S.F.ドライブE.F.2007年05月02日 12時40分26秒

 エミッタフォロワーを定電流負荷ソースフォロワーでドライブしてみた。BTL接続である。なんのことはない。気がついてみれば、かつて氏家氏がラジオ技術に発表されたBTLパワーアンプとコンセプトは全く同じである。

 しかし私の場合、疑似位相反転入力なのでアースがどうしても浮いてしまう。というかそのことに今まで気がつかないまま実験していた。左右の信号が混信してしまう。どうしても入力と回路のグランドを分離するほかない。そうすると今度は盛大にノイズが載ってくる。

 とにかくだましだまし動かしてみた。
 結果は、非常にすばらしい。高い方も低い方も余裕を持って伸びている。軽々とトランスをドライブしていることがよくわかる。ソースフォロワーのように低インピーダンスでドライブしてやらないと、エミッタフォロワーはその持ち味を発揮できないようだ。
 どんなにボリュームを上げてもうるさく感じない。

 それでも課題がある。まずノイズ。これは疑似位相反転である限り避けられない。そしてもう一つ、高い方にまだ何か違和感がある。これも疑似の問題かもしれない。

 そこで正式な位相反転回路が必要になってきた。氏家氏によれば真空管によるP-K分割がベストとなるが、信号経路にコンデンサが入るのが気に入らない。
 さんざん迷ったが差動入力回路を採用することにした。無帰還なので、以前のようなひどい結果にはならないだろう。簡単な回路なので空きスペースに実装できる。

 次回はその結果について報告する予定。


 ちなみに、ノイズがいやで疑似位相反転入力を廃し、BTLの片側入力をアースしてみたらどうなったか。何の変哲もないおとなしい音になった。今聴けば、つまらない音である。魅力がない。裏を返せば、たとえ疑似位相反転入力であってもBTLは大きな効果があるということを立証している。

抵抗ートランスI/V変換回路 Ver.4.42007年05月03日 10時03分19秒

 この一ヶ月間様々な試行錯誤を重ねてきたが、とうとう満足のいく結果を得た。ということで正式にバージョンを改訂する。

 この回路の特徴は以下の通り。
(1)位相反転回路に、一段の差動増幅回路を採用した。
(2)回路全体としては無帰還である。
(3)BTLとする。
(4)定電流負荷ソースフォロワーで終段をドライブする。
(5)終段はコンプリメンタリ・エミッタフォロワーとする。
(6)FET以外はいわゆるキャンタイプのトラを使用する。

 当初のもくろみから大きくはずれて、かなり複雑な回路になった。といっても動作原理は非常に単純である。多くの示唆を氏家氏の記事からいただいているので、私のオリジナルではない。この回路の設計にあたって、次のことをポイントと考えた。
(1)音の躍動感を得るためにBTLとする。
(2)正確な位相反転信号を得るために差動増幅回路とする。
(3)エミッタフォロワーは低インピーダンスでドライブする。
(4)アイドリング電流やドリフト電圧が安定であること。

 現状では電源はやや使い古した単一電池40本で構成している。ゲインはトランスも含むと全体で5倍程度であった。差動増幅部のゲインは2倍もないことになる。ここはもう少しゲインを持たせても良かったかもしれない。

 出てきた音は。。
(1)ピーク、ディップがない。エネルギーバランスが非常に平坦。
(2)重心が低い方にあるため、安定感がある。ドラムのキック音が団子状にならず、きちんと音階として分離して聞こえる。
(3)何よりも特筆すべき事は、音が前に出てくる。聴いていて、音楽に引き込まれていく。体が素直に反応する。
(4)耳に引っかかるような刺激的な音が一切しない。
(5)非常に芯がある音なのに、柔らかい。
(6)今まで演奏者が10メートルくらい前方に立っているかのように聞こえていたのが、5メートルくらいに近づいた。(距離はあるまで比喩です)
(7)聴いていてからだが全く緊張しない。それでいて躍動感が非常にある。
(8)音量を上げてもうるさくならない。どこまでも上げることができる。

 おそらくこれ以上I/V変換回路を追究しても、後は枝葉末節なところを突っつくだけのように思える。真空管に置き換えたらというようなアイデアはあるが、基本回路は変更の余地がないだろう。

 素子に関する印象であるが、今回採用した2SK246は非常に表現力に富んだFETのように感じる。2SK117もソースフォロワーに適している。メタルキャンは、うわさ通り表現力がすばらしい。

 この後は、メインシステムへの実装を考えることになる。

Counterpointの回路2007年05月03日 12時34分21秒

 Counterpoint SA100の回路が公開されている。それをつらつらと眺めていたら、終段のFETのドライブの方法に特徴があることがわかった。定電流負荷カソード・フォロワーである。定電流回路の一部を使ってゲイン調整もしているようだ。思わずうなってしまった。すでに20年以上も前に終段のドライブ法について正確に理解できる設計者がいたのだ。どうしてCounterpointの音がすばらしいのか。その秘密の一つを発見したように思う。

 と同時に、これまで私が目指してきた方向と一致していたことにうれしさも感じる。CounterpointのパワーアンプはBTLの使用を前提としているということ。また無帰還回路にこだわることも同じである。

 これまでパワーアンプをBTLで使った経験はない。けれども、今回のI/V変換回路での効果を目の当たりにすると、パワーアンプも、という妄想がわき起こってくる。

抵抗ートランスI/V変換回路 Ver.4.4 その22007年05月03日 19時40分27秒

 実装風景。キャンタイプ・トラはかなり昔にGOAアンプを作ったときに使ったもの。熱結合のための接着剤が汚くはみ出してしまったものもあるが、気にしない。

抵抗ートランスI/V変換回路 Ver.4.4 その32007年05月03日 19時43分17秒

 トランス二次側の接続を変更した。今まで直列としてゲインを稼ぐことを優先していた。出力インピーダンスは1.2KΩ。今回の改造で矩形波の出力波形を観測してみると、かなり形が崩れていることがわかった。やはりちょっときついのかもしれない。音も良く聴いてみるとくせを感じる。高い方にいやな響きがする。

 そこで、ゲインは落ちるが並列接続として出力インピーダンスを300Ωとしてみた。100KHz矩形波もかなりまともになった。
 
 さて、出てきた音は。。
 スピーカを全く意識させない。音が空間に充満している。左右はもちろん、前後の奥行き、また上下の広がりまでも再現しているように聞こえる。いやな響きはなくなった。後は音楽に没頭するだけだ。

 また特筆すべきは定位の良さである。歌手の位置をピンポイントで示すことができる。