FN1241はすばらしい!2014年10月07日 21時32分19秒

【まえふり】
子供の頃からへそ曲がりの性質(たち)は変わらず、そのおかげでだいぶ損をしたこともある。オーディオにもその傾向が現れるようで、人様が見向きもしなくなったものに興味をそそられてしまう。FN1241である。

FN1242Aは市場から枯渇する直前の昨秋手に入れ、ES9018の後継としてこれまで使ってきた。ちまたでの評価は高く、私もそう思ってきた。

FN1242AはFN1241の後継として投入されたもののようである。まったく推測でしかないのだが、FN1241を自信満々発表したまでは良かったのだが、使い勝手の不便さが災いして市場からの反応は芳しいものではなかったのではないか。そこで、ハイレゾ音源に対応しつつ、ピン数を減らしてコストダウンし、音響メーカーが使いやすくしたのがFN1242Aだったのではないのか。

加えて、ポストフィルターを外付けしなければならないことも、このDACを使いにくくした要素の一つかもしれない。

2000年4月号のラジオ技術に掲載されている新潟精密発表の資料によれば、「音質を徹底的に追求したいという思いからポスト・フィルタは外付けとしました」とある。

かなりのこだわりを読み取ることができる。市場には不評だったかもしれないが、アマチュアには大歓迎の仕様である。開発者はよくぞこの製品を出してくれた。

さて能書きはそれくらいにして、実際どんな音が出るのだろうか。FN1242Aの兄貴分とは言え、それほど大きな違いはないのではないのかと予想してとりかかった。

【回路構成】
回路は以下のとおり。

1)PCからのデータをDDC(I2SoverUSB)で受ける。
このDDCには、信号アイソレータ機能が搭載されており、USB側とDAC側を完全に分離できるのが魅力である。加えて、外部からクロック入力も可能で、リクロック機能まである。しかし、今回はリクロック回路は外付けとした。

2)リクロック回路を外付けとしたのは、PO74G74Aを使い低ジッタで信号を取り出したかったため。

3)クロック発振器には、定評のあるNZ2520SD(45.158MHzおよび49.152MHz)を使う。

4)クロック分配器には、PO74G38074Aを使用。

5)DDCから出力されるクロック選択信号は、フォトカプラを使ってアイソレート。

6)リセット信号は、自作のPICで。

7)FN1241はパラ接続とする。

8)DACから出た信号はハイカットフィルタを通さず、そのまま13D2ラインアンプに送る。トランスを二個通過するので、そこで高調波は十分に濾過されるものと思われる。

【グランドノイズ問題】
動作試験はまず乾電池を接続して行った。比較的複雑な配線であったが、私としては珍しく一発で正常動作。

グランドノイズを観測してみると、不安は的中して若干多い。秋月製のスルーホールのユニバーサル基板を使ったが、リクロック回路周辺はベタアース基板を使ったほうが良いようだ。

外来ノイズに反応して異音が出る現象に二度ほど遭遇した。グランドが弱いためと思われる。
これは次回作の課題とする。

【評 価】
さて、出てきた音は。
フェーダーノブを上げていった最初の出だしで勝負があった。FN1242Aと全く違う。断っておくが、電源はSalas Reflektorでまったく同じものを使っている。音源は旧作はSDカードで、新作はPCであるから、常識的に言えば新作のほうが分が悪い。

ところが、これが新作のほうが僅差ではなく、ダントツと言っていいほど良いのだ。

音の数が多くて、ホールの残響音、楽器の余韻が空間に充満している。
また骨格が太く、フェーダーノブを上げるのに比例して音量が気持ち良いほどに大きくなる。重心も低い。

エージングが不足していて、固いところや抜け切らないところは散見されるが、弦が刺々しくならず実に滑らか。人の声はさすがに風邪ひき状態だが、今後を十分に期待させる姿だ。
ここ一週間は変化していくものと予想。

【ひとりごと】
この音を聞いていて気がついたことがある。これまでアナログを捨て、デジタルばかりを追い求めてきた。デジタルでも十分にアナログの音が出せると確信したからであった。ところが、いつの間にか肝心要のアナログの音を忘れていた。

今聞いているのは、あの忘れていたアナログの音ではないか。FN1241の音が初めてスピーカーから出てきたとき、心が騒いだことを忘れない。頭ではなく、心が「もっとこの音楽を聴いていたい」、そのようにささやきかけてきた。

人が見捨てたところに宝があった。すばらしいDACである。

コメント

_ Analog親爺 ― 2014年10月09日 08時58分55秒

おはようございます。「あの忘れていたアナログの音」。「頭ではなく、心が「もっとこの音楽を聴いていたい」、そのようにささやきかけてきた。」 あ・・・いいですねー!小生には、全く不明な半導体の世界ですが、大兄の手になるとそういう音楽が鳴るのですね。音楽を聴いて楽しめることが、いずれにしても基本と云うことでしょうか。

_ Kon ― 2014年10月13日 21時22分32秒

Analog親爺様にコメントを頂きますと冷や汗が出てきそうでいけません。こちらはAnalog親爺様のブログを拝見しながら、こんな音が出ているのだろうと想像し、周回遅れで追いかけているような者ですので。

このDACは、「音楽にはこんな表情があったのか」と驚くほど今まで出せなかった奥深い音を聴かせてくれます。それでも、Analog親爺様の足元にはまだまだ及びませんが。

ところで話は変わりますが、以前にいただきました貴重なグリッドチョークトランスのことです。これをカウンターポイント SA-20に入れ、しばらくエージングしたところ、ほんとうに素晴らしい音に変化いたしました。私は、真空管の世界は素人の域は出ませんが、今回ほんとうに良い勉強をさせていただきました。

この場所をお借りして、大変感謝申し上げます。

_ rtm_iino ― 2015年02月16日 01時01分57秒

DACの基板は専用に起こされたのでしょうか?

電源の数やパッケージからするとかなり気合は入っていますね。
PLL用の電源を分けているDACは当時としては珍しいのかもしれません。
差動出力2系統はどのように接続されているのでしょうか?

実はFN1241用の専用変換基板は作ってあるのですが自分ではまだ音を出していません。
友人がやはりFN1242AよりFN1241がずっと高音質だと言ってました。

クロックですが45MHzが通るのですね。
NDKの2520は11.28MHzを測定した事がありますが低ジッターですね。
私は33.86MHzのOCXOを作ったのでそれを使うつもりです。

_ Kon ― 2015年02月16日 21時37分20秒

拙いブログに興味を持っていただきありがとうございます。
FN1241仲間が増えているようで嬉しく思います。

1)以前、専用基板を起こそうかとも考えたことがありましたが、めんどうなので結局変換基板をつかった手配線となりました(笑)
パラ接続でリクロック回路も同居しているので、結構大変でした。ですが、音を聞けば苦労も吹っ飛びます。

2)そのままバランス出力とし、差動ラインアンプで受けています。具体的には、13D2のグリッドにそのままつながっています。以前はトランスで受けたりいろいろ試したこともありましたが、今はこれで落ち着いています。

ご友人のFN1242Aと比較されたご意見、心強いです。FN1241を使いこなすにはいろいろノウハウがありそうで、どうも私の場合、まだ使いこなせていないような気がしています。

クロックを自作されるとは、力が入っていますね。ジッター測定環境を備えておられ、そうとうの実力をお持ちと拝見しました。DAC完成の折には、是非結果をお知らせください。

ご存知とは思いますが、DACは電源の質でガラガラと音が変化します。そのあたり、どんな電源をお使いでしょうか。

_ rtm_iino ― 2015年02月17日 07時57分21秒

今回のクロックは市販のOCXOの改造です。
ジッタークリーナーのDSPLLを使って任意の周波数を出せますがフラクショナル部を使わない方がジッターは少ないので改造品をLVDS化して使います。
以前 DVD用に27MHzのOCXOを自作しましたがそれでも20ppbまでは追い込めました。
ジッタークリーナー使わなくてもクリスタルフィルターで数Hz程度の物を作ればかなりジッターが減りますが正弦波にしか使えません。
アナデバの資料では5%帯域のLCフィルターでも100fsまで落とせると書いてあります。
http://www.analog.com/library/analogDialogue/archives/42-02/clock_optimization.html

ジッターよりワンダーの方が音に対して作用するように思えるのでロックレンジは1Hz以下にできるSi5328を用意しました。
Si534Xの方がルビジウムをリファレンスに使えるのと複数の周波数をクリーニングできるので良さそうですがSi5317と基板が兼用できるSi5328にしたからです。

電源はトランスを整流してLDOです。
TPS7A4700、ADP151、ADM7150などを使っています。
NZ2520SDなら消費電流が小さいのでLTC6655 2個使ってフィルター入れてバッファ無しでも動くかもしれません。

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