Konちゃんの虫眼鏡

　真空管ヒーターを定電流で点火した場合の効果はかなり大きなものがあると思う。これだけ効果があるのになぜ世間では普及しないのか、次第に疑問になってきた。

　一つの反論として、「定電流点火はヒーターの寿命を短くする」という説がある。この説の詳細は次のようなものである。
　『電源オンでは確かにラッシュカレントは流れない。しかしヒーターの温度上昇に伴い抵抗値が増大する。そうしたら、定電流回路は一定電流を流そうとしてヒーター電圧が増大する方向に働くはずだ。電圧増大に伴い、抵抗値が増大する。これは正のフィードバック作用となる。最後にはフィラメントがダメージを受け、寿命が短くなる。』

　この説を提唱した方がどのような定電流回路を想定していたのかは不明だ。LM317を使った定電流回路に限れば、負荷の抵抗値が増大したからといって出力電圧が増大するように能動的に働くことはない。抵抗値が増大した結果、見かけの上でヒーター電圧が増えることは確かだが。この場合、LM317はあくまでも一つの定電流素子として見なすことができる。例えば、FETを定電流素子として用いた場合、FET自身に出力電圧制御能力があるのではないことと同じである。

　もしこの説が正しいなら、ヒーターは即座に焼き切れてしまうはずだが、私のところでは今のところ問題はない。ヒーター電圧が時間とともにいつまでも上昇し続けることはない。一定値にとどまる。ということは、ヒーターは温度上昇に伴い確かに抵抗値は増大するのだが、どこかで一定値となり、定常状態を保っていることになる。この状態では、ヒーターには負のフィードバックが働いていると考えなければならない。

　もう一つの反論として、ヒーターは電圧で規格が決められているのだから、定電圧動作が望ましいとも言われることがある。しかし、物理的に見れば、ヒーターは電力（電気エネルギー）を熱エネルギ−に変換するエネルギー変換素子と考えるべきではないだろうか。だから、入力が電圧なのかそれとも電流なのかという視点はあまり意味がないような気がする。

　私の意見としては、どうしても定電圧点火は無理があるような気がする。ヒーター温度が低いときに一定の電圧を加えるのだかが当然、ラッシュカレントが流れてしまう。どう考えてもヒーターには申し訳ない使い方だ。
　定電流点火にすればラッシュカレントは生じない。この点だけ見ても、定電流点火に歩があるように思えるのだが。。

　定電流点火は本当に寿命が短いのか。WE420Aのヒーターが断線したら、そのとき報告したいと思う。