Circlotron3 出てきた音は2019年08月14日 22時10分38秒

まずは証拠写真から。ヒーター定電流回路を入れ込むスーペースがちょうどぴったりあいていた。
内部の様子。終段GaNのG-S間抵抗VARは基板の裏側に置いたので写真には見えていない。
このアンプの立役者であるGaN (GS66502B)がいかにすごいのか、せめて写真で見てもらって目に焼き付けていただきたい(いらぬお節介か)。
それで音である。
これが同じアンプかと思うほど、手を入れる前とは全く違う。ヒーターの定電流回路とVARを同時に入れ替えたのでどちらがどのように利いているのかはわからないが、おそらくVARの効果であろうと推測している。

正直に言えば、これを超えるアンプを作る自信がなくなった。繊細でありながら雄大。重心が沈み込むという形容があるけれど、もはやそんな評価は意味がないように思うほど楽器がそこに実在する感覚が強く、演奏者の息づかいがせまってくる。

6年前、ピアノの音を再生しても子供のおもちゃのピアノにしか聞こえなかった。それからひたすらグランドピアノの音に近づくことを目標にしてきた。それがやっとかなったように思う。
これは神経を張り詰めながら耳をそばだてて聞く音ではない。ただただ身も心も、からだ全体に染み渡っていく。それに身を任せるだけ。そんな音である。

これでもまだエージングの途上である。落ち着いたらどうなっているのだろうか。

Circlotron3 ついに完成2019年08月14日 20時56分26秒

前回からの変更点は以下の通り。

(1)WE420Aのヒーターを定電流点火とする。そのため、専用トランスを一台追加。整流は理想ダイオードブリッジ、電流制御素子はもちろんGaNである。

(2)GaNのG-S間抵抗を2.2KΩ VARに入れ替えた。

(3)終段のフローティング電源の仮想グランドとなる510Ωを 100Ωに変更した。というのは、どうしてもコモンモードノイズが乗り、高能率スピーカーでは無視できないほどの大きさで聞こえてしまうからである。

これで回路はフィクスとするので、回路図を掲載する。
まずはメインアンプ部から。
続いて初段の電源関係。
続いて終段の電源とプロテクター回路。ただし、プロテクター回路については、絵だけで詳細は省略してある。
最後にヒーターの定電流回路。
それで結果はどうなったのか。そのことは次のコラムで。

Circlotron3 改版2019年08月02日 19時55分50秒

猛暑のニュースが連日報じられるなか、当地も負けずに暑い日が続いている。先日は、三日連続熱帯夜が続き、観測を始めて以来の記録になったのだとか。我が家にはエアコンがないので自然冷房が頼り。熱中症にかからないよう、水分補給はこまめに。。

こうなると半田ごてを握ろうという気持ちにはなれない。ああして、こうしてというアイデアが頭に浮かんでも前に進まない。

それでも昨夜はとうとう意を決して半田ごてを握った。
理由はひとつ。Circlotron3の音が堅いのである。最初はエージング不足のせいだろうと高をくくっていたが、いつまでたっても変わらず、これは根本的に何か問題があることに思い至った。

実を言うと完成直後から気になっていたことがあった。アイドリング電流を目標値のIo=800mAに設定しようとすると、GS66502Bのゲート・ソース間電圧は Vgs=2.7Vとなる。そのためにはWE420Aのプレート電流が1.35mAでなければならない。Vp=300Vでなんとか流れたが、この真空管の限界を超えている。おまけにカレンミラー素子の電力消費量も大きくなり、発熱のためドリフトも無視できなくなる。おそらくこれが原因で音が堅くなっているものと推測。

対策は簡単である。G-S間の抵抗を1KΩとしていたものを2.2KΩにすればWE420Aのプレート電流は613uAに抑えられて、余裕のある動作が期待できる。おまけに発熱も劇的に抑えられるのでドリフトも少なくなるはず。

肝心の抵抗のことだが、ここはどうしてもVARにしたいところ。すでにTexas Componentsには注文してあるのだが、いまだに工場から出荷されずバックオーダーに入っているようだ。と言っても、到着を待ちながらこのまま我慢して聞き続けたくない。手持ちの抵抗で応急措置をするしかない。音に癖があって使いたくはないのだが進抵抗を持ち出した。

抵抗を入れた後、アイドリング電流と出力のオフセット調整となる。アイドリング電流は680mAとした。オフセット調整は非常にスムースでドリフトがほとんどなく極めて安定している。これには驚いた。
B2電圧は300Vから160Vへと大幅に落とした。それにともないVp-k電圧は157Vとなった。

さて音はどうなったか。予想は的中。あれほど耳に突き刺さり、心にも突き刺さった音の堅さは消散し、音のエネルギーが低い周波数域に美しく広がる。音に芯があって、Amazing Circlotronで感じた抑圧感などみじんもない。自由でありながら荒れところや奔放なところもなく、静かである。音に独特の粘りのようなものを感じるのは初段にWE420Aを採用したためであろうか。あるいは、出力段に採用したGaN素子(GS66502B)の色づけが非常に少なく、初段の良さが存分に発揮されているためと考えることもできる。 とにかくこの音は味わい深い。一年間苦労してきた甲斐が十分にあった。
こうしてCirclotron3本来の実力が発揮されたわけだが、これを進抵抗ではなくVAR抵抗にしたらどんな音になるのだろうか。

今後の作業予定。
  1) VARに入れ替え
  2) WE420Aを定電流点火にする(すでに回路は完成済み)

Circlotron3 順調にエージング中2019年07月15日 10時22分37秒

家にいるときは毎日3〜4時間電源を入れてエージングをしている。最初は音が堅くて、正直言えば「音楽を楽しむ」ことなどほど遠い状態で心も暗くなった。音がうわずっていると言えばいいのか、音のエネルギーが高い方に偏っている。でもこれはエージング不足の典型的な症例なのでじっと我慢するしかない。

そのようにして忍耐してきたところ、最近になってやっと音のエネルギーが低い周波数域にも広がり始め、心を揺り動かすような音楽が奏でられるようになってきた。とはいえ、完成までにはまだまだ先が長いと感じるのも事実。「ゴムまりのように弾み、かつ風のようなコントラバス」にはまだ一歩届かず、どこかまだ詰まっている。秋の風が吹く頃にはそうなっているだろうか。

気になるCIrclotron3の音の印象について。
ひとことで言い表せば「透明」であろうか。かつてのアナログレコート時代にはMCカートリッジのDL-103を使っていたことがある。あの雰囲気を思い出した。特別な色づけをほとんど感じることなく、素材の味をそのまま出してくる。でもまるで研究対象として「からからに干からびて」標本にされたような音というのではなく、みずみずしさを保ったまま眼前に提示する。3wayのスピーカーであるのにも関わらず音がばらばらになることなく、まるでスピーカーの存在がなくなるかのような鳴り方。
初段にWE420Aを配置し、終段のパワー素子にGaNを用いたことがこのような音となっているのだろう。初段から終段へはカレントミラーで折り返す方法をとったことが音に対してどのような影響を及ぼすのか一番心配していたが、この音を聴く限り成功だったと言えるかもしれない。
この手法は、Dynaco MK3(改)や300Bシングルアンプにもそのまま応用できる。

さてアンプ内部の配線のことだが、これまで実験に実験を重ねたせいでお世辞にもきれいな状態ではなかった。おそらくこれ以上大きな手直しは入らないので、最後の仕上げとしてレーシングをしてみた。繊細な人ならば定規を当てて糸の間隔をそろえて、美しさを楽しもうとするのだろうが、私の場合はご覧の通りのずぼらな処理である。

TSA1765について2019年06月26日 20時29分33秒

増幅部のカレントミラー部に用いたトランジスタがTSA1765という全く耳慣れない品種である。かくいう私も全く知らなかった。製造メーカーはTaiwan Semiconductorでその名の通り本社は台湾にある。なぜこれを選んだか。

このカレントミラー部には、余裕を見ると500V以上の耐圧と数ワットの最大コレクタ損失が必要である。これを満足するpnpトラはinfineonでも製造している。しかし耐圧や最大損失だけで選ぶことができない。製造プロセスも大切な要素である。製造プロセスの違いで音も変わることはK式アンプで何度か経験してきた。なのでここはEpitaxial Planarにこだわる。ところが意外にも製造プロセスまで公表している品種は非常に限られていて、TSA1765くらいしかみつけられなかった。結局、入手性もよいのでこれに決めた。

実は手元には2SA1967があるのだが、これはTriple Diffused Planar(三重拡散プレーナ型)で、音は鈍重であると言われている。