ボルテージ・ミラー型シリーズレギュレータ(8)2016年02月08日 14時38分03秒

 前回、(7)のところに掲載した回路で、ボルテージ・ミラー型シリージレギュレータの基本形がほぼ固まったと言って良い。しかし課題がないわけではなかった。

 あの回路図ではアイドリング電流は約10mAとしていたのだが、これを増やすことで音が良くなるだろうということは、これまでSalasレギュレータをさんざんいじってきた経験から予想される。

 ではどのようにしてアイドリング電流を与えるのか。複雑な回路ににしたくない。いろいろ考えた。

それが掲載の回路図で、アイドリング電流はMTP3055VLによって与えられる。ポイントは、このMS-FETのゲート・ソース間電圧の与え方にある。この方法であれば既存の回路をそのまま活かすことができる。ただ、それだけだと過大な電流が流れてしまうので、ソース抵抗2Ωで調整する。シミュレーションによると、これでアイドリング電流は約130mAに定まる。

また、前回の回路と比べてわかるように、一部回路を簡略化している。よく考えると前回の回路は冗長な部分があった。それらを削っていったら、おまけとしてスタート回路も不要となった。

掲載回路の右上にあるグラフはPSRRの周波数特性である。単純な回路なのに、高い抑圧比を得ることができた。

右下のグラフが出力インピーダンス。前回の回路に比べて、およそ10dBの改善している。位相回転もオーディオ帯域においては微小であり、理想的な特性である。また回転角は最大でも-98°以下であって、発振のおそれは少ないと見ることができる。

なお、RD06HHF1のspice modelはメーカーから発表されていないので、アマチュアの方がネットで公開しておられたものを借用した。調べてみるとデータシートの特性によく一致しており、モデルの信頼性は高いと思われる。

余談であるが、Taylor型のシリーズレギュレータができないものかといろいろ思案したが、難しかった。リファレンス電圧の与え方がどうしてもネックになってしまうようだ。

野生動物の楽園?2016年02月08日 15時13分55秒

先日のことである。私が仕事から帰ってくると、妻が興奮しながら今日あったことを報告し始めた。

妻が2階の窓からなにげなく外を眺めていたら、いきなり野生の鹿が現れて驚いたというのである。手もとにあったiPadで写真をとろうとしたが、あわててしまって動画で撮ってしまったという。その動画を見せてもらった。粗い画像粒子でわかりにくいのではあるが、確かに数頭の鹿が、公園の雑木林のなかに写っている。

以前から、町内の電柱に「鹿注意」という看板が掲げられていたし、近所の奥さんからも、家の周囲を鹿が歩いていたとの話は小耳にはさんでいた。

あの日以来、ふたりで窓を眺めながらまた鹿が現れないかと待っているのだが、どこか遠くに旅に出かけたのだろうか。姿を見せない。

さて、今朝のこと。夜の間に降り積もった雪を除雪しようと外に出たら、なにやら足跡がある。最初は犬のものかと思ったのだが、どうも様子が違う。足跡をたどると、道路面から1.5m高いところにある我が家の庭の方に続いている。足跡の主は明らかに庭から飛び降りたのである。

庭に回って足跡を確認すると、隣家の庭から我が家に入り込み、そして道路に降り、てくてくとと向こう側に散歩していったものと推定される。それが掲載の写真。

この足跡の主はおそらく狐であろう。何年か前には、決まった時間に道路に出てきて、私を迎える(ように思える)狐の親子を見かけたこともある。

数日前には家の近くの幹線道路で車にひかれて横たわっていた狐も見かけた。もしかして子供が巣で待っていたのかもしれないと思うと不憫なものである。

ここあたりは夏になると熊も出ることがあり、公園には立ち入り禁止の札が貼られる。それを読んで、これは熊が遊ぶ公園で、人間は立ち入ってはならないという意味なのかと苦笑した。

真空管ヒーター 定電流点火回路の考察(12)2016年02月08日 15時40分52秒

さて、あれからどうなったか。エージングを重ねるうちに音がかたいことと、音が前に出てこないことが気になるようになってきた。これはなにかがおかしい。

いつものことだが、おざなりにしていたところが結局足を引っ張ることになる。ふたつの不具合点が見つかった。

(1)電源電圧が低いこと、(2)WE412Aのヒーター電流が過少であった、この2点である。

(1)電源について
13D2のヒーターだけをまかなっていたときは、まだなんとか余裕があったのだが、WE412Aのヒーター電流が加わったため、電源電圧が低下した。それでも定電流回路としては正常に動作する。しかし音の面から言うと問題があった。

制御MOS-FETのドレイン・ソース間電圧が低すぎると、音がかたくなることはこれまでしばしば経験してきた。原因はおそらくこれである。

ではどのようにして適正電圧に上げるか。電源トランスに適当な巻線が残っていないという理由で、これまでこの問題を棚上げにしてきた経緯がある。

うーんと考えた。その結果は回路図に示した。従前は6.3V+8VACの巻線を使っていた。トランスには6.3V/1Aの巻線が使われずにある。しかしこのままでは使えない。制限電流をオーバーするからである。

そこで、2段重ねで行くことにした。WE412Aには従来通りにし、13D2のヒーター電流にはその上に6.3V/1Aの電圧を重ねる。こすうれば、MOS-FETドレイン・ソース間電圧が10Vになり、理想状態になる。

ただひとつ注意点がある。動作時は問題ないのだが、電源をオフにすると、13300uFの電解コンデンサと22000uFの電解コンデンサの間でエネルギー差が生じて、13000uFに逆電圧が掛かってしまう。これを防止するのがD17である。

(2)WE412Aのヒーター電流
仕様では1Aとなっているので、当初そのように設定した。しかし、定常状態に達した時のヒーター電圧は5.3Vであった。電流値優先で考えてきたが、これはなにがなんでもおかしい。音が前に出てこないのはこれが原因であろう。

そこで規定の6.3Vになるようにヒーター電流を調整した。1.23Aのときに規定値になった。
WE412Aのヒーターを観察すると、素人目にも従前よりも明るくなっているのがわかる。これでは音も違うはずである。

結果は次の欄で。

なお、回路図のダイオードの記号がツェナーとなっているのは単純なミス。実機ではCREE SiC SBDを使っている。
また、回路図ではMOS-FETがRD06HHF1となっているが、現状ではIRF610を使っている。

真空管ヒーター 定電流点火回路の考察(13)2016年02月08日 16時21分32秒

ラインアンプのヒーター定電流回路の検討に着手したのは11月頃である。あれから、ああでもないこうでもないと何度も手を加えてきた。

最初は13D2のヒーター定電流回路。次にWE412Aのヒーター定電流回路。そして最後は電源周りの見直しと、電流値の再設定。そのたびごとにエージングのやり直しである。

たかがヒーター点灯回路である。エージングなどたいしたことではない、と思う方もいるだろう。ところが豈図らんや。やってみるとこれほど影響があるのかと驚くほどである。

ヒーター回路の線を一本変えただけでもゼロからエージングのやり直しという非情な世界である。

とにかくエージングが不足しているときは、箸にも棒にもかからない酷い音しか出ない。いちかゼロか。その中間がない。だからダメな状態が延々と続く。

良い音が出てくるのは700時間あたりから。その間、真空管がエージングのために消耗するかと思うと気が気でない。でも、だめなものはだめなのだからどうしようもない。

それを今回は三回繰り返した。かれこれ3ヶ月半か。ああ、疲れた。

音はどうなったか。
実はまだエージングの途上である。昨夜までは耳に突き刺さるところがあって気が重かった。

しかし、きょうになって徐々にそのあたりが穏やかになってきた。そうすると俄然音楽が生き生きとしてくる。表情がすばらしい。これでもまだ完成ではない。まだまだ変わっていくはずだ。

最終結果の報告はもう少し先になる。

真空管ヒーター 定電流点火回路の考察(14)2016年02月15日 21時14分40秒

エージングが進むにつれて、音は良い方向に変化していくだろうと予想していた。が、しかし、そうは甘くはなかった。

重心がなかなか下がらず、地に足がついていない印象。音が期待したほど前に出てこない。

そんなとき、Analog親父様からのアドバイスを思い出した。「WE412Aのデータコードが古いものに差し替えてみると良いですよ。音が違います。」言葉だけではなく、なんと貴重なWE412A(データコード413:写真の上側に写っているもの)を実際に送ってくださった。この場をお借りして改めて感謝申し上げます。

手持ちのものは写真の下側に写っているデータコード452。Analog親父様からの情報に触れるまでは、まさか製造時期でそれほど大きな変化はないだろうと思っていたし、いただいた真空管は将来のために大切にとっておこうとも思っていたので、棚の奥深くしまっていた。

しかし、音が良くならない原因を特定するためにも、整流管の定電流点火回路も安定してきたところで、データコードの違いを検証することにした。

そこでおもむろに、いただいたWE412Aに差し替えて音を出してみる。
エージングなしなので音は荒いのだが、それでも一発目で勝負があった。時間が経つにつれその差がどんどん広がっていく。ぶっちぎりの大差で、データコード413の圧勝。

重心が気持ちが良いほど下がって、まさに求めていた音が出る。音も前に出るし、今まで聞こえなかった音さえ聞こえてくるではないか。これが同じWE412Aとは思われない。

なお、手持ちのものは、だいぶ「へたって」しまっていたという可能性も捨てきれないので、一応付記しておく。

とにかく、この音を聴いてしまっては元に戻すことはできない。

それからまた課題も見えてきた。WE412Aを交換しても、なお強い癖が高い周波数領域に残っている。
実は以前から気になっていたのだが、DACのレギュレータの見直さなけれならないようだ。おそらくオーディオ帯域で位相が激しく回転していることが原因ではないかと疑っている。