Laptech 水晶発振器 試作2019年12月18日 21時28分16秒

振り返るとLaptechの水晶が手元に届いたのが本年の1月であった。その間、andrea_moriさんから専用基板などを分けていただいたり、必要な部品をmouserに手配したりして準備は進んでいた。ところが、あれやこれや私用も立て込んだりして棚に放置したままであった。やっと重い腰を上げて水晶発振器を組み立てることにした。

前回、発振部の動作確認までできてその後エージングに入ったことを報告した。本日、待ちに待っていたPOTATO社の74GU04が届いたので早速ハンダ付けし、これでやっと水晶発振器が完成した。

まずは完成写真。

74GU04を待っている間にオーブンも組み立てた。その姿。
andorea_moriさんのアッセンブリマニュアルによれば、このオーブンは水晶発振子を82度に保持する機能を持っている。基板の右側には発振子の周囲を楕円形に銅板が囲ってあるのが見える。マニュアルでは、配管用の銅パイプを万力でつぶすとちょうど良いと書いてある。たまたまジャンク箱に1mm厚の銅板があったので、これを切って巻き付けたらちょうど良い具合におさまった。

通電すると一発で動作した。トリマを回して発振子の頭部が82度になるように調整する。ちなみに、温度測定にはデジタルマルチテスタに付属していた熱電対を使った。ただし、測定対象が小さいので熱電対が触れただけで温度誤差が生じる。本格的には非接触式の測定器が必要になる。

andrea_moriさんの基板は、発振部とサイン波を74GU04で矩形波に変換する部分に機能が分かれていて、それぞれに独立に電源を供給するようになっている。発振部は6V, 矩形波変換部は3.3V。
とりあえず間に合わせで、発振部には菊水の実験用安定化電源をつなぎ、矩形波変換部は消費電力が極小なのでPanasonicの単三電池二本をつないだ。
この組み合わせで、まずは発振器の出力を確認する。なお、オーブンはまだ使っていない。
波形の乱れが小さいが、音が良いのかどうかはこれだけではほとんどわからない。
なお、写真では縦軸の解像度が100mV/divとなっているが、1:10のプローブを外して写真を撮ったのでこのような数字になった。実際は1V/divである。

発振器とDACはu.FLケーブルでつないだ。写真はメーカーから借用。
u.FLのコネクタは小さくて最初は扱いきれるのか不安があったが、やってみると全くの杞憂であった。

音はどうなったか。次のコラムで。

Laptech 水晶発振器 その音は2019年12月18日 22時03分21秒

電源は実験用の安定化電源と電池で、オーブンもまだつないでいない。この状態でとにかくDACにつないで音を出してみた。

基板は吹けば飛ぶような小ささなので、万力ではさんでDACの近傍に配置。念のため万力の下に百均で売っていたクッションを敷いた。通電すると幸いにしてトラブルなく動作。

矩形波変換部はハンダ付けしたばかりなので音がこなれないだろうというところは予想通り。
しかしまあ音を聴いてあきれ果てた。最近、これまでの使っていたロシア製発振器の限界を感じていたのだが、その不満のほとんどが解消したばかりでなく、予想以上の変化である。エージングなし、オーブンなし、電源もあり合わせ、その状態でこの音か。。。

いつもの聞き慣れている古今亭志ん朝の落語。いやあ、いいねえ。これこそ名人。声が寄席の奥から跳ね返ってくる余韻の響きまで聴き取れる。

続いて最近気に入っているアンドレ・プレヴィン・トリオをかける。(そういえば亡くなったのは今年であったことを思い出した)
まず気がついたのは、フェーダーの位置はいつもの通りなのに音量が大きいこと。エージング不足なので暴れているところはあるが、楽器が前に出てきて部屋中に音が充満する。生の楽器により近づいた。Laptechの水晶発振子の入手には苦労したが、本当に苦労の甲斐があった。そして、この発振器の情報を世界の皆さんと共有してくださったandrea_moriさんには心から感謝したい。

昨年、DuCULoNの試作品をお借りして音を聴いたことがあった。音の記憶は時間とともに曖昧になるので当てにはならないが、今の状態でもあのDuCULoN(試作品)に対抗できるかも。ただし、どうしても自分の息子がかわいく見えるものなので、この評価は割り引いたほうがよい。

diyAudioの掲示板には、この基板を使って試作した方の報告が載っていて、オーブンを使うとかなり変化したとのこと。それよりも大きな影響があったのが、実装方法だったらしい。外部からの振動には非常に敏感で、真ちゅう板のシャーシの底に砂を敷き詰めたときには、まるでそこに演奏者と楽器があるかのように感じたとか。

ところでdiyAudioのThe Well Tempered Master Clock - Building a low phase noise/jitter crystal oscillatorを覗いてみると、andrea_moriさんは次のバージョンを開発中で、速報ではあるが掲載されている測定値を見ると目を瞠るような結果が出ている。回路の詳細は近々明らかになるだろう。こちらも楽しみである。