パワーアンプ試作中(3)2015年10月08日 19時20分37秒

 あれから両チャンネルを組み上げた。バランスアンプなので、ぜんぶで同じユニットを4つ作る必要がある。

 回路は単純なのですぐにできるだろうとタカをくくっていた。しかし、私がやることである。きちんと落とし穴が待ち受けていた。

 スイッチを入れたら、電流検出抵抗から煙が上がった。過電流が流れたらしい。すぐにスイッチを切って原因を探ると 半田付けを忘れたところが一箇所あった。これに懲りたので、治具を作ってユニットごとに検査することにした。この検査のおかげでその後の事故を防ぐことができた。試作段階ではいろいろなことが起こるものである。一つ一つ不具合を潰していくごとに完成度が上がっていく。

 しばらく通電して様子を見てみると、安定していることが分かったので、スピーカーを接続して出てくる音に耳をすます。

 エージングが進むと、特徴が明らかになってきた。Counter Point SA-20(大幅改)比べて音が新鮮で遠くまで見通せるかのような透明感が素晴らしい。楽器から発する音が空間に溶け込み、静かに余韻を残しながら消えていく。演奏者が全神経を集中して出してくる音楽がどれほどすばらしいものなのか、このアンプは提示する。

 まだ荒さがあるけれど、この音を聞いてしまった以上、汗水流して改造したSA-20ではあったが、残念ながら今期をもって引退していただくことにした。

 現段階では利得が0dBなので、フェーダーの位置を目一杯上げてやっと適正音量に達する。しかしキース・ジャレットのCDではどうしても音量が足りない。

 こうなると次の目標が明らかになる。
 やはりゲインが欲しい。
 それからファイナル段だけでスピーカーをドライブするのにはどこか無理がありそうな気がしてならない。カソードフォロワもしくはソースフォロワでファイナル段をドライブしたら、かなり音に幅が広がるとともに、床を這うような深々とした低音も澄み渡る高音も出てくるのではと期待する。

朝里峠周回コース ベスト更新ならず2015年10月08日 21時18分42秒

 5日の月曜日、久しぶりに朝里峠周回コースに挑戦。
 家を出て数分後に雨が降り始める。出鼻をくじかれるとはこのこと。どうしようかと迷ったが、強くは降らないだろうと思って、そのまま前進。幸い、小樽方向へは追い風で助けられる。

 峠の登りにかかるあたりから予想はしていたが、路面はウェットに。しぶきが上がってお尻が冷たくなるが、ずぶ濡れになるまでにはいかない。

 そんなこんなで峠を通過。四つ峰トンネル手前で右に見えてくる定山渓天狗岳も頂上は雲の中。紅葉は三割程度進んだあたりだろうか。

 定山渓に降りると路面は乾燥。走りやすい。その後大きなことはなく、自宅へ帰還。

 タイムは3時間25分59秒。8月31日に出したベストタイムに数秒及ばず。決して体調が良かったわけではない。今回は風に助けられた面が大きい。

パワーアンプ試作中(4)2015年10月19日 10時49分19秒

 Taylor' source followerが高い能力を秘めていることが見えてきたので、きちんとしたドライブアンプをつくることにした。

 掲載の回路図を説明していく。

1) 初段にLU1014Dを投入した。これまでこの素子については、ソースフォロワーとしてしか使ったことがなかった。きちんと増幅動作をさせて、どんな音が出てくるのか確認してみたい。

2) LU1014DはVdsが大きくなるにつれ極端にゲート漏れ電流が増えるという性質があるので、カスコードでVdsをおよそ3V以下に固定する必要がある。その役割を担っているのがIRF640。これは手持ちの関係でそうなった。
 ゲート電圧は赤色LEDを4個使って固定する。LEDの動作電流はMMBF5462による定電流回路とした。このFETの最大Vdsは-40Vである。なので回路図の使い方では最大定格を超える可能性がある。検討の余地を残している。

3)2段目はIRF610によるソースフォロワーである。ソース負荷は単なる抵抗で十分なのだが、ここはチョークトランスにこだわった。以前、Analog親爺様から譲っていただいたすばらしいトランスで、机の中にしまっておくなんてもったいない。

4)終段への信号の受け渡しはCR結合とした。直結回路も考えたのだが、安全面とシンプルであることを優先してこうなった。Cについては、ロシア製オイルコンデンサにこだわっている。ただこのコンデンサ、あまりにも大きいので実装には苦労する。

5)終段はTaylor source followerそのものである。出力端にはGNDを基準として-4.5VのDCが発生している。しかしバランスアンプなのでHotとCold間のDC電圧は無調整でおよそ10mVにおさまる。出力端を誤ってGNDにショートさせたら危険ではないかと思うかもしれないが、後述するようにフローティング電源を採用しているのでそのような事故は起こらない。

 オリジナル回路から私なりに工夫を凝らしたのは、カレントミラー回路を採用したところにある。
 理由は二つある。一つは、音を悪くする抵抗の数を極力抑えたかったこと。二つ目は、Reflektor-Dでカレントミラードライブが大きな成果上げたので、そのアイデアを使いたかったからである。
 いっけんトランジスタの数が多くて複雑に見えるかもしれないが、実装してみると非常にシンプルで拍子抜けがする。

6)電源部。
 初段の電源についてはコメントすることはない。終段部の電源は左右別電源としている。なのでこれだけの回路なのに三つの電源系で間に合う。これはコスト面でも実装面でも非常にメリットが大きい。
 前述したように終段部の電源はフローティングになっていて、GNDからはDC的に浮いている。回路図にあるように35Vの二つある電源端からそれぞれ0.22uFでGNDに落としている。これによって終段部の出力DCが定まる。
 最初は半信半疑であったが、やってみるとあっけないほど安定して動作する。

7)検討課題
 定電流用FETの最大定格を超える可能性があるので、これは対策が必要である。
 私が考える回路はだいたいどこかに問題があって、そのうちディスコンにしてしまうことが多いのだが、今回はまずい点がみつからない。会心のホームランという期待がある。
 これで問題がなければ、初段と2段目のMOS-FETを6DJ8に置き換える予定である。

8)音
 さて肝心の音はどうか。
 終段部だけを作り上げてCounterpoint SA-20(大幅改造)と比較した時、一聴してSA-20の引退を決断した。ただその時点では、アンプがゲインを持っていなかったため、どこかもどかしさを感じたことも事実である。
 ドライブアンプを作るにあたって心配したのは、終段部の良さが、ドライブアンプによって減殺されるのではないかということであった。しかしやってみたら杞憂であることがわかった。むしろ終段部の良さがもっと際立つようになった。

 SA-20との比較になってしまうのだが、この試作機の良さは次のところに現れている。
・透明感 これは最初の音を聞いた瞬間からはっきりとわかった。空気が澄み切ったことにより、広大な前後左右、そして天と地の奥行きが大幅に拡大した。

・実在感 演奏者がぐっと前にせり出してきた。以前は演奏者が5m先に立っているように感じたのが、すぐ目の前に立っているが如くである。

・表情 どんなに音が良くても音楽の表情が欠けていたのでは、存在する価値はない。透明感と実在感が増したことで、音楽の表情が非常に分かりやすくなった。

・静寂性 バランスアンプなのでハムなど一切のノイズが聞こえないのは当たり前である。しかし単にノイズが聞こえないという意味ではなく、音楽に付随して発生するノイズが非常に小さいためなのか、どんなにフェーダーをあげて大音量にしても音が静かなのである。この音を聞くと、これまでの音はどこかにノイズがつきまとっていて、心の奥深いところでストレスになっていたのだと気がつく。

・Nelson Pass氏は、Zenアンプシリーズの中でZenV9アンプを最高傑作と言っている。そこに採用されていたのがLU1014Dである。Pass氏はこのあとFirst Watt SIT-1 SIT-2を発表していく。終段の素子をわざわざ特別にSemiSouth社に作らせたものであるが、おそらくこのLU1014Dが念頭にあったものと推測している。かえすがえすもSemiSouth社がつぶれてしまったのは惜しかった。
 閑話休題。
 Pass氏が惚れ込んだLU1014Dである。期待を裏切ることはなかった。この音の半分はLU1014Dの貢献であると信じている。もちろん後の半分はTaylor source followerである。

 現在エージングを開始して1週間が経過した。オイルコンのエージングには500時間かかる。高音域にとげとげしさが若干残っており、低音域はまだ便秘がちである。それでもこのアンプの良さは十分に伝わってくる。

パワーアンプ試作中(5)2015年10月19日 16時25分12秒

 試作したパワーアンプの様子。
1)左上から、ドライブアンプ。
ドライブアンプなのに巨大な電源トランスを使い、おまけにチョークトランスとオイルコンデンサもてんこ盛り状態である。肝心のアンプ部分は左パネルの陰になってまったく目立たない。

2)右上は、終段部。
写真には、汎用整流ダイオードが写っているが、現在はSiC SBDに入れ替えている。

3)左下は、Taylor Source followerの実装部分。これが計4台ある。
見てのとおり、あっさりしたものである。放熱器は手持ちのものを使った。これが放熱フィンが片側にだけ付いていて基板側がフラットなものであれば、実装はもっと楽になる。

4)終段部のパルス応答波形。(上段が入力、下段が出力)
8Ω負荷。周波数は100KHz。非常に周波数特性が良いため、10KHz程度では入力との違いが見えてこない。
なおノイズが多いように見えるのは、プローブがGNDから浮いているためである。