OSCと矩形波変換回路にまつわるトラブル覚え書き2021年01月16日 20時30分58秒

ことの発端は、DDCが不調となって盛大にノイズを発生するという現象(最近のはやりのことばなら事象と言うべきか)から始まった。不具合を引き起こすようなきっかけが明確であれば対策もしやすいのだが、今回はまったく思いつかない。とにかくある日突然にゲリラのごとく出没し、おおいにとまどった。

まず最初に疑ったのがOSCの発振停止。しかしオシロスコープをつなぐと、いつもきれいな正弦波が見えて、これはシロとなる。(これが罠であることが後で判明する)

次に疑ったのが定電圧回路。出力の波形を観測すると、100Hzののこぎり波が見えて、確かになにか不具合がある。これを機会に、制御素子をDN2540からGS66502Bに入れ替えた。しかしそれでもDDCの不具合は起きる。これも直接の原因ではなかった。

いつものようにここで迷路にはまり、すったもんだしてやっと真の原因にたどり着いたときには、調査開始から数週間が経過していた。

長い話を短くすれば、原因はOSCの発振停止だった。OSCの出力は、SMAケーブルを経由して矩形波変改回路のLTC6957に入力される。このときOSCは負荷(LTC6957)の影響を受けるのだが、ずっと正常動作していたので、なにも問題がないと思っていた。

しかしOSCが時間経過とともに微妙に特性が変化して、最適動作点が移動し、その結果発振停止に至ったものと推測。ちなみに50Ωターミネータでは安定して発振するので、OSCだけをオシロスコープで見たとき、原因がつかめなかったわけである。電源が入っていないLTC6957でも問題が起きないのだが、電源を入れたとたんに不安定になる。

再度OSCの調整をし直したところ、動作が安定した。いまはその状態でフタを閉じている。しかしいつかまた再発するだろう。恒久対策を施す必要がある。

こういうことに関しては高周波屋さんが詳しい。「トロダル・コア活用百科」を開くと、OSCが負荷の影響を受けにくくするために、例えば3dBのパッド入れることが明記されている。そうだったのか。調べると秋月電子でも売られている。後で買っておこう。

ということで原因は特定できたのだが、試行錯誤の途上で大きな発見があった。LTC6957の出力についてである。データシートには次のような回路が掲載されている。(画像はデータシートから)
これを見ると出力はなにもターミネートされず、そのままDDCの外部クロック端子につないでよいかのように解釈できる。それでそのとおりにしていた。

しかし今回の不具合調査をしているうちに、もしかしてこれも関係があるかもしれないとの仮説を立て、91Ωでターミネートしてみた。これがその様子。丸印で囲んだところ。
結論から言えば、これは不具合には関係がなかった。しかし、出力波形は、前回の記事にあるとおりにオーバーシュートやアンダーシュートはほとんどなくなり美しい波形に大きく改善され、音も大きく変わった。これまで発振回路ばかりに注力していたけれど、矩形波変換回路がここまで音に影響するのかと今更ながら驚くとともに、オーディオの奥の深さを思い知った。

励磁型スピーカー電源 完成2021年01月17日 21時55分51秒

やっと完成した。
さきほど、通電試験をして問題がないことも確認した。相手が33Hのフィールドコイルなので、電源オン・オフ時に異常が起きないかを最も心配したが、杞憂だった。

まずは概観から。
後ろの様子。今回初めてNEUTRIKのスピコンを使ってみた。格好だけはよろしい。
通電試験の様子。メーターの目盛り単位がKVとなっていてびっくりするが、もともとはフルスケール1mAの電流計なので、これに外部抵抗をつけてフルスケール100Vの電圧計として使っている。写真の状態では80Vと読む。
音はまだ出していない。明日までの楽しみにとっておく。
最後に回路図を掲載。至極単純でなんの工夫もない。ただ、発振しないように出力インピーダンスが極端に高くならないようにはした。性能も大事だが、安定に動作することも大切だ。そこあたりはだいぶ丸くなった。
出力にダイオードがあるのは、フィールドコイルからの逆起電力で定電流回路が壊れないようにするための安全装置である。
500Ωの多回転ポテンショメーターで電流値を設定するようにした。非常にスムースで使いやすい。
整流用ダイオードと制御素子にはGS66502Bを使った。そして普通はフィールドコイルには多容量のコンデンサを並列接続するところを、510pFのマイカコンデンサで済ましていることも特徴である。ただ、音がどうなのかはこれからの判断となる。