Driscoll 型OSC 開発録その12020年02月03日 20時53分45秒

andrea_moriさんが、diyAudioにおいてフォーラムを開設したときに書いた趣旨を読むと原回路を忠実に再現することよりも、優れた水晶発振子を使って誰でも高性能の発振器を作れるようにすることを目的にしたと読める。実際、彼が配布しているOSC基板はDriscoll型であると称しているが、Driscollの特許に書かれている原回路と比べると似て非なるもので、この基板をDriscoll型を称するのはどうかという疑問が湧く。

とは言え、確かに制作は比較的に容易であって、出てくる音もすばらしいとなればandrea_moriさんの努力には感謝しなければならない。

andrea_moriさんの基板をいじりながらいろいろ発振器の初歩を学ぶことができたので、次の目標としてDriscollの原回路を再現してみることにした。

世の中は実に便利で、Driscollの特許は世界中どこでも誰でも閲覧できる。この特許文の素晴らしいところは、回路について詳細な解説がついていることで、おおいに参考にさせてもらった。ただし斜め読みだが。明日から大腸のポリープを取るために数日間入院するので、病院のベッドで詳細を読むことにしている。

いきなり回路を組むのはさすがに躊躇した。というのは、これまで使ったことのないトロイダルコアが登場するからである。ここはまず、定番の「定番トロイダル・コア活用百科」でお勉強。45MHz帯に最適なトロイダルコアとしてT-50-10(黒)を選定する。

一次側のインダクタンスを1uHとすると、巻き回数は18回。このあたりの計算もネットに出ていて実に便利。2次側はシミュレーションによれば0.05uHがよいとのことで、4回巻きとなる。
途中経過を省略すると、実際に動作するようにいろいろ調整した結果が次の回路図。

回路図のC4 5pFは実際にはエアバリコンになっていて、発振出力が最大になるように調整する。ただしmaxに合わせると発振停止することもあるので、微妙にmax一歩手前で止めておくのがコツのようだ。
なお断っておくが、Driscollの原回路には二個のダイオードを使ったリミッタ機能とフェライトビーズがあるが、今回は未実装である。これについては今後研究する予定である。
具体的な実装の様子については次の欄で。

Driscoll 型OSC 開発録その22020年02月03日 21時55分01秒

今回は試作なので、ずっと以前に何のために買ったのかすっかり忘れていたサンハヤトのICB-960SEが棚に置いてあってのでこれを使った。片面がベタアースになっていて高周波回路に最適である。

トロイダルコアとその左側にあるエアバリコンが見える。バリコンを使うのは、中学時代に超再生ラジオを作って以来だろう。秋月電子でたまたま売っていたのだが、これを入手できたのは幸運だった。調整範囲は1.9〜16pFとなっている。1pFあたりまで調整できれば良かったのだが贅沢は言っていられない。3pFを直列に入れてしのいだ。

基板の上には水晶発振子が二個あるので、奇妙に思われたかもしれない。実は、Driscollの特許には水晶発振子を二個シリーズ接続する例が掲載されていたのでやってみたのである。結果から言えば、いとも簡単に動作した。ただし、である。ケーブルを含む負荷をつないだら発振が停止してしまった。おそらく二個シリーズ接続で安定動作させるためには少し工夫が必要なようで、これは次回の課題とする。

ケーブルなしで47Ωだけの負荷で観測した波形は次の通り。

よく見ると完全な正弦波ではなく、わずかに歪んでいる。どのようにしたら美しい正弦波が出てくるのか。ここあたりは素人には難しく職人技である。

DACへ接続してどんな音が出たかは次の欄で。

Driscoll 型OSC 開発録その32020年02月03日 22時12分13秒

いよいよDACへ接続して音出しである。机上ではきちんと発振することを確認していたので、すぐに音が出るものと思った。ところがノイズしか出てこない。よくみたらケーブルが負荷となって発振が止まっていた。あれやこれや調べた結果、発振子を一個としたら発振した。おそらく水晶発振をシリーズ接続した場合、今の回路定数では負荷の影響を受けやすいのだろうと推測。

andrea_moriさんの基板を外して新しい基板を入れる。

電源は菊水の実験用電源でエージングなし、おまけにオーブンなしだから、ハンディは大きい。それなのに出てきた音はandrea_mori版から明らかに向上している。空間がますます静かで透明になり、音に鮮やかな色があるかのような様子である。とにかくやったかいがあった。

こんな簡単な回路でこれほどの改善効果があるとは驚きである。発振回路の教科書にはハートレイやコルピッツが紹介されても、Driscollが載っていたのを見たことがない。不思議である。

我が国でDriscoll発振器に言及したのは私の知る限り、メーカーなどの専門家を除けば民間人ではrtm_iinoさんが最初であろう。「新大陸への誘い」の管理人さんが2017年5月13日の記事で紹介している。

こんな素晴らしい回路をもっと多くの人に使ってもらいたいと思う。ただし回路が音を出すわけではない。どんなに優れた回路でも水晶発振子の性能がすべてを左右するのは確かであることを付言しておく。

大腸ポリープ摘出手術2020年02月11日 10時37分52秒

これまで病院には二度入院したことがある。一度目は、小学一年の時に扁桃腺を取ったとき。二度目は、大学時代にインド旅行の帰りに法定伝染病にかかり強制隔離されたとき。あのときは一日何もすることがなく、さりとて外にも出られずとにかく暇だったことを覚えている。

昨年末に個人病院で内視鏡による大腸検査を受けたところ、当院では取り切れないポリープがあるので大きな病院を紹介するからそこで手術を受けてくださいと言われことが事の発端である。

遺伝的な体質らしく大腸ポリープができやすいことは知っていて、これまで数年に一度の間隔で検査のたびにポリープを取ってきた。いずれも比較的小さなものだったので日帰りで手術ができた。ところが、前回の検査から五年のあいだ放っておいたことがいけなかった。ポリープが大きく成長してしまい、話も大きくなってしまった。

2月4日に近くの大きな病院に入院。
頭ではわかっていても、心は目の前に起きていることを受け入れることが難しいものである。いかにも具合が悪いというのならば納得いく。ところが、外見的には健康な人間が、いきなり病院のパジャマを着せられ、手首に個体識別のバンドをはめられ、きょうからこのベッドで過ごしてくださいと言われたときは、おおいに戸惑った。
が、数時間もするとすっかり自分も「病人」になっていた。この光景はなにかに似ているなと考えていたら、時代劇に出てくる牢屋である。外では乱暴狼藉を働いていた荒くれが牢屋に入るとすっかりおとなしくなって、日々の細々したことをおなじようになぞり、食事を楽しみに待つ。あれである。気がついたら、歩き方まですっかり病人になっていた。

翌5日に手術。2時間かかった。途中から目が覚めてしまい、内視鏡の画像をスタッフと一緒に眺めながら会話。今回、ポリープの形状とできた位置が特殊であったために、摘出はESD方式で行われた。最後に摘出ポリープを見せてもらったが、意外に大きくて看護師も驚いていた。

6日。一日中絶食。今回の手術で最もつらかったのが食事を摂れなかったこと。入院する日の朝から食事制限が始まったので、実質三日間はまともに食べていない。おかげで体重が2Kgも減り、自転車シーズン中であればいきなりベスト体重であるけれど、今回は体力が落ちるだけなのでふらふらになってしまった。

7日。待望の朝食が出た。病院食にもかかわらず、味噌汁を最初に口に含ませたときは感激した。どんぶり一杯のおかゆをたいらげた。

この後、トイレに行って事態は急変。下血してしまった。真っ赤に染まった便器を見たときは、目の前が真っ暗になった。夢を見ているのだろうか。いやこれが現実。医師に報告したら顔色が変わった。
内視鏡を入れる前に触診するとか、浣腸するとか言って医師や看護師になんどもお尻をさぐられる。命にかかわることなのでプライドも何も捨てるしかない。けつをまくって「なんとでもしてくれ」という気分である。

続いて内視鏡を入れて出血位置を確認し、止血することに。
このときも麻酔があまり効かずに最初から最後まで意識が明晰。医師と一緒に出血位置がどこか探すも見つからず、結局、出血は止まっていたことがわかり安堵。以後、様子を見ることに。

8日。あの後下血もなく安定しているので予定通り退院。
入院したときの手順を逆に踏んでいく。パジャマを脱いで着替える。スリッパを脱いで普通の靴に履き替える。そして最後に個人識別バンドを外してもらい、ご赦免。
外に出たときは思いっきり息を吸った。「シャバの空気」とはよく言ったものである。

当地は今シーズン雪が降らず、記録的な少雪だと言われてきたのに、皮肉なことに入院した日から連日の大雪となった。留守を守る妻が自宅の除雪に追われることになり、すっかり迷惑をかけてしまった。「あとで借りを返すから」と言ったものの、退院した日から雪が降らない。おまけに明日から暖気が入ってくるとのこと。春までに借りを返すことができるのだろうか。それが気がかりである(笑)。

とにかく入院中は予想外の事態も起きて少々慌てたが、こうして普通の生活に戻れたことはうれしい。あとで息子から、出血するのは珍しいことではないと言われ、少し安心した。

Driscoll ダブル水晶OSC 開発録その12020年02月11日 11時53分08秒

Driscoll OSCをうまく動作させることができたので、次の課題となっていた「ダブル水晶」に挑戦することにした。前回試みたときは、無負荷では発振するのに負荷をかけると停止してしまい、失敗に終わっていた。

設計仕様は以下の通り。
1)電源電圧は+12Vとする。
前回は、Driscollの特許に書かれているとおりに18Vに設定したが、これではいかにも特殊で使いづらい。12Vにできれば汎用性がぐっと上がる。
2)同調回路のLCのパラメータを変更する。
前回、トロイダルコアトランスの一次側を1uH 二次側を0.05uHに設定したが、共振周波数に合わせようとするとCの容量が小さくなりすぎてトリマーコンデンサの調整範囲を逸脱してしまった。
それに加えて、Lを変えることで発振の振る舞いがどう変化するかを観察することも目的である。
3)使用するトランジスタをBFR182とする。
Driscollの特許文書を読むと、できるだけ高いftのトラを使えと書いてあったので、これに従うことにした。I氏からは高いftのトラは適切ではないとの意見をいただいているが、とりあえずオリジナルを尊重することにした。

ということで最終の回路図は以下のようになった。

回路図ではC4は固定コンデンサとなっているが、実機では秋月電子でたまたま手に入ったトロンサー製のバリアブルエアコンデンサ(1.9pF ~16pF)を使用した。
いまでも古典的なエアバリコンが製造されているとは驚きである。

また出力に関して付言すれば、回路図ではバランス伝送になっているように書いてあるが、実機ではu-FLの同軸ケーブで出力している。将来的にはバランス伝送を実現したいと考えている。