抵抗ートランスI/V変換 Ver.5.1の波形2007年03月01日 21時42分55秒

 トランス二次側の出力波形を観測した。一次側入力は100KHzの矩形波である。写真は観測結果。盛大にリンギングが発生している。

 サイン波で周波数特性を観測すると、330KHzでおよそ8dBのピークをもっていることがわかった。この影響は大きい。音を聴くと、妙な付帯音がつきまとい、濁っている。

抵抗ートランスI/V変換 Ver.5.2の波形2007年03月01日 21時47分45秒

 Ver,5.1に対策をすることにした。二次側に位相補正のCRをつける。シミュレーションの結果、C=5100pF, R=560Ωでほぼピークが消失し、滑らかな減衰特性が得られることが判明した。

 実機に載せてみて、シミュレーション通りになるかどうか確認したところ、結果は良好であった。トランスの定数はかなりいい加減な定数としているが、観測結果に合うように調整していくと、そんなに的外れな結果にはならないようだ。ありがたいことだ。

 二次側の波形を観測してみた。写真を見ると、見事にリンギングは消えている。まだ少しうねりが残っているが、こんなものだろう。

 音を聴いてみる。付帯音はなくなった。半田付け直後なので若干がさがさしているが、対策前に比べて改善していることはわかる。

これでいいのか???2007年03月01日 21時55分20秒

 ここまでいろいろな対策をしてきた。CDラインアンプを使っていたときに比べれば、より美しい音に変貌を遂げてきたと言っていいかもしれない。しかし、心が満足しないのはなぜだろうか。

 体が何か受け入れないのだ。一瞬感動することはする。けれども長続きしない。どこかよそよそしく聞こえる。どうしてだろう。
一言で言えば、「陰影が薄い」ということだろうか。微妙な色合いは表現できるかもしれないが、どこか人工的でのっぺりしている。ドアを隔てた遠い向こう側で演奏している。なぜそのように聞こえてしまうのか。

 サブシステムでは「ツルンとした音」は聞こえない。おそらくトランスとSA-20との相性がいいのだろう。メインシステムでは、トランス出力の次にチャンネルフィルターが来る。これが予想以上に大きな負荷となっているような気がする。理論的には何の問題もない。しかし実際には、トランスだけではチャンネルフィルターをドライブし切れていないのではないか。フィルターによって音楽のエネルギーが削がれているのではないか。

 チャンネルフィルターが悪いと言っているのではなく、これをドライブするためのエネルギー源が別に必要だと言いたいのだ。けれども、今私はできるだけシンプルな再生を目指したいと願っている。

 ラインアンプを入れれば、この問題は解決するかもしれない。けれども、ノイズが増えたり、独特のカラーが付されるのはいやだ。だからあっさりとラインアンプを捨てたのではないか。ではどうすればいいのか。

 今頭の中では、BTLアンプを構想している。きっかけはCounerpoint SA-20である。このアンプが登場した頃、ラジオ技術に評価記事が載ったことがある。そのなかにこうあった。「そのままステレオアンプとして聴けば、値段相応の音。しかし、一旦ブリッジ接続にすると、俄然本領を発揮する。部屋の空気を支配してしまう。」そんな表現がされてあった。確かにSA-20の中を覗くと、最初からブリッジ接続されることを目的として設計されているように感じる。

 また、氏家氏の記事をバックナンバーで探すと、BTL MOS-FET 0dBアンプの音質のすばらしさに触れておられる。BTLにする以前は「ツルンとした音」が聞こえるのだそうだ。

 もしBTLにすることがかなり手間がかかるのであるならば、こんなことは考えない。ところが、今の4チャンネルパワーアンプはかんたんにBTL化ができてしまうのである。位相反転させた信号さえあればすぐである。そして、トランスには位相反転信号を取り出してくださいとでも言うかのように、二次側がスプリットになっているではないか。これを何とか活かしたい。

 メリットは次の通り。
(1)BTLによって「陰影の深い」音楽を期待できる。
(2)ノイズ、ハムに強くなる。
(3)大がかりな変更はいらない。
(4)電源の影響を受けにくくなる(と言われている)。
(5)これが一番のニーズなのかもしれないが、アンプのドリフトが軽減される。

 ドリフトについて少し触れておく。
 現在使っているパワーアンプの出力ドリフトは、実用レベルを超えていてかなりの頻度で再調整しないとすぐに±0.6Vはを超えてしまう。一旦数十mVに合わせても次の日には数百mVになることはしょっちゅうである。

 一番いやなのは、このドリフトによってホーンドライバーがひずんでしまうことである。いやな音が出てくる。これだけは耐えられない。アンプのふたを開けて再調整となる。これが心理的にかなりに負担なのだ。知らず知らずのうちにプレッシャーを与え、音楽に没頭できなくなっていく。

 だから、SA-20に自然に足が向いてしまう。これならば何の心配もなく、音楽に没頭できる。これがどれほど大切なことかとつくずく思う。だから何とかして、ドリフトから逃れたい。

 BTL化によって、このドリフトが軽減される可能性がある。というのは、ケースに入っている2チャンネルともに同じ方向にドリフトすることが多いからである。両方がキャンセルされて、ゼロにはならないにしても、少なくなることが期待できる。

 問題が一つだけある。
 これまでマルチチャンネル再生を志してきた。これこそ究極の再生術と心得、この体制を固持してきた。これを捨てなければならない。ネットワーク再生に宗旨替えできるだろうか。

 しかしサブシステムがすでにネットワーク再生ではないか。それでも十分に音楽を楽しんでいる。以前に比べてネットワークに対する垣根がだいぶ低くなった。

 そこで、サブシステムのスピーカを仮接続して、メインシステムのBTL化の効果を確認してから、アルテック、オンケンのネットワーク化に取り組もうかと考えている。仮接続して確認した時点でだめなら、元に戻すことができる。

 ということで、今週から来週にかけてぼちぼちと取り組んでいきたい。
 しかし、まさかこんなことになるとは、抵抗ートランスI/V変換を取り入れた当初は思いもしなかったな。。。

抵抗ートランスI/V変換 Ver.5.22007年03月02日 20時30分32秒

 回路図を掲載する。下にあるのは周波数特性。CR補正によって330KHz付近のピークが滑らかになる。

 Ver.5.1ではノイズがのるようになったが、二次側の片チャンネルだけアースを取ると効果があることがわかった。

 半田ごてをあてて一日経過すると、音がだいぶ落ち着いていくる。高音の耳に刺さるような音が影を潜め、低音方向に分厚い音になっている。これはこれでよいかなと、昨日の悲観的な意見と打って変わって、かなり楽観的になった。
 たぶんまた何日かすると落ち着かなくなるのだろうが。。

 もっと分厚い音。もっと濃淡の濃い音。もっと感動する音。それを求め続けている。

今日の音2007年03月03日 22時02分23秒

 エージングが進んできて、だいぶまともな音になってきた。最初はこれはだめかもと思ったが、意外な展開になってきた。

 I/V変換の抵抗は5.6Ωの進抵抗である。これほど低い値の抵抗がないので、当座の間だけ間に合わせで使っている。だから、この抵抗の音がそのまま聞こえてくる。他のところで「抵抗比較実験」をなさっている方がおり、そこでも報告されているけれど、進抵抗はそれなりのくせがある。

 特に感じるのは、次のようなこと。
1)高い方にエネルギーが偏る
2)何か付帯音を感じる
3)オーケストラでffになると、だんごになり分離が悪い
4)どこか暗く、奥に引っ込んでいるところがある
5)エネルギー分布にピーク、ディップがある
  つまり、くせがある
6)低音は、もりもり出てくる場合もあるが、これもくせがあって、堅さを感じる しなやかさがなくて乱暴
と、さんざんな評価である。とにかくシステムの透明度が上がってくると、小さな変化にも敏感になってきて、これはこれで困ったことだ。YAMを使っていたときは、こんな不満はなかった。もっともまともな抵抗に入れ換えたいのだが、まだ他の部分にも手を入れる可能性があり、システム全体が落ち着くまでの辛抱。

 それからちょっとおかしいと思われる現象。
 左側のレベルが若干高く聞こえる。だから音像がセンターに決まらない。それに、左からだけわずかだけれど歪みが聞こえる。抵抗の向きは左右でそろえているつもりだが、他に見落としがあるのかもしれない。これは今後の調査が必要。

 もう一つ耐えられない現象。
 相変わらずドリフトがひどい。今日は1Vを超してしまった。BTLにしたら少しまともなるかもと考えたが、無駄だった。二つのチャンネル間で反対方向にドリフトしている。これはたまらない。初段をFETに入れ換えなければならない。そうすると、大がかりな変更になってしまう。頭が痛い。ドリフトによって歪みが出てしまうことは許せない。

 しかし、トランスはエージングに時間がかかると言われているようだけれど、これは本当のようだ。毎日音を出すたびに、前日と全く音が出てくる。どこまで変化していくのだろうか。これがどこで落ち着くのか、これもしばらく様子見となりそうだ。

 今日聴いたCD。リヒターのBach BWV140 「目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声」。アナログ時代を含めて、このシステムでこれまで聴いた最高の演奏。もちろん、前記したくせはあるが、それを乗り越えて大きな感動があった。