息子の結婚式2019年11月05日 21時46分07秒

11月某日、ひとり息子の結婚式が執り行われた。
他人の結婚式にはなんども出席したことがあっても、自分の家族は初めて。一ヶ月前からそわそわしてきて、結婚式前夜は緊張のせいでなかなか寝付けなかった。

息子は大学を卒業して医療関係の職場に就いたのだが、実際に働いている現場はこれまで見たことがない。披露宴で伺ったいろいろな方の証言から、息子が普段どんな働きぶりをしているのか初めて知った。
父親として誇らしいと思っていたら、上司から「ルーズなところが少しあるので」と祝辞を賜り、思わず赤面した。妻からは「あなたに似たのです」と断言され、返す言葉もない。

新郎の父の最大の役目は、宴席のトリを締めくくること。これがコケたらすべてが台無し。当たり前だがこの種の挨拶は今までしたこともないし、普段言い慣れない言葉のオンパレードだから大変困った。が、とうとうその時間が来てしまったのでマイクの前に立つしかない。

頭の中におおよその原稿はたたきこんでいたので、ほとんど言いよどむことなくなんとか締めくくった(汗)。妻からは150点満点との評価。後から息子も「よかった」と言ってくれた。

というわけで、二泊三日の旅を終えて昨夜帰宅。
ビールを飲みながら、ああ今自分は小津安二郎の映画に出てくる父親なのだなと感じる。若いときは、「じじくさいマンネリ映画」と思ったこともあったが、この年になって初めてあの映画のすごさがわかってきた。

東京物語の前半は、老夫婦が尾道から東京に住む息子と娘の家、そして戦争未亡人となった嫁(原節子)を訪ねていく場面である。そのなかで、息子も娘も父母をなんとなく邪険に扱いながら、嫁の思いがけない親切に義母(東山千栄子)がうれしくなって、自分の時計を形見として渡すシーンが印象的だった。

以前は、血のつながった親と子がよそよそしい関係になることが不思議だった。しかし、いまはわかる。息子とは別にけんかしているわけでもないし、どちらかと言えば関係は良好な方だとは思う。しかし、いったん息子が嫁さんを迎えた時点で、親でも踏み込んではならない二人だけの領域ができる。それでいろいろ気を遣うことになる。

それはなんとなく寂しいことだが、こうして親がフェードアウトしていかなければ、息子たちは息苦しくてしょうがないことだろう。
とにかく息子夫婦には幸せになってもらいたいと心から願う。