6DJ8 ラインアンプ2009年10月05日 22時49分56秒

 久しぶりにブログをアップする。この間、私事でいろいろあったが、やっと落ち着いてきた。

 いろいろありながらも、頭の中にはいつもラインアンプの構想があった。ここ数日、まとまった時間が取れて、やっと今日完成した。完成と言っても、これから試聴を重ねながら徐々に手直しをしていくことにはなるだろうが。

 中身は片チャンネルに6DJ8を一本使うというシンプルな構成。LED一個で固定バイアスとする。プレート負荷にはタムラのTF-3というトランスを使う。アンプ部はこれだけ。プレート電圧はMOS-FETによるNFBなしの簡易定電圧回路で固定する。ヒーターは例によって定電流点火とする。

 エージングなしでいきなり試聴した。ハンダ付け直後だから、ソプラノなどを聴くと当然荒さが目立つ。しかし、それでもCDをずっと聴き続けていたいと思った。音楽の感動が際立つのだ。作って良かった。今まで、DACとパワーアンプを直結していたが、この音を聴くと、世間で言われているようにいわゆる「貧血気味の音」であったとわかる。

 JAZZは熱気が押し寄せてくる。オペラは舞台がすぐ目の前に見えるかのようであり、ホールの余韻が鮮やかに聴き取れる。

6DJ8ラインアンプ その22009年10月05日 23時06分16秒

 整流管にはWE412A をおごった。このアンプで唯一の高価な部品だろう。6DJ8にはMullardのマークがあるが、あきらかにfakeだろう。詳しいことはわからないが、6DJ8にもいろいろあるようで、今回入手したのはA-frameタイプと呼ばれるもののようだ。

 このラインアンプはバランス入力、バランス出力になっている。6DJ8を固定バイアスで使うので、プレート電流が揃うかどうかが難しいところだ。測定してみたら、片方はほぼ一致していて、これには驚いた。もう片方は10%の誤差があった。とりあえず、音を聴いて様子を見ることにしよう。

 写真は別の角度から。まだ調整中なので、配線が乱雑になっている。

6DJ8ラインアンプ その32009年10月07日 22時30分09秒

 出来上がったアンプだが、不具合があった。オシロで出力波形を見てみるとひずんでいる。真っ青になった。原因が分からない。そのままとりあえず音を出してみると、ちゃんと音が出る。すばらしい音に聞こえる。あの波形は何かの間違いではなかったのかと思ったりもした。でもやっぱりソプラノを聴いてみると、明らかに出てはならない音が聞こえてきた。

 トランスの使い方が間違っているのかと最初は悩んだ。しかしトランスを外して抵抗に置き換えてみても現象は変わらない。トランスは白。
 次に疑ったのが、バイアスの固定に使っているLED。しかしこれも調べてみると白。
 6DJ8は発振しやすいと聞いていたから、きちんと発振防止用の抵抗をグリッド近辺につないだ。そうするとタマがおかしいのか?いやそんなことはない。だってソプラノ以外ではすばらしい音が出ているではないか。

 真空管を使った簡単なアンプではあるが、ゼロから設計したのは今回が初めてだ。だいたいにして真空管に対するノウハウなんてゼロに等しい。絶対に初歩的なミスをしているに違いない。

 最後にたどり着いたのが、グリッドリーク抵抗(というのかな)。グリッドをゼロ電位にする抵抗だ。この抵抗をグリッドピンの直近にハンダづけてしていた。つまり信号入力側からグリッド方向に向けて回路を追っていけば、まず発振防止用抵抗があり、次にグリッドリーク抵抗が来るという順番になっていた。これがおかしいのではないか。

 そこで対策。このグリッドリーク抵抗をはずして信号側に移動。その次に発振防止抵抗が来るようにする。出力波形を見た。正常。原因が分かるまで二日間悩んだ。わかってみれば実に単純なことだった。

 ついでにTF-3の一次と二次を逆転して使っていたのを、これも元に戻した。このため、エージングのやり直しとなる。

 しかし昨夜の音はすごかったな。まだ対策前だったから歪みがあるにもかかわらず、ものすごいエネルギーの固まりがスピーカーからほとばしり出てきて圧倒されてしまった。ベッドに入っても興奮してしばらく寝付けなかったほどだ。
 対策後もこの音が戻ることを期待している。

6DJ8 ラインアンプVer.1.02009年10月19日 13時12分36秒

 ここ数週間、ラインアンプの実験を繰り返していた。結論から言うと、トランス(タムラTF-3)は使わないことになった。これは推測なのだが、このトランスはプッシュプルで電流を流すことを想定していないのかもしれない。どうしても出力波形がひずんでしまった。トランスが悪いのではなく、私が未熟であっただけのことである。将来捲土重来を喫して活躍の場を与えたいと願っている。

 さて、ではどのような構成になったのか。回路図は後で掲載するとして、初段はMOS-FET入力でドレイン接地。ソース出力は6DJ8のカソード側につながる。ここはいわゆる交差差動結合(クロスカップリング)という手法が使われている。プレートはごく普通の抵抗負荷。次段はやはりMOS-FETを使い、ソースフォロワー出力となっている。電源はここにもMOS-FETを使ってNO-NFBの定電源回路とする。以上である。

 もちろん私のオリジナルではない。CounterpointのSA-5000とSONIC FrontiersのLine-2を参考にさせていただき、細部を私なりにない知恵で工夫した回路である。いきなりこの回路を最初から作った訳ではない。他にもいろいろな回路を試して音を聴いてみた結果である。

 それで、肝心の音はどうであったか。システム全体が全く別物になってしまった。これまでは細部のディテールは見えるのだが、音が奥に引っ込んでいた。音量を上げてもこの性質は変わらない。全体のエネルギーが高い周波数の方に偏っていて、時間とともに聞いていて疲れを感じた。
 ところがこのラインアンプを入れると、全体の重心が下がる。例えて言えば、今までが軽自動車で細い路地を走り回っていたのが、今度は大型トレーラーで高速道路を突っ走る感じだ。変な言い方だが、音がぎっしりと詰まっていて重量感がある。

 知り合いの方でフェラーリを運転している方がいる。この車のエンジン音は、車にど素人の私でもすぐに判別できる。まるで戦車がやってきたかというくらいだ。このラインアンプの音もそんな印象を受ける。

 昨夜完成したばかりだから、まだまだ音が固いところがある。それでもそのすばらしい音に聞き惚れてしまった。出力段のMOS-FETのバイアス電圧用にOSコンを使っている。経験上この部品は長いエージング時間を要する。これからじっくりと育てていこう。

ラインアンプVer.1.0 内部その12009年10月19日 13時39分53秒

 まずは初段の基板と6DJ8ソケット周りから。ユニバーサル基板は裏表を反転させて使っている。隠れて見えないが、下の方に抵抗類を実装している。

 ソケットにある大型抵抗はスケルトンの200Ω。込み入った場所にあるので、念のためスリーブは外さないでそのままにしている。