バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)2006年02月03日 08時21分35秒

 バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)演奏の「ヨハネ受難曲」を図書館から借りてきた。ジャケットには"Original Analog 2-Channels Direct Recording"と記されている。演奏を聴くまでは、あまり意識していなかったが、出てきた音を聴いていろいろなことを考えさせられた。
 マルチ録音では得られない音場の生々しさがそのまま表現されいることはすぐにわかる。演奏が休止しているときには、会場の暗騒音もそのまま聴こえる。耳をこらせば、もしかすると会場の外を走っている自動車の音も聞こえるのではないかと思わされる。
 当然、楽器の定位が自然で目を閉じればカザルスホールの響きが素直に耳に滲みわたる。カザルスホールがまだ竣工して間もない頃、出かけていった頃のことを思い出した。録音の原点がここにある。
 しかし良い面ばかりでもない。独唱者の声量にばらつきがあるので、福音書記者(テノール)とイエス(バス)は浪々と響き渡るのだが、他の独唱者の声が楽器の音に埋もれてしまい、聴き取りにくい時がある。マルチ録音であれば、ソプラノなり、アルトの前に隠しマイクを置くことになるのだろう。つまり、このCDはライブ演奏の良いところもそうでないところもそのまま切り取っているのだ。演奏者にしてみればごまかしが許さない厳しい録音なのだ。演奏者の技量をそのまま表現してしまっている。
 以前に小沢征爾のマタイ受難曲をCDで聴いたときは、人が発する言葉が聴衆に対して明瞭に聴こえることに配慮が行き届いており、ある方が言われている通り、楽器による演奏は非常に抑制のきいたものになっていた。
 ところがBCJの演奏では、どうもそのあたりのバランスがちぐはぐのように聴こえてしまう。しかしそれは、BCJにとっては酷ということかもしれない。それだけ、この録音は演奏の粗をそのままさらけ出すほど凄まじいものなのだろう。
 このCDの録音を聴いてしまってから、他のマルチ録音の音の嘘さ加減が耳についてストレスを感じるようになってしまった。たまたま次ぎに聴いたモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」(カールベーム指揮、1972年録音)では、もうだめだった。ハープのお化けがどーんと前に陣取り、恐ろしくて聴くにたえない。
 そしてたまたまその次に聴いたヨーヨー・マ演奏のチェロ協奏曲(ドボルザーク作曲、ソニーのSBM録音)では、また首をかしげてしまった。最初は自然な録音に感じられるのだが、徐々に何かが足りないことにイライラし始めてくる。現実感がないのだ。なにか幽霊の演奏会を聴いているようにしか思えない。BCJの録音は、まさに現実の音が聴こえてきた。ところがこのCD、どんなに耳をそば立てても、向こう側の世界から音の抜け殻がよろよろ這い出てきたような音にしか聴こえてこない。折角のヨーヨー・マのすばらしい演奏であるのにも関わらず、途中でCDを止めてしまった。世間の人々はいったいどのように聴いているのだろうか。

LCフィルター2006年02月06日 17時44分04秒

 LCフィルターにまた手を出してみた。LCフィルターの位相遅れが気になっていた。これまでは、22KHzで33度の遅れが発生していた。これが大きいのか、それとも許容範囲なのかはわからない。
 そこでLを取ってみたらどうなるのか、興味が出てきた。もちろん減衰量は小さくなるという弊害が発生する。シミュレーションによるとLを取った場合、20KHzで15度の遅れとなる。減衰量は200KHzで-9dB(現状では-23dB)になる。どちらが優位なのかは、音を聴いてみるまでわからない。
 そこでやってみた。最初のちょっと聴きでは、意外に変化がないように思った。しかし、女声合唱の高音域のffでは、さすがに歪みが聴き取れた。ピアノを聴いても若干濁りのようなものが聴こえるかなと思える。このように弊害もあったが、メリットも感じられる。
 やはり音の鮮度が向上したように思える。意外なことに、低音域の音階が明瞭になってきた。
 ということで、当分Lなしでいってみようという結論になった。

フラットアンプの定電流回路2006年02月06日 17時56分28秒

 これまでDACを集中的に攻めてきたが、ここにきてフラットアンプの弱点が気になってきた。これまでは、初段の定電流回路のマイナス電源は、出力段から抵抗とツェナーを通して供給していた。しかし、定電流回路の電源を独立化するのが理想であることはわかっている。
 そこで改造に取りかかった。マイナス電源は電池から供給する。ちょうど単一電池が40本ある。これを左右独立の-30Vとして用いる。
 実は以前も電池から供給していたのだが、キャノンコネクタの抜き差しでオンオフしていたものだから、ときどき抜き忘れて電池を消耗させたことがあった。これが結構使っていてストレスになるのだ。そこで今回は、使わなくなっていたミューティングスイッチでオンオフさせることにした。おまけに、使わなくなっていたLEDがパネルについたままなので、これをパイロットランプとする。これなら切り忘れはなくなる。
 さて結果はどうか。これが思った通り非常に良い。左右独立させたのも良かった。スピーカーの外側に定位するかのように聴こえてくる。情報量も多い。細かな音が聴こえる。ベースの音階が団子にならずに明瞭だ。今までの音には、微小なピークがあったことに気がつく。より耳になじむ音に変化した。音楽の感動がより深く伝わってくるようになった。もうこれは後に戻れない。
 いつものことだが、良い音を聴いて初めて今までの音で何が足りなかったのかがわかる。

LCフィルター(2)2006年02月06日 20時40分22秒

 Lをとっても大丈夫と思ったが、やはりだめだった。歪みが聴こえてしまう。トランペットも歪む。歪まなくても濁る。これは我慢できない。
 でも、ただLを戻すのもしゃくなので、別の選択肢がないか考えている。

LCフィルター(3)2006年02月10日 18時59分03秒

 結局次のような定数になった。L1=0.5mH, C1=33000pF, C2=6100pF, R=9Ω。
変更になったのはRの定数。以前は100Ωと22Ωでアッテネートしていたが、シミュレーションの結果9Ω一本となった。
 まず出力電圧が若干小さくなり、使いやすくなった。また、フィルターのQが大きくなったせいで以前に比べて減衰量が大きくなった。これは予想外だった。ただし位相回転は、若干悪化したが、違いは数度に収まった。
 音を聴いてみると、やはりLがあると安心できる。高音域の歪みは皆無となった。コンサートホルーの残響がすばらしい。ヴァイオリンの響きが天上の音楽のようだ。
 学生時代にウィーンフィルを生で聴いた時の衝撃を思い出す。水にぬれた黒髪のようにつややかでしなやか、耳に滲みわたるしあわせな音。これがCDから聴こえるようになってきた。
 DACが良くなると、アンプもおちおちとしてはいられない。DACの実力を発揮させるために、アンプも成長が求められる。メインアンプの初段定電流回路の電源がポイントとなるだろう。