GaN 単段アンプ その12(完成篇)2021年05月03日 11時38分35秒

前回のシリーズ11から、また手を加えてみた。
気になっていたのは、帰還抵抗に並列接続しているコンデンサで、一応5pFとしてあるけれど、これはほとんど効いていない。もう少し落ち着いた音を目指したいと思い50pFに変更してみたかったのだが、手持ちのコンデンサの関係からとりあえず120pFにしてどうなるか音を聞きたいと考えた。

ここで問題発生。またもや発振してしまった。
おまけに、「大事に使わなければ」と言っていたGS66502Bが壊れたときはがっくりと肩を落とした。

なぜこうも簡単に発振するのか。最初は回路構成にまずさがあるのかと思っていたけれど、まだ何か見落としがあるのではないか。じーっと考えた。

この考える時間が大切である。苦痛ではあるけれど、あとで克服できたとき、大きな喜びに変わる。その喜びがあるからこそ、妻から「作っては壊し、作っては壊しをしているばかり」と言われようが、いまだにアンプ作りを止められないのだろう。

沈思黙考の末、思いついたのは「共通インピーダンス」である。
これまでNFBのグランドラインは、基板のもっとも近いところという理由で、GaN(Lower side)のバイアスグランドに直接接続していた。基板のグランドからワイヤで平滑コンデンサのマイナス端子と結び、そこをこのアンプの一点アースポイントとしていた。

直流という視点から見れば、これで問題なく動作する。しかし交流という視点から見るなら、バイアスグランドとNFBグランドが混在しているので、そこに共通インピーダンスが生じる。本来NFBは、スピーカーのグランドから戻すべきだから、ここに問題があるのではないか、という推測である。

本当にそうかどうかは、実機で検証することになる。グランドの接続状態がよくわかるように回路図を書き直した。

壊れてしまったGS66502Bの手持ち在庫は枯渇してしまったので、カスコード接続の上側、下側ともGS61004Bに入れ替えた。多少、入力容量が大きくなるが動作はするはずである。バイアス調整もスムース。

結果はドンピシャリ。発振の兆候はまったくなく、安定に動作する。
ちょうどよいタイミングでオーディオアナライザが復活。特性を測定してみたら、予想外の結果が出てきた驚いた。そのことはまた稿を改めて書く。

回路としてはこれ以上ないほどシンプルでありながら、まさか共通インピーダンスがこれほど問題になるとは。熟練者には基本中の基本であろう。やはりアンプ作りもこのような単純な回路から始めて基礎を学び、一歩一歩複雑な回路へと進むべき。へなちょこアマチュアはそこあたりをいい加減に済ましているので、ときどき痛い目に遭う。

コメント

_ Bunpei ― 2021年05月04日 13時10分33秒

GaN HEMTは壊れやすいのがほんとうに玉に瑕ですね。私も過去にいくつか壊しており、壊すリスクを覚悟した上でそれを許容できる対象または人であるかを見定めてから、適用またはお勧めしております。しかし、リスクに見合ったリターンは充分あると感じているのですが。
ところで、最新の回路図を拝見していて、浅学ゆえ確信を持って理解できないところがあり、ご教示いただけますれば幸甚です。前段からのバランス入力の端子は、1:GNDをVR1のGND側に、2:HOTを入力トランスの+側に、3:COLDを入力トランスの-側に接続されていると読み取ったのですが、それで正しいでしょうか?前段の出力回路の形態・各オーディオ機器のアース接続の考え方に依存する話かと思うのですが、前段とのGNDをわざと接続しないという方法も前段がディジタル回路を持つDACの場合、絶縁という観点からはありかと想像しました。しかしプリアンプやスライダーボリュームが繋がっているとまた違う話かもしれません。そのあたりいかがでしょうか?

_ Bunpei ― 2021年05月04日 13時23分10秒

回路図を拝見し、入力トランス、定電圧用発光ダイオード、出力側カップリングコンデンサ、電源側最終部SiCダイオード、電源チョークコイルの各部品の個性が最終的な音質に大きく影響していそうに思われました。
釈迦に説法の話で申し訳ございませんが、それらの部品を試行錯誤でお取り替えになるとまだまだ音質的な伸び代または、左右のバラつきを抑える余地がありそうに思えた次第です。
これは単なる思いつきなのですが、例えば、ダイオード類を全てGaNに置き換えることは不可能でしょうか?また、トランスとチョークコイルをファインメットコアのものにすると確実に音質は向上するのではないかと推測します。高価ではありますが、もし試してみるということであれば、正味の価格で特注品を作って下さる会社を御紹介できます。

_ Kon ― 2021年05月10日 22時12分59秒

Bumpei様
迷走ばかりしていてどこに行くのか本人もわからぬブログを辛抱強く応援いただき、ありがとうございます。お返事が遅くなりました。

ご質問の件ですが、前段につながっているラインアンプがバランス出力です。そこからEckmillerのバランスフェーダーを経由してパワーアンプに入力していますので、こんな形になっています。
ちなみに私のシステムでは、ソースにもよりますが、フェーダーの減衰量は-30dBから-35dBあたりになり、ゲインは十分足りています。
単段アンプでこれだけのゲインが確保できるのは驚きです。

2番目のコメントでご指摘の通り、このアンプは各部品の品質が大きく影響してきます。これまでは正常動作するかを確認するのが主目的でしたので、入手しやすい部品を集めて作っています。今後は、そのあたりを詰めることになろうと思っております。

実を言えば私もファインメットも妄想しておりました。ただ、今は空芯コイルの作り直しが先決であろう思っておりますので、そのあたりのめどがたったときにお願いするかもしれません。ご親切なお申し出に感謝いたします。

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