ラインアンプの終端抵抗2012年01月09日 15時55分51秒

 ラインアンプはこれ以上ないほど単純極まりない回路で、一箇所だけ除いてどこもいじりようがない。その一箇所とは、出力トランスNP-126の終端抵抗である。

 このトランスの出力インピーダンスは600Ω。これを受けるパワーアンプの入力インピーダンスはおよそ20KΩだ。終端抵抗を入れないと、出力波形が大きく歪む。

 実験のために終端抵抗を外して音を聞いてみた。開放的でダイナミック、非常に魅力的な音が出てきた。しかしうるさい。キンキンする。調べてみると75KHzあたりに大きなピークがあり、矩形波を見てもリンギングが盛大に発生しているのがわかる。
 惜しいけれど、終端開放という訳にはいかない。

 では終端抵抗の値は何がベストなのか。これが大きな問題なのだ。いままで何度も試してきたなかなか決まらなかった。理論的には600Ωで終端すれば良いはずなのだが、あのYAM抵抗を使っても納得出来なかった。どこか抑圧的に感じてしまうからだ。

 たまたま手元に1KΩのVishay VAR(Naked)があった。近いうちにシャントレギュレータ用に使うことを予定していた。ふと、これで終端したらどうだろうかと考えた。昨夜これに入れ替えてみた。

 はんだ付け直後だし、エージングもしていないので、本当にひどい音だった。低音はすっぱり切り取られ、ギスギスしていて、まったくどこにも良いところが見当たらない。憂鬱になるので途中でスイッチを切ってしまった。

 一夜明けて休みの今日、もう一度聞いてみた。驚いた。昨夜と激変していた。最初の数秒でその変化がわかる。誰が聞いても分かる変化だ。音が前にせり出してきてダイナミックになったことはもちろん、低い方の音がモリモリと突き抜けてくる。部屋の中にある小道具が共振してビリビリ鳴り出すほどだ。

 この音を聞けば、あの素晴らしいと思っていたYAMさえVARの前では完全に敗北したことを認めざるを得ない。終端抵抗でこんなに違うのか。開いた口がふさがらない。

 今までなぜ終端抵抗のことでズルズル悩んできたのか、これで氷解した。抵抗値が問題だったのではなく、抵抗の質が問題だったのだ。

 VARは一般には「抵抗」というカテゴリーに分類される部品である。しかし、私にはこれを「抵抗」と呼ぶことに疑問を感じるようになってきた。「抵抗」とはまったく違う新たな部品なのではないか。

 オーディオの大先輩たちが追い求めても手にすることの出来なかった理想の部品。そんな貴重な部品に巡り会えたことを感謝したい。

IVC for PCM1794 電源回路図2012年01月09日 17時37分41秒

 整流ダイオードはCREEの手持ちがなくなったのでIXYS社のSonic FRDを使っている。

 この回路のもっとも特徴的なところは、整流方式にある。これはD式電源を参考にじぶんなりにアレンジしたもの。D式はコイルを使っていたり、インピーダンスをそろえるために抵抗を使っているらしい。今回、それらを全部省略してダイオードと整流管だけでメイン電源と補助電源を構成した。もちろんD式が理想的な方法なはずだから、この回路では中途半端な効果しか期待できない可能性がある。

 しかしそれでも、この電源方式は従来のものと比べて音が変化する。私の耳にはかなりの変化に聞こえる。他のところでも報告されているように、特に低い周波数領域でのエネルギー感が増大し、高いほうの周波数域では余韻がきれいに出てくるように思われる。

 これに気を良くして、Neutron Star、 DAC、ラインアンプの電源にもこの方式を導入した。従来法式のままなのはパワーアンプだけである。

 パワーアンプは電源立ち上がり時のラッシュカレントがあるため、おいそれと他の整流ダイオードを交換できない。それでもいつかはインストールしたいものだと思っている。

 それからなぜわざわざ整流管を用いるのか疑問に思うかもしれない。増幅用真空管の保護という意味もあるが、整流管の音を残しておきたいからである。不思議に整流ダイオードを使っていても整流管の音がすると私は思っている。

追補
回路図の一部に誤りがありましたので訂正しました。