GaN Transistorをダイオードとして使う2018年02月05日 22時16分34秒

昨年12月17日にBunpeiさんから、以下のようなコメントを頂いていた。一部再録させて頂くと。。。
「以下の発表資料によると、GaN素子のG-Sを直結するとダイオードと等価になるとこのことで、GS66502Bを買って5V用電源でトライしてみました。
https://superlab.stanford.edu/poster/APEC2017_slides_Sanghyeon.pdf SiCダイオードと交換したところ、何も放熱のしかけをしていないGS66502Bが熱くなるので、こわくなって止めました。 このアルミ基板で放熱の問題がなくなるならば、ダイオードとしての利用でInfineonのSiCとの比較を公開していただけると大変ありがたいです。 」

Bupeiさんから紹介していただいた資料を読むとたしかに次のような記述がある。
GS66502Bがダイオードとして使えるとは初耳だったので、これを見たときは目を疑った。早速シミュレーションをかけて確認してみた。比較に使ったのはInfineonの第6世代ダイオードである。

計算結果を見るとたしかにダイオードとして動作している。これだけ見るとGaNの旗色があまり良いとはいえないが、どこまで実態を反映しているかは不明である。実際に試してみなければわからない。

そこで、このごろやっとメインシステムが安定し評価環境が整ってきたこともあり、Bunpeiさんからの宿題に挑戦してみることにした。
こんな場合、ダイオードの評価としてもっとも適切に判断できるのは、これまでの経験からクロック発振器の電源であることがわかっている。今回もそこをターゲットとして選んだ。
これまで使っていたのはInfineonの第5世代ダイオード。
それをGaN素子であるGS66502Bに入れ替えた。
ニチコンの電解コンデンサKGシリーズで平滑化されたあと、Taylor型レギュレータに行き、ロシア製水晶発振器ГК154-П-Т (45.1584MHz)につながる。DACはここ数年ずっと使っているFN1241。
さて結果は。
交換した直後は、Infineonダイオードとほとんど似たような音が出たので、期待が大きかっただけに少々がっかりした。これならわざわざGaNに入れ替える必要はないだろう。

ところが時間が経過するうちにだんだん変化していくではないか。これは24時間経ってから評価したほうがよいと判断し、昨夜はそのままにしてとこに入った。

そして24時間経過。。
最近お気に入りの『CHARLIE HADEN /JIM HALL』を聴いてみた。むむ、違う。まだエージング不足の面があって硬いところはあるが、それでも違いは一聴瞭然。音が上も下もスーッと伸びていて、余韻が美しい。なにより演奏者の心がひしひしと迫ってくるのが良い。音楽に身体が同期してリズムを刻む。

クラッシクはどうか。バイロイト祝祭歌劇場実況録音盤『ローエングリン』を聴いてみた。これは私の愛聴盤でこれまで何度も繰り返して聴いているので変化はわかりやすいとの判断。
最初の出だしからもう違う。こんなにオーケストラの音量が豊かだったけ?ととまどうほど、スケールがふたまわりくらい大きく聴こえる。もちろんうるさくなることはない。むしろ演奏の隅々まで細かなところが手に取るようにわかる。声ももちろん言うことはない。口の周りの表情が読み取れるのではないかと思えるほどである。

この音を聴くと、さすがのInfineonでもまだまだ発展途上であることがわかってくるから恐ろしい。例えば以前なら低音が団子になってしまうことがあり、アンプやスピーカーのせいではないかと疑っていたが、GaNにしたらこれが一変したので驚いた。音と音とが重なり合って醸し出す微妙なゆれまで正確に表現する。これには舌を巻いた。

悩ましいのは値段である。変換基板を含むと1個1200円程度になるから、システム全体のダイオードを交換しようとなると結構な金額になる。こうなると、是非GaNダイオードが一般化することを願う。

GaNトランジスタをダイオードとして使うことに目を開かせてくださったBunpeiさんに改めてお礼をお申し上げる。これからエージングが進めばまだまだ変化していくと思われるので、随時続報を入れたいと思う。