TDA1541A-S1 DAC 製作記 その序2022年11月04日 21時00分38秒

Laptec 水晶発振器に使っているWE404Aのヒーター定電流回路。その後どうなったか。
実を言うと期待したほどの大きな変化が得られなかった。なぜだろうか。もしかしてDAC(FN1241)の限界ではないのか。そのことを確かめるためには、もう一つ別のDACで比較するしかない。

DACの選択には迷いはない。次を作るならTDA1541Aと決めていた。このDAC、もはやWEと並ぶヴィンテージ品で、市場ではまず入手不可能である。Ali○○を覗くと、堂々と新品が売られているが本物であるとは到底思えない。
ではどうするか。TDA1541Aを搭載している中古のCDプレーヤーを探すのが、おそら唯一の手段だろう。それで手に入れたのがこの写真。見ておわかりのとおり、クラウンマークが一個ついているS1タイプである。
手元にはこれとは別に、同じものが2個ある。FN1241に乗り換える前まで使っていたもので、故障していないことは確かめてある。

これからその製作過程を綴ることになるだろう。

TDA1541A-S1 DAC 製作記12022年11月04日 21時23分25秒

TDA1541AのDACの製作記事を私が初めて目にしたのは、ラジオ技術1994年1月号に掲載された別府俊幸氏の記事で、今に至るまでDAC制作者が目を通すべきバイブル的存在と思っている。

では、今回DACを作り直すにあたり、なにを参考とするか。さすがに上記の記事は情報として古くなってしまった。さりとて一から自分で研究するなど、そんな力量もなければ時間もない。先駆者が切り開いた道を利用させていただく。

そこでいつもお世話になっているdiyAudioのスレッドを調べると、Building the ultimate NOS DAC using TDA1541A というものがある。ecdesignsさんが主催者で、TDA1541Aには欠かせない技術となった「DEMリクロック」もここがオリジナルである。私もTDA1541Aを使っていたとき、これを読んで真っ先にDEMリクロックを導入し、その効果に腰を抜かしたことは今でも忘れない。

その後、DEMリクロック技術はどうなったか。ここ何年も、このスレッドから遠ざかっていたので気がつかなかったのだが、予想もしていなかった方向に進化していた。そのことは設計篇で触れることになるだろう。

写真は、まだ完成とは言えないけれど実働状態までにできあがったTDA1541A DAC。ただいまエージング中で、いつもとおり日々音がコロコロと変わっている。

TDA1541A-S1 DAC 製作記22022年11月30日 21時25分40秒

この一ヶ月、回路にいろいろ修正を加えて、だいたいフィクスしてきたので全体の回路図を公開する。

まずはDAC本体から。
ポイントは以下のとおり。
(1)デジタル部
・DDCはI2SoverUSBを採用。理由は三つある。1)USB側とDAC側との間がアイソレーターによって分離されている。2)リクロック回路が内蔵されている。3)TDA1541Aのsimultaneous mode信号を出力できる。
・Laptech OSCのクロック信号(サイン波)の矩形波変換は実績のあるLTC6957を採用する。
・DACはもちろんTDA1541A-S1で、これを左右分離の2パラ接続で使用。
・以下二つの内容はこecdesigns氏のアイデアによる。
・いわゆるDEMリクロック回路は採用しない。その代わり、DEMの発振周波数を50Hzに落とす。デカップリングCは別府氏によればASCが指定であったのだが、DEMの発振周波数が極端に低くなるため、100uFの電解コンデンサとなる。
・DACは前述の通りsimultaneous modeで使用する。

(2)アナログ部
・i/V変換は18Ωの抵抗一本で行う。
・データシートによれば、TDA1541A-S1のアナログ出力のコンプライアンスは、±25mV以内と定められている。抵抗I/Vを採用すると大信号ではこれを守れないケースが出てくるが、ここは妥協する。これはecdesign氏のアイデアであるが、最初これを見たときは正直ちょっと驚いた。しかし様々なI/V変換法を実験した結果、これがベストだったという。使用する抵抗はもちろんVARである。当初は実験的にZ201抵抗を使用していたが、VARに変えたとたん、その格の違いに驚いた。少々高価ではあるが、これしかない。
・18Ω抵抗そのままでは振幅電圧が小さいので、トランスでステップアップする。これはローパスフィルタも兼ねる.
・DACのアナログ出力電圧ゼロ補償はこれも抵抗一本で行う。これも上記のような実験結果による。ただし、この抵抗も音質に大きな影響を与えるので、VARを採用する。電流値の調整は10KΩ半固定抵抗でおこなう。

続いて電源部。
(1)電源トランスと整流部の回路
・USB側とDAC側とは電源から分離するので、その分トランスが一個必要となる。
・アナログ部の電源も左右分離とし、特に重要な-15V電源についてはチョーク入力平滑回路とした。また平滑コンデンサにはWEST-CAPを並列に入れる。これも結構効いてくる。
・USB側電源を除いて、DAC部、アナログ部の整流にGaN素子を採用した。

(2)続いてプラス側レギュレータ関連
・制御素子はUSB側電源を除いてほかはすべてGaNを採用。
・無帰還とする。

(3)次にマイナス側レギュレータ関連
・同じく制御素子にGaNを採用。
・こちらは負帰還をかけている。 ・マイナス電圧の制御は通常p-ch MOSFETもしくはバイポーラトランジスタを使うのが王道であるが、n-ch素子であるGaNを使いたい。そこで回路を工夫した。ただしバオポーラトランジスタに特有のアーリ電圧による音質劣化を避けるなければならない。そこでカレントミラー回路が登場する。実験すると安定して動作する。今後マイナス電圧レギュレータの基本回路となるだろう。

TDA1541A-S1 DAC 製作記32022年11月30日 22時09分04秒

それで様子はこうなった。
結構大きなシャーシを使ったつもりだったが、組み上げてみるとぴったりで、空白がほとんどない。
写真では見えていないが、DAC基板だけは10mm厚のアルミ板に載せ、その下にゲル緩衝材をはさみ、シャーシに直接触れないようにしている。

今後の課題。
Laptech OSCからの信号受け渡しはSMAの普通のケーブルを使っている。取り回しは最高であるが、ジッタに対しては理想的ではない。これをセミリジッドケーブルに入れ換える。