試作12号 その4(水晶発振子 4個シリーズ接続)2020年11月12日 21時55分52秒

調整はかなりセンシティブで、Qが高くなっていることが肌でわかる。
余談であるが、調整用ドライバーは写真にあるセラミック製ものを使った。これを入手した経緯は偶然である。妻の友人が30年近く住んだ家から引っ越しすることになり、妻が荷物の片付けを手伝っていたとき、そこの家のご主人が「もう使わないから」と言ってくださった工具箱から出てきたもの。欲しいと思っていたものがこんな風に手に入るとは、実に不思議である。物事が一気に進むときには、こんなことも起こるのだろうか。
さて肝心の出力波形である。今回はよく確認しておく。
まずはオシロスコープの観測波形から。
非常に美しい正弦波である

次にスペアナ波形。1MHzスパンでは側帯波は全く見えなかったので省略。
しかしスパンを1KHzにしたとき、次のような波形となった。中心周波数の左右に「側帯波」が見える。これが音にどう影響するか。

そして最後に10MHzから300MHzまでスパンさせたときの基本波と高調波の様子。これを見たときは驚いた。一次波と二次波は見えても、三次以降がまったく観測されない。何かの間違いかと思って、三次波(135MHz付近)をスパンさせて目をこらしてみたが、ノイズ以外は何も見えなかった。
マーカーでピーク値を測定してみると、一次波と二次波の相対差は70dBmで、これをもとに計算するとひずみ率は0.03%だった。ほかの発振器の性能がどうなのか詳しくないが、かなり低い値であることは確かだろう。

さて、音はどうなったか。
試作11号機から大幅な進化を遂げた。
耳に聞こえないような空気の動きさえも感じ取れる。よく「重心が低い音」とか、「よく沈み込んだ音」という表現がある。しかし、これは全くふさわしくない。コントラバスを生で聴いて、「重心が低い音」と言う人はいないだろう。出てくる音が自然の音により近くなったのだからもはやそのようは形容ができないわけである。とにかく何を聴いても新鮮で、楽器の姿形はもとより、演奏者と演奏者の間、ホールの空間、すべてがまるで目に見えるかのように判別できる。まさかここまで変化するとは、作った本人が驚いた。とにかく何を聴いても楽しい。音が身体にしみわたる。

もう一つ。いままでスピーカーのせいで低音がこもっていたのかと思っていたら、実は発振器のせいであったことがわかった。

この音を聴いていたら、アンプを作る意欲がますます湧かなくなった。オーディオ全体で見ると、アンプで変わるのはごくわずかでしかなく、結局全体の品位を決定づけているのは発振器ではないのか。
これまでDACによる音の違いを追求していたときもあったが、それも興味がなくなってしまった。DACを比較するなら発振器の性能まで含めなければほとんど意味がないと思うようになったからである。
今回のことは、私のオーディオ人生の中でかなり大きな事件となったようである。

コメント

_ Bunpei ― 2020年11月14日 23時11分34秒

おめでとうございます!ついにやりましたね。
こうなると、位相ノイズを測定してみたくなりませんか?

_ Kon ― 2020年11月17日 12時59分58秒

Bunpei様
ご声援ありがとうございます。
思い返せば、DuCULoN(試作機)に刺激を受けてこのプロジェクトが始まったようなものです。あれがなかったなら、市販の水晶発振器で満足していたでしょう。

位相ノイズがどんなふうになっているのか、大いに興味は湧くのですが、まだまだ不勉強であちこち抜けがあるように思っています。こんなレベルで位相ノイズがどうのとか言ったら、高周波のプロの方から鼻で笑われそうです。

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