悲報 GaNが販売制限扱いに2019年02月04日 23時00分18秒

GS61004Bを買おうと思って先ほどMouserを覗いてみて、目を疑った。「販売制限」と表示されているではないか。MouserのUSAサイトではそのような表示はされていないが、日本国内からアクセスすると「Not Available Online」となってアメリカ国外への持ち出しができない。

つい2週間前までは自由に買うことができたのにorz
一応、日本国内では丸文が販売代理店になっているが個人で買うのは難しいだろう。
しかし、どうして突然にこんなことになったのか。
もしかして戦略物資に指定されたのだろうか。世界中見回しても、GaN Systemsが2位以下を大きく引き離してトップを独走していたので、ありそうな話である。

こうなると、手元に残っているGaNがWE300B並の貴重品に見えてくる(大げさ)。大事に使わなければ。

かえすがえすも、Circlotron2プロジェクトでGaNをバンバン飛ばしてしまったことが悔やまれる。その話はまた後で。

Circlotron2 その4 挫折編2019年02月06日 22時52分51秒

Circlotron2プロジェクトは、紆余曲折、迷路をさまよい、何度も壁に突き当たり、最後に私の検討不足が露呈し、苦しみの中で自然の真理の前に謙虚にさせられ、多くのことを学ぶことになった。

問題の現象としてはいくつか発生したのだが、突き詰めれば原因は一つであった。

初代Circlotronは終段の素子にGS66502Bを使っていた。今回、Circlotron2プロジェクトでは、これをGs61004Bに変更した。値段が安いことと、大電流が流せること、Mouserで在庫していて入手が容易だったことなどが理由である。

ところがこれがいけなかった。あとからデータシートをじっくりと眺めていてやっと気がついたのだが、Ids vs Vgs変化曲線の温度依存性に大きな差があって、同じ土俵に載せて議論するレベルではなかった。

まずはGS66502Bのほう。矢印で示したIdの差はおよそ3Aと見える。
続いてGS61004B。こちらは、15A程度はありそう。
つまりGS66502Bを使う限り、電源オン時のラッシュカレントは比較的コントロールが容易であるが、GS61004Bを使おうとするなら、厳重な対策をしなければならない。対策を怠れば、一瞬にして安全動作領域をはみだし、破壊される。

これがわかるまで何個のGaNをこわしたことか(涙)
Mouserで販売制限がかけられたことを知り、大事に使わなければと誓ったその日にまた飛ばしてしまったときは青くなった。

結論。
GS61004Bを使うことは諦めて、GS66502Bに戻すことにする。幸い、あちこちからかき集めればなんとか2ペアは用意できそう。

何事も身銭を切らないと自分のものにならないと言うが、今回は痛かった。

ところで、初代CirclotronにGS66502Bを使ったことは、今から思えば幸運だった。あそこで今のような事態に遭遇していたら、半可通の私はさじを投げてしまい、GaNは終段には使えないという結論にしてしまっていただろう。

きちんと基礎をやってきた人なら、こんな話は一番最初に検討すべきイロハのイと心得ているはず。ずっと雑誌の制作記事をコピーしてばかりいて、自分で学ぼうとしなかったつけが回ったということらしい。

Circlotron2 その5 臥薪嘗胆編2019年02月20日 20時49分44秒

いまのところ日本国内では入手が困難になってしまったGS66502B。こうなると手元にあるものを大事に使い回しするしかない。

ちなみに、Mouserが販売制限をかけているのは当初、戦略物資に指定されたのかと勘ぐったが、共産圏では何事もなかったかのように販売されているので、某氏のご指摘の通りRohmとの契約が関係しているのだろう。

ということで、ラインアンプの主電源とKT88pp(3結、無帰還)のバイアス電源の製流用に使っていたGaNを外し、Infineonの第6世代SiCダイオード(IDH10G65C6)に入れ替えた。
下の写真はラインアンプ。
こちらはKT88pp。

こうして2ペアを確保したのだが、まだ本体に組み入れていない。というのも貴重な2ペアをこれ以上壊したくない。それで保護回路の設計と動作確認にたっぷりと時間をかけてきたのが、やっと先ほど完成した。その話はまた次の記事で。

Circlotron2 その6 鉄壁防御編2019年02月20日 21時12分35秒

保護回路

目標仕様
1)監視すべき項目
  出力のDC検出
  過大電流の検出
2)異常時検出時の動作
  終段GaN素子のバイアスをカットオフする
  終段の電源をオフにする(将来オプション)
3)そのほか1
  初段の真空管がウォームアップして動作が安定するまでの時間、終段のバイアスをオフのままとする
  一定時間経過後、終段バイアスを活性化する
4)そのほか2
  電源オン時のラッシュカレントによって整流ダイオードもしくは理想ダイオードブリッジが破壊されるのを防止するために、一定時間が経過してコンデンサにある程度チャージができた時点で整流ダイオードが活性化するようにする(将来オプション)
5)構成要素
タイマー回路
論理回路
リセット回路
DC検出回路
過電流検出回路
LEDおよびフォトカプラ・ドライブ回路
電源回路


これらの仕様を満足させるべく、頭をひねって回路を考え、ひとつひとつ動作検証する。論理回路は久しぶりなので教科書を引っ張り出してくる。回路図を見てうまく動くと思っても、実際に回路を組み上げて電源を入れてみるといくつか不具合が出てくる。そのたびに対策を考え完成度を上げてきた。論理回路は電源オン時のリセットがきちんとかかかることさえ気をつければ比較的簡単。なにしろ動作クロックは30Hzで、亀のように遅い。小学生レベルである。

しかしアナログ動作となる検出回路は意外に手こずった。インピーダンスが高いところをきちんと対策しないとうまく動作しなかった。手をかざしただけで異常信号を検出してしまうときは頭の中が「??」となったが、原因がわかり対策をしたらなにごともなかったかのように安定した。

保護回路基板の全体。できあがると結構な規模になった。大きめの基板を使ってよかった。抵抗とコンデンサ類は電解コンを除いて表面実装タイプ。
裏面の様子。自分で作っておきながらおそらく数週間後には意味不明になるだろう。
今回の目玉は過電流検出センサーにホール素子ACS712を使ったこと。この素子の電圧出力をコンパレーターに入れて、電圧比較をして基準より大きくなった場合に過電流検出信号を出す。
初めて使う素子だったが何の問題もなく一発で動作した。

この素子にはFIL端子があって、ここにCをつなぐことでバンドパスを設定できるようになっている。手持ちのコンデンサの関係でC=100nFとしたのでおよそ1KHzとなってやや狭帯域となっている。設定値の根拠についてはまたいつか触れるかもしれない。

サークロトロンは左右チャンネルで4個の独立した電源となるので、過電流検出センサーもこれに応じて4個となる。
右上に見える半固定抵抗器で検出電流の閾値を決める。いちおう3Aとしているが、実際に動作させてみて支障があるかどうか検証する必要がある。

Circlotron2 その7 理屈編2019年02月20日 22時26分58秒

過電流検出の閾値は、GS66502BのSOA(安全動作領域)から判断することができる。(グラフは同データシートから)
パワー素子にかかるVdsは20Vなので、図の矢印でしめしたとおりに連続で流せる電流の最大値は3Aと読み取れる。

これよりも大きな電流を流す場合にはパルス波に限られ、電流が大きくになるにつれて短時間しか許されなくなる。

過電流検出センサーのバンドパス(通過周波数帯域)の上限をおよそ1KHzとしたのもこのことが関係している。1msecよりも短いパルス波ではなく、DCに近い周波数域の過電流を検出することがGaN素子を守ることにつながる。以上の考察からDCにおける許容最大値である3Aを過電流検出閾値をとすることにした

と、机上の理論を展開するのは簡単であるが、実際に通常動作に影響を与えず、異常時だけうまくGaN素子を保護してくれるのかは実機での検証が欠かせない。