GaN 単段アンプ その16(ソースフォロワ・ドライブ篇)2021年07月01日 22時02分55秒

GS61004Bは同サイズのMOS-FETに比べて入力容量は小さくなり、これがGaN素子を使うメリットの一つとなる。とはいえ、データシートによればCiss=260pFとなっていて、無視できる値ではない。これまでカスコード接続を試していたのは、このためである。

ではカスコード接続が唯一絶対の解であるかと言えば、そうとは決められない。ソースフォロワでドライブする方法もある。どちらが優れているかは、シミュレーションではわからない。実際に回路を組んで比較するしかない。

さいわいにして、ソースフォロワへの変更はそれほど手間がかからない。片チャンネルであれば、ものの20分程度で終わる。
回路は以下の通りとなった。
実装の様子は以下の通り。
まだ試作段階のため、結束などしていないからバラック状態で見苦しい。
半田付け直後はひどい音で評価どころではない。24時間後にじっくり音を聴いてみた。

予想を遙かに超えて大きな変化があった。
これを聴いてみて、始めてカスコード接続型の癖が鮮明に理解される。これまでは低音が膨らんでしまい、スピーカーボックスの裏蓋をわざわざはずし、後面開放にしなければならないほどで、これはてっきりチョークコイルを負荷にした場合の特徴なのだろうと思い込んでいた。

ところがソースフォロワ・ドライブになると、びっしりと音全体が整えられて、にじみがない。もちろん気になっていた低音の膨らみもなく、とにかく空間の構成力には目を見張るものがあって、迷うことなく、ソースフォロワ・ドライブが唯一正しい解であると思わされる。

もっとも衝撃を受けたのは、モノラル録音を聴いたときである。これまで作ってきたアンプのどれもが、スピーカーのやや前に音源を感じていた。ところがこのアンプでは、モノラル音源が頭の中に定位する。

実はこれまで一度だけ、同じ経験をしたことがある。十年以上前にCounterpoint SA-20で聴いたときだった。あのときは実に不思議に思ったことを覚えている。

考えてみると、SA-20も終段を6DJ8のカソードフォロワでドライブしている。4パラのMOS-FETをドライブするためには当然の設計であろう。しかし実はそれだけではなく、音作りに積極的に利用していたのではないか。

もしこの仮説が正しいのであれば、GaN素子といえどもソースフォロワもしくはカソードフォロワでドライブすることが必須となる。

というように妄想が膨らみ、次にはサークロトロンをソースフォロワ・ドライブに変更しようと思い始めている。
床の上にどんと置かれた黒い物体がSA-20のシャーシを利用したサークロトロンで、すでに頭の中に回路はできあがっている。暑くなる前に手をつけたいのだが、さてどうなるか。

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