試作10号 その2(水晶発振子 3個シリーズ接続)2020年06月17日 20時20分37秒

回路図だけでは実感が湧かない。そこで実機の様子を公開する.
まずは外観から。
ご覧の通りにAMPHIONのマークがある。これは、以前にK様から譲っていただいたもので、造りが精巧で手に持つとずしりと重い。これだけでもすごい値段だろう。おかげさまで我がオーディオルームのなかで最も高級感あふれた存在になった.
次に電源トランス。ヒーター電源とB電源に分かれている。
少しカメラを引いて、トランス周辺の様子。
ヒーター電源の整流には理想ダイオードブリッジを使っている。当初、どこに実装するかでちょっと悩んだ。結局、トランスを載せている基板の裏側に張り付けることにした。組み立ててしまうと表に見えない。
B電源の平滑回路には15Hのチョークを入れた。ふつうならシャーシに取り付け穴を開けてネジ止めするだろう。ところがAMPHIONのシャーシ厚が5mmもあるので、簡単に穴開けできない。なんとか既存の穴を利用することにしたので、ちょっと斜めになっている。
続いて電源回路の全体。向かって左側がB電源、右側がヒーター定電流回路。基板の右上側にGaN素子であるGS66502Bが見える。
基板からもっと上側に目を向けると、白いものが見える。発振回路のメイン基板は、このポリエステル布に包んでいる。
メイン基板を横から見る。黒いシールドの中にはWE404Aが入っている。
最後にメイン基板の裏側を見る。
5月26日から24時間通電をしているので、すでに500時間経過している。

試作10号 その3(水晶発振子 3個シリーズ接続)2020年06月17日 21時18分50秒

音はどうか。前回も少し書いたが、試作9号から大きく変化した。
最も最初に感じたのは、「真空管の音」ということだった。

半導体アンプと真空管アンプの音の違いについては、いまや誰も異論をはさむ人はいない。しかし発振器に使う増幅素子の違いがアンプと全く同じように音に反映されるとは、ほとんど誰も考えたことがなかったのではないか。

これは出てくる音を聴いて初めてわかることであって、半導体素子を使った発振器だけ聴いていたのでは絶対にわからなかっただろう。

いま「ほとんど誰も考えたことがなかった」と書いたが、実を言えばあまり正確な表現ではない。eBayではabbasaudioさんが真空管式クロック発振器を出品しているし、少し昔になるが海外のAH!オーディオが2004年頃にすでに発表していた。しかし、AH! オーディオに関してはなぜか続報がないのは残念である.


話を元に戻して、WE404A+Laptech水晶発振子が出す音の特徴。
最もわかりやすいのはフェーダーの位置が変わったことである。同じアルバム、音源をかけているのに音量をそろえようとすると少なくとも3dBほど絞らなければならない。
次にわかるのは、音量を絞っても音痩せがなく、小音量でも満足度が高いこと。音に「重量感」が満ちていて、色彩感が濃い。私がWestern Electricに抱いているイメージそのままである。

これまで発振器といえば、なによりも低位相雑音が至上命題であって、それ以外の評価基準はないに等しかった。もちろん位相雑音は大切な評価基準であることは間違いない。しかし、ことオーディオの世界では、それだけでは語り尽くせない何かがあると感じる。
この音の特徴をどう表現したら良いのだろうか。どこかで誰かが書いていたような気がする。「アナログでもデジタルでもない。これは第三の音である。」

20年ほど前、デジタルに宗旨替えしたときは、LPレコード・アナログオーディオの音にいかに近づけるかが目標であった。確かに手を加えるたびに近づいてきたという感触はあった。

しかし今回は違う。私の中にあるアナログの音の基準を飛び越えてしまった。音が良いとかどうかはもうどうでもよい、といったら語弊があるだろうか。とにかく人間の魂に語りかける暖かさがある。
Bupei様から「どんな色彩感でしょうか」という問いかけがあった。
我が家の食卓テーブルの照明は、30年前からPHランプが気に入ってこれを使っている。何年か前に松下電器が電球の生産を止めると聞いたときはがっかりした。もちろんいまはサードパーティ製が出回っているのでそれを使っている。LED照明全盛の時代にこれにこだわるのは、まさに電球でしか出せない色彩感があると信じるからである。

半導体発振器がLED照明なら、試作10号機は色彩感に富む電球色。そんな風に表現したい。人が心を込めて歌う歌が、聴くものの心にしみわたる。

すばらしい発振器に出会った。もうルビジウム発振器が欲しいとは思わない。妄念が一つなくなっただけで生きるのがずいぶん楽になる。とは言え、妄念が完全になくなったわけではないので、本当に楽になるのはまだまだ先だろう。