Taylor Follower型レギュレータ 改訂版2016年07月09日 20時44分20秒

 6月27日付の記事で決定版と言いながら、その後試聴を繰り返すうちに不具合が見つかった。当初、オシロでレギュレータの出力を観測して発振波形がないと断定したのだが、音を聴いているうちに微少に発振しているのではないかと疑うようになった。

 もういちどオシロTektronix TDS350を接続する。デジタルノイズに埋もれて何も見えない。それではと20MHzのハイカットフィルターのスイッチを入れてみた。そうしたらきれいなサイン波が現れた。波高値はわずかであるが、確かに発振している。シミュレーション上では発振余裕度があると思い込んでいた。検討不足だったようだ。振り出しに戻る。

 当てずっぽうで対策してもラチがあかない。困った時のシミュレーション頼み。二線式では問題が出ないのだが、四線式にすると確かに発振しやすくなるパターンがある。パスコンを調整しても根本的な解決にならない。

 あれやこれやと試行錯誤した結果、掲載した回路図に修正することで安定することがわかった。6月27日版と比べるとMTP3055VLのソースとREDのカソードの出しかたと、ZobelのCRの接続が変更されていることに気がつくはず。

 わかればなんともない回路であるが、ここまでたどり着くのにああでもない、こうでもないと思考実験の連続であった。

 さて、これで安心してはならない。実装状態では様々な要素が絡んでくるので、最終的にはオシロできちんとチェックする必要がある。

 回路図は、例として水晶発振器(ロシア製ГК154-П-Т)に使用した場合である。四線式のワイヤーは水晶発振器OSCのVdd, GNDに直接つながっており、もっとも理想的な状態となっている。

 理想状態ではあるのだが、安定度という面から見れば、結構難しい状態とも言えるかもしれない。OSCの種類によっては、なにも考えないと発振するケースがあるようだ。100nF以上の値では必ず1Ωをシリーズに入れる。またパラレルに510pFSEコンをつなぐと一層安定した。

 ほかに特記事項として、FN1241のアナログ電源(LR別)のパスコンは100nFのオイルコンを使用しシリーズに1Ωを入れてある。これまでOSコンなど大容量コンデンサをパラに使ってきたが、はずしてしまった。

 改訂版への変更作業は、ワイヤーを入れ替えるだけであるからそれほど難しくない。

 エージングも24時間で十分だろうと思った。ところがどっこいそうは問屋がおろさない。一丁前にエージング時間が必要らしい。
変更作業から48時間経過した昨夜は耳に突き刺さってしんどかった。今日は少し良くなったが、まだ不十分。

 やれやれ、またエージングで忍耐を強いられそうだ。

 こんなことを書くと、このレギュレータはひどく安定性に欠けるとの印象を抱くかもしれない。しかし以前、Salas Reflektorを四線式で使った場合も同じ現象に出くわした。Salas氏も発振の有無をチェックするよう口を酸っぱくしながら注意している。

 「虎穴に入らずんば虎児を得ず」とはこのことか。