Taylor型レギュレータの動作原理について2018年12月10日 16時51分03秒

Taylor型レギュレータのオリジナルは、その名が示すとおりにP. L. Taylorが1973年にWireless World誌に書いた記事に遡る。その存在を教えてくれたのは、Tube CAD Journal であった。ブログ主のJohn氏はTaylor cathode followerと名付けている。

他人と同じことはしたくないというへそ曲がりの私は、早速パワーアンプに応用することを考え、2015年10月に実用化を試み、一定の成果を上げた。ただいまから思い返すと、制御素子に使ったMOSFETが最適化されておらず、そのため躍動感というところではもう一歩という印象であった。
しかしTaylor型の持っている素質は並々ならぬものがあることは確かで、これをレギュレータに応用できるのではないかと考えた。

回路図は一見非常に複雑に見えるので、こんなものを作りたいと思う方はいないだろう。しかし、奇特な人が世の中にいないとも限らないので、動作原理を説明しておく。原理は非常にシンプルでこんなもので本当に大丈夫と拍子抜けするほどである。
まずは冗長な部分をそぎ落とした、基本回路図を見ていただく。このままでもシミュレーションにかければきちんと動作する。
基本回路は、Taylor cathode followerそのものである。ポイントは以下の通り。
1) アイドリング電流はV2とR1で設定する。この回路ではおよそ140mAに設定されている。
2)出力電圧はV3で設定する。正確には V(OUT)=V3-Vgs(U2)である。

一般のレギュレータは出力電圧の変動をフィードバックさせて制御する。しかし、このレギュレータは電圧のフィードバックはない。その代わりに電流をフィードバックさせて制御する。その役割を担っているのはQ1とU2である。

理想状態を考えれば、負荷による消費電流が変動したとしても全体のアイドリング電流はU2で一定に制御される。よって、U1を通過する電流も一定なのでVgs(U1)も一定となり、出力電圧は一定に保持される。

この回路に魅力を感じるポイントはもう一つある。これまで抵抗がいかに音を悪くするかさんざん経験してきたので、できるだけ使用する抵抗を減らしたいという思いがずっとあった。Taylor型レギュレータは、音に大きく影響する抵抗を2個に抑えることができる(R1, R2)。実機では、R2にVARを使った。

課題もある。5V程度の低い電圧に設定するときはLEDやダイオードが使えるが、高い電圧がほしいときは基準電圧をどのように与えるのかが頭を悩ます。もちろんコンデンサの力を借りれば簡単に実現できるが、音に癖が出るだろう。
そしてもう一つ。プラス電源は理想的な制御素子であるGaNを使える。しかし、マイナス電源はそうはいかない。特に近い将来、TDA1541Aを再登場させたいと思っているので、-5V、-15Vは必須となる。まあゆっくりと楽しみながら考えていこう。

コメント

_ gajira ― 2018年12月12日 00時47分49秒

無帰還電源派の方にも合いそうな仕組みで
大変興味深いです。プリ等にも良さそうですね。

_ Kon ― 2018年12月18日 17時28分44秒

興味を持っていただき、ありがとうございます。
もちろんプリにも応用が可能です。

この分野はまだまだ未知の部分があるので、多くの方に挑戦していただいて、もっと良いものが出てくればと願っています。

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