つ目。GaNトランジスタの特性として、小電流時には問題にはならないのだが、500mA以上を流すような大電流領域になると、ゲート漏れ電流が無視できなくなる。G-S間に高抵抗をつなぐものなら、アイドリング電流が不安定になり、音も腰高になっていけない。この問題を避けるために解決策がソースフォロワドライブで、これまでそうしてきた。

今回は極限まで回路を簡素化させるために、ドライブするトランスの二次の巻き線が低抵抗になるようにした(実測で7Ω)。

そのトランスのことが二つ目の補足となる。
入力トランスに使ったPO400601は、型名が示すとおり一次が40Ωで二次が600Ωが仕様である。それを一次、二次を反転させて使う。メーカーの指定とは異なる使い方になるので、周波数特性を測定し、問題がないことを確認しておいた。

これで満足できる音が出たなら痛快この上ない。しかし世の中、そんな都合よくできてはいないらしく、やはりなんとなく不満が出てきた。透明感が高く、美しいのだが、なんとなく訴えるものに乏しい。パワーアンプには、やはりそれなりのゲインが必要なのだろうということになり、次の回路を考えることになった。
<この項続く>

孫来たる2023年02月17日 22時16分20秒

生まれてからいつか我が家に来てくれるだろうと思っていたら、世の中がコロナで大騒ぎとなり、ずっとチャンスがなかった孫であるが、父親がやっと「夏休み」がとれたというので、孫を連れて来てくれた。

北関東地方からやってきた孫には雪はほとんど初めて。今回は自宅の裏山でそり遊びをするのが目的。来た日には、目を丸くして雪景色を眺めていた孫もすぐに慣れてきて、そのうちにすたすたと雪山を駆け上っていくようになる。
毎日が雪山ではいくらなんでもかわいそうなので、某日、市内の動物園に連れて行った。
動物園は、鳥インフルエンザの影響もあって閉館しているところが所々あって、なんだか寂しい感じであったが、さすがにホッキョクグマだけは元気だった。悠々と水の中を泳ぐ姿を見ただけで、行ったかいはあった。
動物園で記念写真。
気温は−10℃を下回る寒さであったが、風もなく穏やかな一日だった。

GaN Single End Power Amp その32023年02月18日 22時12分12秒

入力トランスを使ったGaNパワーアンプ。
内部の様子を紹介する。まずはフロントエンドから。
銀色に光っているのが入力トランスのPO400601。かつて放送局の調整卓で使われていたもので、音のバランス、品位、どこをとってもさすがプロの世界で選ばれただけあって一級品である。メーカーなど詳細は不明で、表面には品番の他にUSAとだけプリントされていた.
これがアンプの基板かと思うほど簡素で拍子抜けする。

続いて、GaN素子の実装の様子。フロントエンド基板の向こう側にある放熱器に斜めに取り付けてある。
最後は全体の様子。手前が電源部で、向こう側に100mHの空芯コイルと出力コンデンサが見える。主要なところにはWEのワイヤをおごり、大電流が流れるところには2mm径の単芯銅線を使ってある。

GaN Single End Power Amp その42023年02月19日 20時53分27秒

入力トランス付きGaNトランジスタ・パワーアンプの歪率を示す。
周波数ごとの歪率がほぼそろっていたのは収穫であった。
Gainは+1.5dB。その割に歪率がそれほど低くならないのは、入力トランスで信号を単純に減衰させているためである。
予想はしていたが、回路設計としてはバランスを欠いていたようだ。ということで次の構想に移る。